第18話 魚人間
俺が異世界に転移させられてから二週間程度が経った。
その中で分かったことは、スキルはいつのまにか成長しているのと魔物達は思ったよりも優しいってことだ。
むしろ森に入ってから人と関わっていないためこの世界のことは何も知らない。
知ったことといえば魔物が進化するということだ。
スライムは幼女に進化し、メタルスライムは分離するようになり、コボルトは牙が鋭くなった。
ゴブリンもリハビリに通って来ているが、進化してるのかはわからなかった。
「さぁ、今日は森を探索しよう!」
ふと小屋に来てから全く出歩いていないことに気づいた俺は森の中を探索することになった。
水はどこからかいつもスライムが運んで来てたし、食料に関してはコボルト達に分けてもらっていた。
そのため特に小屋から出ることもなかった。
「魔王様に色々紹介するね!」
初めての外出にスライムは喜んでいた。
側から見たらお出かけできる子どもがウキウキしてるような感じだ。
なぜか父親になった気分だ……。
今日のお友はスライムとコボルト達だ。
とにかくコボルト達にたくさん来てもらっていた。
森で狩猟をしているためとても優秀なボディーガードだ。
リハビリの一環だと説明したら引き受けてくれた。
単純に初めて森の探索をするから臆病者になっているだけだが……。
「じゃあ、まずは水場に行こうか」
ずっとスライムが持ってきた水で体を拭いていたが、正直体の匂いが気になっていた。
そのうち自身もゴブリンになるのではないかと思うほど気にしていた。
匂いに敏感なコボルト達が何も言ってこないため、今のところは大丈夫だとは思いたい。
裏であいつ臭いぞとか言われてたら立ち直れない。
「魔王様水場はこっちだよ」
スライムに手を引かれて森の探索を始めた。
木の隙間を吹き抜ける風に俺は心地良い気分になっていた。
「たまには出歩いた方がいいな」
「魔王様ずっとこもってたもんね」
「あー、最近忙しいからね」
俺の言葉にコボルト達は尻尾を下げ、申し訳ない顔をしていた。
「ああ、別に大丈夫だ。これが俺の仕事だし、みんなが食べ物を持ってきてくれるからなんとか生活できているよ。いつもありがとう!」
「そそそ、そうか! これからも通って元気になるからな」
コボルトの尻尾は大きく振っていた。その姿を見ただけで既にもう元気になった気がする。
しばらく歩くと水の流れる音が聞こえてきた。川が近くにあるのだろう。
「魔王様そろそろつくよ」
スライムに引っ張られるとそこには大きく広がった水溜りがあった。
「綺麗なところだな」
魔物はいないのか静かに水が慣れる音と風が吹き、木が揺れている音だけが聞こえてきた。
「この水溜りは森でも大きいところだからな」
コボルト達も知っているということは魔物達もここをよく使っているのだろうか。
「ここで水浴びをしてもいいのか?」
「ここは魔物達もよく来るけど、飲水はもう少し上で汲んで来るんだ」
水浴びは水溜り、飲水の確保は上流で行っているらしい。
魔物達同士でもしっかり頭を使って生活している。
「じゃあ水浴びでもしてくるよ」
俺は服をスライムに渡し、水溜りの中に入った。
コボルト達には周りを警戒してもらっているが、よほどのことがない限りは何も起きないらしい。
「はぁ……久々に体を洗えるな」
布で拭いていたがやはり風呂文化がしっかりあるところから来た俺にとっては水浴びは心地よかった。
しばらく水浴びを楽しんでいると急にウィンドウが出現した。
――足底腱膜
足底腱膜とは、踵から爪先までを繋いでいる強靭な組織で縦アーチと呼ばれる土踏まずを保持させている。
主な働きは足で衝撃を吸収させる働きを持っている。
それよりも突然ウィンドウが出てきたことに驚きだ。
すると急に水面から魚の顔をした人が飛び出してきた。
「お前は誰だ?」
勝手にスキルが発動してウィンドウが出現していたのは魚人間のせいだろう。
「ぎゃあー!」
俺は驚きのあまり、すぐに水溜りから上がり走った。
魚が言葉を話すなんて聞いていない。
急な出来事で俺はスライム達が居る方と逆の森の奥に走ってしまった。
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