第16話 休み

 あれから数日が経ちゴブリンは短時間であれば顔色変えずに立つことができるようになった。


 だが一番驚くことはゴブリンの体の色は黄色肌で見た目はほぼ人間と変わらなかったということだ。


 緑色の肌は黄色肌が血流不足で青みが増し、汚れで緑色になっていた。


「オラ今日は群れに帰るよ」


 ゴブリンはしばらく俺と共に小屋にいた為、やっと群れに帰ることとなった。


 そもそもふらふらしている状態で俺が帰すはずもなかった。


「絶対逃げるなよ! まだリハビリがあるからな」


 俺が大きく声をかけるとゴブリンは振り返った。


「むー、魔王様め!」


「誰が魔王だ!」


 いつのまにか俺は魔物達から魔王様と呼ばれるようになっていた。


 それでもゴブリンは若干ふらふらしながら、手を振って森に消えて行った。


 ゴブリンは次回から外来リハビリとなった。


 そもそもここは外来リハビリしかできない仕組みなのにな……。


 って言っても患者はコボルトとゴブリンだけだ。


「よし、ひと段落したから今日は休みにしようか」


 足元にいるスライムを抱え、小屋の扉を閉めた。


 俺は小屋に来てから一度も休まずにリハビリを行っていた。


 そもそも魔物達に休みの概念がないというのも理由の一つでもあった。


 魔物って社畜体質なんだろう。


「さぁ今日は何をしようか?」


 今日は一日休みにしたが、いざ休みにすると特にやることがなかった。


 俺は床に座りスライムを撫でているとウィンドウが勝手に表示されていた。


――大腿四頭筋、ハムストリングス


 ウィンドウに表示されたのは太ももの代表的な筋肉だ。


 メタルスライムの時と同様に手で触れた時にウィンドウが表示されていた。


 以前は理学療法の視診から目で見ると体が悪いところが表示されていた。


 しかし、今みたいに触れると悪いところではないがウィンドウが表示されることがわかった。


「なにか理由があるのかな?」


 俺はスライムに問いながら触れていると、スライムは手で四角を作り、それを押すジェスチャーをしていた。


「ん? 四角を押すのか?」


 俺がスライムに確認をすると体を二人に折り畳んでいた。伝えたいことはわかるが、何をして欲しいのかまではわからない。


「四角を押す……押す……あっ、そうか!」


 スライムが伝えたいことを感じ取った俺はある言葉を唱えた。


「ステータス!」


 久しぶりにステータスを開くと、前と変わらないウィンドウが表示されていた。


「んー、どこが違うのか……」


 ウィンドウを確認するが、どこが変わっているのかわからなかった。


 それでもスライムは何かを押すようにずっと空中を叩いていた。


 俺はそれをマネするようにウィンドウを叩くと表示が切り替わった。


――触診


 触診とは手や指を使って、病気や状態を診断する方法だ。


「触診?」


 もう一度ウィンドウに触れるとウィンドウが変化していた。


"理学療法2"


「ああ、スキルレベルが上がったってことか」


 俺は魔物達のリハビリをすることで、いつのまにかスキルレベルが上がっていた。


 そのためメタルスライムの時のように触診した時にウィンドウが表示されるようになったのだろう。


「でもここってスライムの足だったんだな」


 その後も俺はスライムの体を撫で回すとウィンドウに色々と筋肉名が表示されていた。


「うぉー、ここが腹筋なのか! えっ、腕橈骨筋って…….大腿四頭筋の隣に腕橈骨筋があるのか?」


 腕橈骨筋は前腕の筋肉のため、人間で考えれば腕と太ももの筋肉が隣にあるのは構造的におかしいはずだ。


 しかし、スライムはあの形態の中に腕や足などの筋肉が一つの塊になっているのであろう。


 考えただけで不思議というより若干気持ち悪い構造をしていた。


――5時間後


 せっかくの休みなのに俺はスライムの体の不思議な構造に魅了され、一日中体を撫で回していた。


 気づいたらいつのまにか5時間も経っていた。


「はぁ、これで満足……うぁー!!」


 俺は忘れていた。魔物にスキルを使うと光り輝くことを……。


 しかも、今回は以前と異なり何度か光り輝き点滅するように光っていた。


「はぁ……はぁ……」


「魔王様! 魔王様!」


「ん……? 誰だ?」


「魔王様!」


 目が慣れ次第に焦点が合うとそこには知らない幼女が立っていた。

 

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