第3話 異世界転移の茶番
「いつまで待たせるんだ……」
俺はあれから二時間ほど待っていた。その間誰も部屋には入って来ず飲み物もないため喉もカラカラだ。
しばらく待っていると扉を開く音がした。
顔を上げて見てみると若い男性が立っていた。
「あん、おっさん誰だ?」
扉を開けたのはコンビニの前にいた男子高校生だった。
「敦士どうしたの?」
「いや、なんか日本人らしき人が中にいて――」
敦士の間から顔出したのはポニーテールが特徴の由香だった。
「ほんとだね」
「二人とも後ろが詰まってる」
涼が前の二人を押すと敦士と由香は止まれずそのまま部屋に入ってきた。
「あっ……どうも?」
俺はそんな高校生達に軽く挨拶をした。
「涼強く押しすぎだよ!」
彼らの後ろから髪の毛をゆるふわに巻いた聖奈が涼を追いかけるように中に入ってきた。
「んで、おっさんは誰だ?」
「あー、多分一緒にこの世界に来たのかな?」
「あれ? 涼くんと同じ部屋にいた?」
聖奈は涼に聞くと彼は首を横に振っていた。
俺はずっとこの部屋で待っていたからな。
「あっ、いつものお兄さん……」
そんな中遅れてコンビニ店員の一花が入ってきた。
「ははは、いつも利用させてもらっています」
「こちらこそありがとうございます」
一花は俺に軽くお辞儀するとそのまま俺の隣に座った。
一花はこのグループとあまり仲が良くないのか、部屋に来るのも一人だけ遅れてきた。
気づいた時には一花は俺の隣で話し出し、その様子を少し離れたところから高校生四人が見ていた。
少し経つと扉を開けて煌びやかな服を着た、王と呼ばれていた男性が入ってきた。
「皆の者落ち着いた……お前は誰だ?」
入ってきた瞬間、俺の顔をみると王から笑顔は消え少ししかめた顔をしていた。
「あっ、王様! ご飯美味しかったです」
敦士がすぐに立ち上がりお礼を言うと王は再び笑顔に戻った。
おい、俺はまだ飯も食べてないぞ。
「何か怪しい人ですね……」
そんな王様の表情を見ていたのは俺だけではなく隣にいた一花も見ていた。
「今はまだ黙っておこうか」
状況を把握できない間は俺も情報を得るために黙ることにした。
「しばらくして落ち着いたかのー?」
王様の問に俺以外は頷いていた。
結局不遇な扱いをされたのは何も待遇がなかった俺だけだった。
そこからはさっき騎士から聞いた話を少し大袈裟に話していた。
魔王や魔物の残酷さ、周辺の状況を聞いて、勇者と呼ばれていた四人は各々反応を示していた。
敦士は頭に血が上りやすいのか手を強く握り、涼は何か考えるように聞いていた。
女子高生二人は涙を流していたが、隣に座っていた一花だけは無表情だった。
「俺達が絶対魔王を倒します」
「私もやるわ!」
敦士に続き、由香が立ち上がった。
「すみません、確認したいのですが俺達って元の世界に帰れますか?」
少し冷静になってたのは考え込んでいた涼だった。
「涼くん私帰りたいよ……」
聖奈はそんな涼の袖を握っていた。
「元の世界に帰るには魔王の魂が必要なんじゃ……」
「えっ!? あっ、すみません」
その話に俺は驚いた。すると王様は俺を睨みつけていた。
「じゃあ、魔王を倒さないとだめってことか……。なら、俺も魔王討伐に参加します」
「涼くんが言うなら聖奈も……」
「勇者達よ、感謝する!」
王様は高校生達にお礼を言うと一花を見ていた。
「一花はどうするの?」
「私は……」
由香の問いかけに一花の声は吃っていた。
「無理をさせて悪かった。皆の能力を見てから考えても良いだろう」
そんな一花を見て王様はステータスの確認を提案した。
この国にはステータスと呼ばれるものがあり、ステータスにはスキルタイプのみ書かれているようだ。
そのスキルによって人の将来が決まるようなものだった。
「それはどうすればいいんですか?」
「ステータスと唱えれば確認できるはずじゃ」
王様の一言に各々がステータスと唱えた。
「ステータス!」
俺も唱えると目の前に透明なゲームのウィンドウのようなものが出現した。
「な……何だこれ」
俺はその中の表示に驚いた。
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