第73話 【帰還】
クレーターの中央付近で、万九郎とアスカが、上半身を起こして、夕日を見ています。
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黒塗りの丈夫そうなベンツが1台、クレーターの近くに急停車しました。
佳菜が1人、出てきました。
クレーターのすぐ側、少しだけ高くなったところに、右足を乗せます。
膝を心持ち、直角に近い程度に曲げ、じっと万九郎を見ています。
「生存者は、アスカと万九郎だけね。あの11号、ぽの256号、・・。死亡確認。オペレーション・コンプリート!」
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小さな墓地です。誰も入っていない、松浦狂子の墓。
黒塗りの丈夫そうなベンツが1台、墓地の近くに急停車しました。
「線香が、上げてあるわ。花も。山百合が2輪。もう来てたのね」
そのまま、松浦佳菜は、何もせずに、帰っていきました。
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「あの辺、だったな」
万九郎です。
糸杉の、小さな苗木を、両手に持っています。
佐世保ダムの激しい流水で。あたりは冷たい、霧のようになっています。
ところどころに、少し深い、水溜まりもあります。
万九郎は、器用に、少しだけ乾いた足場を選びながら、そこに到着しました。
「坂口さん。次の生まれ変わりでは、きっといいことが、あるよ」
そして、振り返って、帰ろうとしました。
「万九郎!お前、万九郎だろ!」
山本さん、でした。たった1人の、山本さんでした。
「山本さん?」
「坂口さんが糸杉が好きだって、知っていたの?だから持ってきて、くれたの?」
「うん」
「俺は、来年からの坂口さんの命日に必ず、ここに来る」
「そうか。私もそうする」
そう言うと、山本さんは、さっさと山を、降りていきました。
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万九郎は、たった1人で、佐世保の街を、歩いています。
アスカと一緒では、ありません。
万九郎は、たった1人です・
マクドで、ビッグマックを食べても、回転寿司屋で、たった1人で食べても、美味しいです。
もう12月に、なりました。
風が、寒いです。
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万九郎は、自宅でゆっくり、お風呂に入っています。
浴槽は割りと広くて、両脚をスッキリと、全部伸ばすことができます。
「風呂は、いいなあ。心が、暖まる」
万九郎の目は、暗い虚空を見ていました。
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佐世保別邸に、行く準備をしています。
いつも通りの、朝です。
でも、万九郎はまた、たった1人です。
「はぁ」
(万九郎)
「!」
何かが、聞こえた気が、しました。
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万九郎は、そのまま、歩いて行きます。
でも、その背後には、透明な誰かが、いました。
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以上で、第2部は、終わりです。
この物語は、自分で言うのもアレですが、大傑作です。
でも、最後の最後まで、これから書く話が駄目なら、すべて台無しになります。
ほとんどが、新しく書く内容になるので、どのくらい長くなるのか、分かりません。
でも、頑張ります。
では。
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