第2話 心が遥か彼方
僕はカリー。
僕の髪の毛がカリフラワーに似ていることから、カリーというあだ名がついた。
お気に入りのあだ名だから、朝起きたときは「おはよう!カリー」、
寝る前は「今日もお疲れ様!カリー」と声をかけることが習慣化されている。
何が言いたいかというと、ただ呼びたいだけだ。
そんな僕には可愛い妹がいる。
「カリお兄ちゃ〜ん!!あそぼー!!」
お、きたきた。
しかし僕は、仮のお兄ちゃんじゃない。本物のお兄ちゃんだ。
そんな僕は今日も情緒不安定だ。
しかし、可愛い妹に迷惑をかけるわけにはいかない。
妹は、頭の後ろに一本結びをしていて、
そこからブワッと髪が外側に綺麗に広がっていて、
まるでお花が咲いているような感じだ。
まさにカリフラワー。僕の花だ。
妹が不思議そうに僕の顔を見る。
「カリのお兄ちゃん・・・?」
ん・・・!? 今、カリ“の”って・・・!?
僕は仮のお兄ちゃんではない。本物のお兄ちゃんだ。
しかし、よく考えてみよう。
妹はまだ幼稚園生だ。漢字はまだ習っていない。
僕の妹が、書けないし読めない漢字を使って、僕を呼ぶことはないはずだ・・・!!
「カリお兄ちゃん!!ねえ!遊ぼうよ!!」
僕は、いつまで可愛い妹のことを無視しているのだろう。
いやしかし、僕の妹は可愛い。僕の花、つまりカリフラワーだな。
「カリーのお兄ちゃん!!!!!」
カリーのお兄ちゃん!?そうか、そういうことか。
仮のお兄ちゃんではなくて、カリーのお兄ちゃんか!!
僕には兄がいる。兄の名前は、カナタだ。
名前で区別するために、名前のあとに“〜のお兄ちゃん”とつけることは、
別におかしいことではないかもしれない。
兄の名前がイケメンなのが気になるところだが。
おっと、妹の名前の前に、出てきてもいない兄の名前を紹介してしまった。
「おーーーにーーーいーーーちゃーーーんーーー!!!!」
とうとう僕の名前がなくなってしまった。
これまでか・・・、カリー!!!
そうだ、僕が代わりに僕の名前を呼んであげよう。
まずは自分が自分自身を大事にしなければならない。
僕は妹になんて呼ばれたいんだ? そうか。カリーお兄ちゃんだな!
じゃあ、“カリーお兄ちゃん”と呼んでもらえるように、誘導してみよう!!!
「ごめんごめん。カリーお兄ちゃんが遊んであげるよ。
えっと・・・、おままごとかな? じゃあ僕はお兄ちゃん役だね!」
「もーーーー、いい!!! カナタのお兄ちゃんに、遊んでもらう!!」
妹はカリカリしながら、家に戻っていった。
彼方のお兄ちゃんまでの距離が気になるところだ。
そして、僕の可愛い妹の名前は、ハルカ。
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