第5話 脊柱起立筋
俺は街の中で背負い鞄を買い、中に何かで作られた皮の水筒と食料を入れて街を出てた。
「やっぱ日本って良いところだったんだな」
街から出るとコンクリートとは違い、道が凸凹していた。
露骨に石が飛び出ておりきっと転んだら痛いだろう。
「それにしてもこれからどうやって過ごせばいいんだよ」
俺は項垂れながらも何かの手がかりになると思い、ステータス画面を見ながら歩いた。
「これって何か意味があるのか?」
俺は理学療法と書いてある文字に触れた。
【スキルポイントを振りますか?】
「なんだこれ?」
出てきたのはスキルポイントと書かれた新たな項目だった。
俺はそのままステータスボードに触ると理学療法の隣に1と表示されていた。
「ひょっとしてスキルのレベルが上がったのか?」
俺はスキルボードを使ってスキルを成長させたようだ。
そして、理学療法の隣にある1を押すとまた表示が切り替わった。
そこには"視診"と書かれていた。
「結局、理学療法関係のスキルだしやっぱりハズレスキルか」
王様の話では今まで地球で身につけたスキルがここでは役に立たなくなっていた。
しかもそもそも視診なんてスキルにしなくても見てわかる。
「とりあえず使い方も分からないし先に進むか」
俺はそのまま歩いていくことにした。
♢
「森だな……」
いつのまにか俺は森の入り口に立っていた。
地図も方角もわからないが、とりあえず太陽の動きを見て歩いてたのだ。
「これを越えたら街があるのか」
自分が進む道を信じて森の中を突き進むことにした。
意外に人の出入りがあるのか森でも道になっている部分があった。
その後も森の中を歩き続けても抜けることはできず、奥に進むたびに周囲は静まり返っていた。
「本当に合ってるのか?」
ずっと歩き回っていた俺の体力もそろそろ限界だ。
ちょうど大きな木があったため、一度休憩するためにもたれるように座った。
「なんかすごい柔らかいな……」
地面に置いた手元から何か変な感触と音が鳴っていた。
俺はそのまま柔らかい手触りを楽しんでいるとわずかに手元の物が動いた。
視線を手元に移すとそこには少し半透明な塊がいた。
「何だこれ……!?」
目を細めてみるとステータスのような半透明のウィンドウが出現した。
――
「脊柱起立筋? 脊柱起立筋ってあの脊柱起立筋だよな?」
脊柱起立筋とは、背骨から外側に向けて棘筋・最長筋・腸肋筋と縦についている筋肉の総称だ。
「えーっとこいつは脊柱起立筋ってことか? 筋肉だけが動いているってことか?」
俺が思っていたゲームなどに出る魔物と違った存在に驚いていた。
脊柱起立筋が森の中にいるのだ。
さすが異世界と言ってもいいのか意味がわからない。
俺はどうしたら良いのかわからなかったためそのまま揉み続けた。
そもそもなんとも言えない絶妙な感触に俺の手は止まらなかった。
「これは筋硬結か?」
柔らかい感触の中にコリコリとした部分を見つけた。
筋肉の中にある硬いものといえば筋硬結だ。
簡単にいえば筋肉が凝り固まった状態になっているということだ。
俺はそのままほぐし続けると次第に謎の脊柱起立筋は柔らかさを取り戻していた。
すると突然に脊柱起立筋は強い光を放った。
「くっ……」
あまりの光の強さに俺は目を閉じた。
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