第72話 【アスカ】

物凄い暴風が、今では何もなかったかのように、周りは静かです。


「万九郎。私、あなたに会えて、本当に良かった」


「あなたと会えるまでの、無数の生まれ変わりの間、色んなことがあった。男に生まれたことも、女に生まれたこともあった」


「誰かと結婚して、子供ができたこともあった。悲しいことも、寂しいことも、嬉しいことも、たくさんあった」


「それなりに、幸せな一生も、いくつもあった。でも、ダメだった。ダメ。あなたじゃなかったから。万九郎」


「だから私は、私の全てを、魂の全てを、あなたに、あげます」


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万九郎とアスカは、しっかりと抱き合っています。


アスカは168cmありますが、万九郎は182cmなので、アスカの顔が、万九郎の顎の下に、あります。


アスカの吐息が、万九郎の胸に、かかります。


「アスカ・・」


万九郎は初めて、アスカのことを本当に、心底から、心の奥から愛しいと、想いました。


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一番低い雲の、切れ目を通過しました。


無音で、無言で、抱き合った2人の身体が、落下して行きます。


ズッドドーン!


佐世保別邸から5kmほど離れたところに、万九郎とアスカが、落ちました。


小さなクレーターが、できました。


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