─2─ あなたは神を信じますか、的な?

「リープしたってことか…?」

「おお!さっきと天気が違う!!

 確かに、じめついた空気だ。

「取り敢えず今日は暗くなりそうだし解散しよう。また明日学校で。あ、家の人とかに変なこと言うなよ!これは俺らの秘密だ。」

 そうか、こんな信じ難いこと、誰にも言えないよな。

「わかった。」



 家に帰っても、案外変わらない生活だった。

 しかし、問題が一つ。和巳は一生のいなくなる三日前にリープする、と言っていたが今日の日付は一生がいなくなる二日前になっていた。

 和巳につい電話をかけてしまい、二人で話した結果、タイムマシンの効果が薄れていくのではないかということになった。何回も繰り返せるわけではないということだ。


 次の日、学校には一生がいた。つい、林と二人で一生をどついてしまった。明日いなくなってしまうのだ。そう思うと事も急いてしまう。そして、学校が終わって公園へ向かいながらみんなで一生に探りを入れる形になっていた。

「一生ってさ、神様に興味あるのー?」

 こんな感じで急な質問となっているが。

 とは言え、この林の質問はないだろう。まるで宗教勧誘みたいじゃないか。

「え、お、おう。なくもないが…。」

 そりゃあ困惑もするわ。

「あー林、最近神話生物とか調べてるもんな。」

 和巳からフォローが入る。

「そ、そうそう!最近興味があってな!けど、満は興味ないし、和巳はオカルト全振りだから、一生を巻き込もうと思ってな!!」

 しどろもどろながらに、けれどどうにでもなれという感じがこもった言い方だった。いや、神話生物もほぼオカルトだろう。

「そうか、まあ俺ん家神社だしな。少しは興味があるっちゃあるぞ。」

「えっ!そうなの⁉」

「え、知らなかったのか?」

「和巳知ってたの⁉」

「そりゃあ。」

 …知らなかった。だから祠とかそういう方面で関係していると思ったのか。

「初めて知ったー!え、行ってみたい!」

「おう、いいぞ。…あーけど、今の時期は忙しいからやめといた方がいい。」

 それって…

「それって裏山の祠に関係あるのか?」

「ばっ、和巳!!」

「…よく知ってるな。」

「はは、俺オカルト調べてるからさ、この町のものも、勿論調べてるんだ。その祠の管轄が一生の所の神社ってことも。」

「よく調べたな。けど、忙しいもんは忙しい。また、いつでも来ていいから。明日まではダメだ。

 明日までってやっぱ。

「と、取り敢えず今日は帰ろう!あ、あ!そういえばこの前、林と和巳俺ん家に忘れ物があったぞ!寄ってけ!一生は忙しそうだし、また明日な!」

 無理やり解散とし、和巳と林を引っ張る。

「あ、ああ、明日な」

 三人で手を振り、一生が見えなくなるまで見送る。

「下手くそ。」

「うっせ!和巳は聞き方が雑すぎだ!!内心冷や冷やした…。」

「あれくらい強引にいかないと時間がない。」

 真面目な顔で和巳が言う。

「…はああ、そうだな。で、下調べしたお前がそんな事を言うくらいだ。神社との関係になんかあるのか?」

「ああ、言い忘れてたんだけど、龍犬様の供え物の話はしただろう?」

「うん。」

「その供え物が、稲鶴の血筋を引いた大人手前の人間。17歳の子供を儀式に捧げるらしいぞ。」

「え、生贄的な…?」

「そうだ。」

 …そんな都市伝説みたいな話があるのか?

「タイムマシンよりは信じやすい話だろ?」

 俺の心を読み取ったように、にやにやと意地の悪そうな顔で和巳が言う。

 いやいやいや、こんな時代にそんなものがあるのか?…けど、一生がいなかった一年間は噓じゃない。…今はこれを信じるしかない。

「で、お前はどこまで調べがついているんだ?」

「んや、そこまでないな。さっきの、神社のことと龍犬様のこと、あと儀式のことだ。」

「その儀式が明日で、その生贄が一生ってこと?」

 林がおずおずと聞く。

「おそらくなー。だから明日は、放課後に裏山に集まるぞ」

 俺と林は強く頷く。

「決まったことだし、明日に備えて今日は解散しよう。明日、林は補習があるだろ?」

「!!忘れてた!!」

「1年前だもんな。」

「あ、じゃあ林補習終わり、一生の後ついて行けよ。」

「確かに!!俺、一生見張るわ!!」

「俺と満は祠のほうに行ってるわ。」

「そうだな。じゃあまた明日。」

 みんなが真剣な表情で解散する異様な光景だが、明日ですべて終わる。不安な気持ちを抱えながら一日を終えた。



 次の日、変わらぬ学校生活。違うのは三人の心境。学校が終わってからが、俺たちの本番。話し合い通り、和巳と俺は祠を目指して裏山に来ていた。

「そういえば、生贄として一生が出されたとして、その後どうするんだ?」

「ふふふ、俺はどんなときも抜かりないのだよ満くん!」

 スルーだ、スルー。

「じゃじゃーん!それっぽいマネキンを用意したのだ!」

 そこには、服屋にありそうなマネキンがあった。

「どっから出した、今」

「企業秘密」

 …いや、いちいち突っ込んでいられない。

「それを一生とすり替えるのか?」

「そうそ…あれ、林から電話だ。もしもし?」

『一生に逃げられた!!』

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