第12話 新たな来訪者
俺のリハビリ小屋は以前と比べて少し変わった。
「あぁー、お前良いな」
コボルト達は皆お腹を上に向け床に寝ているのだ。
普段狩猟をしているコボルト達とは思えないほど、愛らしい姿をしている。
わんこ達が並んで腹を出して"はあはあ"しているのだ。
俺はお腹に顔をつけて犬吸いをしたいのを必死に我慢している。
「ああ、そこ良い……効く!」
コボルト達の背中には小さく丸まり、分離したメタルスライム達が挟まれている。
メタルスライム達と言っても元は一つの個体だけどな。
「メタルスライムにこんな使い道があったのか」
コボルト達もメタルスライムの運用方法に驚いていた。
メタルスライムはスライムの中でも硬さが特徴的だが、その分逃足が遅いらしい。
リハビリ小屋では絶賛メタルスライムの健康器具が流行っている。
まぁ、流行っているって言ってもお客さんはコボルト達だけだ。
「結構便利ですよね。例えば肩甲骨以外でも腰に当てると――」
俺はコボルト達に見えるように模範で体を移動させると、コボルト達もそれを見て体を動かしていた。
その光景は完全に集団リハビリだ。
犬相手にリハビリ教室をやるとは免許を取った時の俺は思ってもいなかっただろう。
そもそも異世界にいることの方が予想外だ。
そんな中突然を扉が開けられた。
扉が開いた瞬間に異臭を感じ息を止めた。
「うぐぐ……」
俺でも異臭を感じたとなれば犬であるコボルト達にはさらに敏感だった。
「この臭いはゴブリンだな」
ゴブリンという名を聞いて思い浮かぶのは、見た目が緑で小さい体だか力が強い魔物。
知能が低いため、そこまで強くないが冒険者達の初心者向けの魔物という認識だ。
転移する前のゲームの知識ではそんな感じだろう。
「あいつらはとにかく異臭がすごいんだ。水浴びもしないし、いつもふらふらして力も弱く、スライムより弱い魔物だ」
あれ……?
ゴブリンってそんなに弱い魔物だっただろうか。
ゲーム序盤で出てくるスライムより弱いと言われているゴブリンに何故か同情心が芽生えた。
俺はゴブリンに近づいた。その隣には俺を守るようにコボルト達も近づいた。
コボルトはどこからか布を取り出し、鼻を隠していた。あれで少しは異臭を感じないようにしているのだろう。
できれば俺の分も持ってきて欲しかった。
「大丈夫ですか?」
「ぐぎぎ……」
俺の問いにゴブリンは訳の分からないことを言っていた。
顔色は思ったより緑ではなく青色に近く、どこか苦しそうな表情をしていた。
俺はゴブリンを小屋の中に入れてメタルスライムを呼んだ。
なんとなく肌が緑じゃなくて青くなっていたことが気になったのだ。
ゴブリンの脚を上げそのまま寝かせることにした。
すると次第に表情が和らぎ顔の青さも少しずつ減っていたのだ。
「大丈夫ですか?」
「ああ、助かった」
ゲームの知識だと知能がない種族だと思っていたが受け答えは普通に出来ていた。
「いつもあんな感じなんですか?」
「ああ、我々ゴブリンは成長すると体がふらふらするようになり、すぐに倒れる種族なんだ。だから狩りに行くのも一苦労で水浴びにも行けないからこの有様だ」
自身の体の汚れのことを言っているのだろう。
そこまで理解している魔物なら知能もある程度は高いはずだ。
「すぐに倒れるのは大変ですね……」
近場で見てみると体の構造は俺が思っていたゴブリンとは異なっていた。
ゴブリンといえば筋肉隆々で割りかし筋肉質なイメージだった。
だが目の前にいるゴブリンは末梢……特に足にいくたびに筋肉が細くなっていた。
俺はゴブリンの下腿に触れてみるとやはりウィンドウが反応した。
下腿とは膝より下で足首より上の部分だ。
ウィンドウが反応したとすればそこに何かしらの原因があるということだ。
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