第4話 ステータス

「ステータス!」


 俺はステータスと唱えると目の前に透明なボードが表示された。



――――――――――――――――――――


《ステータス》

[名前] 加藤 慶

[種族] 人間/男

[固有スキル] 理学療法

[職業] 理学療法士


――――――――――――――――――――


 そこには見慣れた"理学療法士"という文字が書かれていた。


 確かに俺の職種は理学療法士で間違いない。


 理学療法士は主に歩行など基本動作のリハビリを行うの職種だ。


「あのー、何と書いてありましたか?」


「俺は理学療法士と書いてあるね」


「私は植物博士と書いてありました」


 一花は名前からして植物に関係があるスキルなんだろう。


 そんな中高校生達は喜んでいた。


「おっ、俺勇者だ!」


 敦士の一言に王様の顔は笑顔に満ちていた。


「おお、勇者様が現れたのか。他の者はどうなんだ?」


「私は剣帝です」


「俺は賢者です」


「私は……聖女でした」


 初めから、由香、涼、聖奈の順で答えた。


「本当にゲームみたいだな。俺は巻き込まれ枠か」


「それでそこの女性はどうだった?」


「私は植物博士です……」


「ふふふ、植物博士って」


 高校生四人がクスクスと笑っているが、王様の表情はさらに笑顔となっていた。


「なんとあの、植物博士ですか! 貴方達が勇者の五人なのじゃ!」


 この世界では過去にも植物博士という非戦闘職だがこの国の困窮にすごく貢献した勇者がいたらしい。


「あのー、あそこのお兄さんは?」


 俺は存在感を消していたが、聖奈が気づき注目が向けられた。


「あはは、俺は巻き込まれただけなので理学療法士です」


「理学療法士?」


 一緒に転移した高校生達もわからないようだ。


「ははは、お主は外れだったようだな」


 王様はニヤニヤと笑った後に俺を無視するように話し出した。


「勇者達には手厚い歓迎をしよう」


 王様の一言をきっかけに入口に待機していたのか、メイドや執事が部屋に入ってきた。


 俺以外に声をかけると連れられるように部屋から出て行った。


「あっ、私一花と言います!」


「俺は慶だ」


 それだけ言うと一花はメイドに連れられ部屋を後にした。


 部屋には慶と王様の二人になった。


「はぁー、邪魔者よ」


 王様からはさっきの笑顔はなく真顔で俺に声をかけた。


「はい」


「お主は勇者達に悪影響を及ぼす邪魔者じゃ!」


「いや、私は巻き込まれただけでして――」


 俺の一言に王様は睨んできた。


「それはお主が勝手に来ただけだを早くこの者を連れ出すのだ!」


 王様の一言に外で待機していた騎士達が一気に部屋に入ってきた。


「えっ、ちょっと待って……」


 俺が話すと同時に騎士達は俺に向けて剣を向けてきた。


「わしの恩恵で命だけは助けてやろう」


 それだけ言って王様は部屋から出て行った。


「すみません、私達もこれが仕事なので……」


 声をかけたのは先程の俺を部屋に案内した騎士だった。


「俺はこれからどうしたらいいでしょうか?」


「とりあえずこの国から離れるのをオススメします」


 騎士は剣を鞘に入れると俺を外まで案内した。


 今頼れるのはこの騎士だけだろう。


「ここはパルス帝国です。北に行くと魔界領へ続く森があるので、急いで南に下っていくといいでしょう。これでどうにか自身を守ってください」


 俺は一つの剣と袋を渡された。


 袋の中には数枚のコインが入っていた。


「では、はやく報告しないと怪しまれますのですみません」


 騎士は急いで戻っていくと俺はその場に残された。


「とりあえずどうにか生活しろってことだよな……。あの騎士の言い方だと、このままここにいたら何かしらの処分をされるだろうし」


 ひょっとしたら王様は俺には恩恵で生かすと言ったが、騎士達には始末するように指示を出していたのかもしれない。


「とりあえず街の外まで出て南に向かうか……」


 殺される前に俺は街の外に向かって歩き出した。

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