第60話 【天井の舞】

万九郎は、熱い緑茶を、飲んでいます。


スクリーンには、巨大なUFOが、映っています。


「あの中にもエイリアンが、いっぱい住んでたんだな・・」


「それが今は空っぽ。我々のみを狙ってやって来ている」


狂子様が、言います。


「俺たちもエイリアンも、別に憎み合ってないのに・・」


スクリーンを見てると、囚われのエイリアンたちの叫びの声が、聞こえるような気がします。


意外と皆んな、淡々としています。


時々、トイレに立つ人が、いるだけです。


「皆さん、落ち着いていて、いいと思います」


美香が、言います。


「アスカさん、頑張ってくださいね」


「ええ」


ニッコリと返す、アスカです。


############################


「松浦食品のホワイトスイートチョコとティーは、いかがですか。美味しいですよ」


美香は、この点に関しては、一貫しています。


「ありがとう」


万九郎と身化は、2人でチョコを食べながら、大スクリーンを眺めています。


「来ました!南東の方角から、ウィッチの編隊が、こちらに向かっています!」


「とうとう来た!アスカは・・?」


アスカは、こちらを見てニコッと微笑むと、当たり前のことのように立ち上がり、当たり前のように歩いて行きます。


庭まで行って、こちらを振り返るとファッと飛翔!


佐世保別邸の一番高いところに、移動しました。


大スクリーンが切り替わり、アスカが映っています。


ずっと向こうの空に巨大なUFO。


その手前に白く点々と、ウィッチーズが見えています。


空が、曇ってきました。


アスカは、ウィッチもUFOも見ていません。いつもの海や山や川を、見ているようです。


フワッ


何の予感もなく、アスカが踊り始めました。


片足を軸に全身を使って、優雅に舞います。


いつの間にか、アスカの衣装が、羽衣みたいになっています。


風を受けて羽衣が膨れ、まるで天女の舞のようです。


「WAO!It’s gorgeous!」

ドクです。


「I saw that!I saw that when・・」


マーティー・・思い付かなかったようです。


皆んなも、アスカの舞いを、うっとりと見ています。


気がつくと、アスカの周りにうっすらと燈が1つ、2つ、3つと点っています。


「あれをやるつもりか!」


狂子様が、言います。


「昔一回しか、見たことが無いが、強力な古代鬼神を複数、召喚しながら巨大呪文を詠唱し、同時に放つ。極めて困難な技じゃ」


その間にも、アスカの周りの燈は、増えています。


ついに、アスカの周囲を、燈が完全に取り囲みました。


あっ?


1つ1つの燈をよく見ると、裏切られ絶望のあまり、目が飛び出さんとしている男、臨月の痛みに叫ぶ女、男に襲われ、泣き叫ぶ女・・。


苦痛と絶望と哀しみに満ちた男女の、苦悶の表情が見えています。


「何十回も何百回も転生して、苦痛と絶望の人生しかなかった奴らの、底抜けに暗い憎しみが、転じて鬼神になったのじゃ」


「やばい。このまま鬼神たちに、ウィッチたちをやらせると、瞬時に全員、食い散らかされて、血の霧が降る」


血の霧・・。

見たくない光景の、かなりNo.1です。


その時には、アスカの上空に、ウィッチーズが集結していました。


サークルフォーメーションから一気に、撃って来るつもりのようです。


その瞬間、アスカの身体が上に伸び、両腕を広げて上に向けます。


「Tesla!」


ズッドドドドッドドドドドドドオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーン!


凄まじい閃光と雷鳴です。


その瞬間、すべてのウィッチのユニットは、破壊されていました。


############################


雷が鳴り止んだときには、鬼神たちが、すべてのウィッチを、背後から拘束していました。


アスカの服が、さっきまで服に、戻っていきます。


鬼神たちは、ウィッチを手早く邸内に投げ込むと、ぼんやりとなり、消えました。


スタッ。


何事も無かったかのように、アスカが、庭に降りて来ました。


集められ、拘束されたウィッチの1人に、


「怪我は、無い?」


と、声をかけます。


ウィッチは、無言。


############################


アスカは、こちらを見ると靴を脱いで、さっきまで座ってたところに戻ります。


「お疲れ様でした」


美香が、言います。


それが合図になったように、皆んなが、


「スゲーーー!」

「いや綺麗だったわ」

「優雅だろあれ!」

「凄すぎて、目が離せなかったよ!」


など、アスカへの大称賛です。


「アースーカ!アースーカ!アースーカ!アースーカ!アースーカ!アースーカ!アースーカ!」


皆んなウキウキです。


すごーーい!


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