第6話 月島皐月の想い

わたしは女の子が好きだ。


いいや、違う。


女の子を、利用するのが好きだ。


今、生徒会室にはわたしだけいる。考え事をする時には静かなこのお部屋が好き。


わたしを慕ってくれる女の子は、すごく素直。そしてキラキラとした目で輝いていた。その姿がとても美しい、と思って。


そこから、わたしは自分の快楽のためにも女の子を利用したいと、思うようになってタイプの女の子を見る度ゾクゾクするようになってしまった。


元々人には興味がなかった。男子も女子も。


中学の頃は共学で、よく男子から告白された。


別に告白自体は構わない。だけれど、告白している時の目つきがとてもいやらしくて苦手になった。体目的じゃないの、と思わんばかりに。


そこから、軽蔑するようになって避けるようになって今に至るわけだけれど。


アイドルを初めた理由も、自動的に自分磨きできて、それでいて輝いていられれば、慕う女の子も増えると思って、利用しただけ。


女の子は美しい。ふと見せる表情は儚く、そしてかわいい。


今の生徒会も生徒会長という権限を使って、わたしが選んだ子ばかり。わたしにとって楽園かな。


たまに気持ちが先行しすぎて、少し前みたいなことやってしまうけれどご愛嬌。今までの子は恍惚とした表情で、目をうるうると湿らせたようにキラキラしていて、受け入れてくれていた。


……だけれど、結花さんは違った。


凄く怖そうな表情をしていた。オマケに生徒会のお誘いを断られた。凄くいい案だと思ったのに。


あれから3日ぐらい経ったかな? 結花さんからはラインがほぼ毎日来ていて、『この間はすみません』とか『もう一度、お会い出来ませんか』とかメッセージが来ていた。


だけれど、通知だけ見て既読もせずに放っておいた。


まだ、今は返信する時じゃないと、そう思って。


返信して約束すれば、すぐに会えそうだけれどそれじゃ面白くない。


「はあ……結花さん、生徒会に入れたいなあ。どうしたら入って貰えるのかしら」


もう一度、誘ってみる? いいや、ダメ。絶対に警戒される。


一度身を引いてみる? 結花さんの出方を伺ってみるのもありか…


そんなことを悩みはじめて15分ぐらい経った時にパッと閃きが降りてきて。


「あっ……そうだ、この方法を使って結花さんをモヤモヤっと出来たら少しは近づいてくれるかなぁ? 少しリスクあるけれど、まあ、それくらいは許してよね。振り払ったんだから」


わたしはうっすら笑みを浮かべて、今後の対策を練った。


「結花さんを絶対、生徒会に入れる」



次の日、ちょっとした調査のために結花さんがいる2年2組へ足を運んだ。


時間はお昼休み。皆さんがお弁当を食べている時間。


2年2組にいる、学級委員長宛にプリントを渡すと生徒会副会長が言っていたので、便乗してついて行った。


プリントの内容は、『生徒会新聞』らしい


部活動の成績や、委員会などの活動報告がまとめられている。月に一回発行する新聞。


クラスの扉をガラガラと開けた。皆さんがお淑やかに食事をされていたのが目に入った。


学級委員長の姿が見えず、声を発しようとした時に、金髪で緩くカーブがかかっててふわふわしている子がやってきた。


「あらあら、生徒会長さんと生徒会副会長さんごきげんよう。どうかなさいまして?」


声が絹のように優しくてほんわかしてる。しっとりしていてずっと聞いていたい。


「舞香さんはいらっしゃいませんか?新聞を配りにまいりまして」


「舞香さんなら、職員室に行かれました。次の授業の準備があるとかないとかで」


「そうでしたか、でしたら、この新聞を舞香さんにお渡しして頂けますか? 各クラスに配布もお願いしたいとお伝えして頂ければ」


二人がお話している間に、クラスを見渡す。結花さんが見当たらなかった。


「――あの、すみません、結花さんはどちらに?」


「結花さんですか? 舞香さんのお手伝いとして、一緒に行かれました。結花さん、なにかされましたか?」


こくりと首を傾げて聞いてきた。髪が揺れて、キラキラしていてかわいいな。


「ああ、違うの違うの。少し前助けて貰って、そのお礼をしたかっただけなの」


「そう、だったんですか。わたしで良ければ、お伝えしておきましょうか?」


「それは、大丈夫。ありがとうね。またの機会にするわ。ちなみにお名前は?」


「柳下えみりと申します。以後お見知り置きを」


そしてわたしはこの教室を踵を返すように後にした。


柳下えみりさんね。覚えておこうかな。

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