君は、カリフラワー

水無月ツキ子

第1話 友情カレー

僕の名前は、カリー。

カリフラワーのような髪をしていることから、カリーというあだ名がついた。


カリフラワーのような髪は、僕の自慢の髪でもある。

白いようでちょっと濁ってて、触り心地はフサフサよりカタカタ。


押すと今にもボロボロと崩れて落ちてしまう繊細さを兼ね備えていて

これは、他の誰も持っていない僕だけの個性だと思っている。


正直、興奮する。


僕の世界は、みんな人型で、顔もあるし手足もついてる。

ただちょっと僕の髪にファンタジー要素が入っちゃってるだけ。


ただ、それだけだ。



今日は、親友のコリーと会う約束をしている。

おっと、そろそろ彼がくる時間だ。


「お〜い!カレー!」

「僕はカレーじゃない。カリーだ」

「おい、そんなカリカリするんじゃないよ」

「いいや、僕はカリーだ。お前こそ、コリコリしてんじゃねえぞ」


…コリコリってなんだよ。

自分で何を言っているのかわからなくなり、ただただ恥ずかしい。


「コリコリしてんじゃねえぞ・・・」


もう一回言った。

なんでもう一回言ったんだ。

とにかく頭がパニック状態で、ここから先が浮かばない。

5分前に戻りたい・・・。



ヒュン!!!


「いいや、僕はカリーだ。お前こそ、コリコリしてんじゃねえぞ」


そこじゃない。戻りたいのはそこじゃない。

しかもこれ、丁度5分前の話なのか?


じゃあ、2分前はどうだ?



ヒュン!!!


「ーリコリしてんじゃねえぞ・・・」


お、おしい!!何かがおしい!!

一文字足りない!!


ちょっと待て、僕は足りないと思っているのか?

なかったことにしたいのに、足りないと思っているのか・・・?


そもそもなかったことにしたいのに、5分から2分に減らしてどうするんだ。

10分前に戻ろう!!!!



ヒュン!!!


「お〜い!カリー!」

「僕はカリーじゃない。カレーだ」


待て待て待て待て。カリーだよ!!!!

カレーじゃねえよ!?


しれっと正しく呼ぶんじゃないよ。

名前ガチャかよ。



「おい、お前、カレーだったのか」

「いいや、僕はカリーだ。僕は今、非常にカリカリしている!!」


なんでやねん!!

自業自得感がハンパない。悲しい!!

自分で自分が悲しい!!


「おい、泣いてんなよ。カレー粉が喜んじゃうぞ」


コリーが僕を慰めてくれている。彼の温かさでカレーがぐつぐつ煮込まれる。


「こ、これじゃあ、完成しちゃうよ・・・」


僕は泣きながらニコッと笑った。

情緒不安定な僕を受け入れて、仲良くしてくれるコリー。


「ささ、一緒にランチを食べよう!」


今日のランチは僕らの名前を入れて、カレコリカリー。

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