第屍話 「追手襲来」

「ま? 下等霊ですけど戦力は揃いましたね。ここらで鬱陶しい追手を一掃するってのも良さそうですねぇ~」


 麓まで、あと残り二合の辺りに到着した望天。

 嫦娥の発案でかんが追手を倒す計画を立てた。

 追手を逆に待ち伏せる作戦。

 今までも、エリアに長く居すぎると鱗人に追いつかれて戦闘になっていた。

 だが、今度は鱗人を待ち構えて一網打尽にする。

 すでに麓付近は強力な妖怪たちの出現によって一種の魔境になっていた。

 それは同時に、吸魂で手に入れる魂も一級の質があるということ。鬼の三侠が加入して戦力も問題ない。

 作戦準備が始まった。


                ―――


 作戦準備中、望天はきゅうと話していた。


弓姉きゅうねえ何故なにゆえ龍玉ほしい?」


「初めはかんちょうに担がれたからだよ」


「今、違う?」


「……。龍は天が遣わした自然の力を司る管理者だって。なら、沢山の災害はこいつらのせいだろ? あたしは自然が憎い。龍玉があれば、いつか村を飲み込む水を止めれるかもしれないだろ?」


「あい。かっこいい」


「そうかい? ……それに、死んでから盗賊だってはっちゃけるのも結構楽しいんだ。あんたも良い娘だしね」


                ――――


 きゅうの遠距離攻撃で大半の鱗人は接敵する前に倒せた。

 最後の追手。鱗人の棟梁とうりょう、鱗の修行者と名乗る鱗人だけは別格だった。

 巨躯から繰り出される六角棒の破壊力は絶大で、固い鱗と精神力の耐久は非常な脅威になった。

 羅刹鳥らせつちょうが憎しみを込めた目で鱗の修行者を睨む


「伴侶、こいつが仇だ」


かん、こいつの弱点はまだわかんないの!? 矢が効かないのよ」


きゅう姉御あねご、待ってください。こいつ、戦い上手でね、と」


「望天、援護する。使う魂、指示よろ」


「あい」


 火鼠の親玉の魂を望天が鱗の修行者に投げつける。同時に、ちょうが油虫の魂を投擲する。

 魂の組み合わせによって効果が増し、鱗の修行者に有効なダメージを与える。

 だが、それもすぐに気合で持ち直される。


「憤! 下手人共、覚悟!」


「理解った、と。きゅう姉御あねご、望天! 奴さんの口だ。動きを止めて、矢に毒を」


「あい!」


 望天が泥ジゴクの魂を呼び出し、鱗の修行者の足を捕る。

 そして、きゅうが番える矢に死神蛾の魂を込める。

 死神蛾。毒を含んだ鱗粉はわずかでも吸い込めば数秒で死に至る。


「任せな!」

 

 毒の魂が込められた矢を鱗の修行者の口めがけて放たれた。

 苦痛にもがくが、強敵はまだ絶命しない。


「ペット、仇」


「任されよ、伴侶」


 羅刹鳥らせつちょうが矢のように飛ぶ。

 鱗の修行者の眼を抉り、仇討ちを果たした。


                ―――

 

 望天は散々苦しめてきた追手の鱗人全てを倒した。

 吸魂で集めた鱗人の魂は龍の霊力に汚染されていて極めて強力だった。

 嫦娥曰く、龍神にも対抗できるかもしれない。


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