第41話 【千葉】

万九郎とアスカは今、千葉行きの総武線に乗っています。


平日の午前9時で、下り路線だというのに、空いているシートは、ありません。


今回は、東京大学の地震研究所からの依頼です。


「俺は、千葉って初めてだなあ。常磐線で、柏と松戸を通過することは、あったんだが」


「私も、無数の生まれ変わりの中で、千葉には縁がないわ」


「まぁ、2人で初めての遠出だし、気張らずにいこう」


「ええ。その方が、うまく行くわ」


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電車は、JR千葉駅に到着しました。


当然、駅の外には、出ません。


「東京郊外の大きめの街は、どこも似たようなものだからなあ」


千葉、酷い言われようですが、本当のことなので、仕方ありません。


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JR千葉駅で、総武本線の電車に乗り換えます。


今回の目的地は、犬吠埼です。


途中で、成田線に乗り換えます。


銚子では、私鉄に乗り換えました。


「車、レンタルすれば良かったなあ」


「初めて来ているのだから、失敗は付き物よ」


「そうだな」


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そして、ようやく犬吠駅に付いた頃には、15:00を過ぎていました。


「やっと着いたな」


「ええ。さっそく、始めましょ」


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犬吠駅から東にしばらく歩いて、万九郎とアスカは、犬吠埼灯台に来ました。


犬吠埼灯台の少し先には、旧犬吠埼霧信号所霧笛舎があります。


信号所霧笛舎と信号塔の間を歩き抜けると、崖地植物群落という名の荒れ地があります。


この荒れ地のずっと先に、やっと太平洋が見えます。


「どうしようもないな、これは」


「ええ。大地震は当分、起きないけど、震度6前後の地震は、かなりの頻度で起きるわ。そのように、出来ているのよ。その程度の地震に拘泥して、時間とお金を無駄にするより、日本では5年に1回以内の頻度で、震度7の大地震が起きるのだから、予測できないなら、事後対応を効果的にすべきだわ」


「そうだな。ところで、今から、どうする?同じ線路で揺られるのは、まっぴら御免なんんだが」


「万九郎、後ろを見て」


万九郎が振り返ると、そこには89年式の赤いZカーがあります!


「私のを今、運んだのよ。万九郎、運転してみる?」


「いいのか!?」


「もちろんよ」


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途中のコンビニで、パンやおにぎりと飲み物を買った以外は、ひたすら西南西にZ

カーを走らせ、九十九里浜に着いた時には、とっぷりと暗くなっていました。


万九郎とアスカは、浜に出て、真っ黒な海と、星が輝く空を、見ています。


「さすがに、こっちは東なだけあって、佐世保より星が、良く見えるな」


「ええ。中国の汚染物質は、日本政府が何か言える問題じゃないし」


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「万九郎」


「うん?」


「この満天の空は、そのまま1人の人間の心の中の、投影になってるのよ」


「どういうことだ?」


「明るい星、暗い星、そして見えない星。明るい星は、この人生で実現できた可能性。暗い星は、実現できなかったけど、次か、次の次の人生では、たぶん実現できる可能性。そして見えない星は、いつになるか分からないけど、転生を果てしなく繰り返すうちに、実現できるであろう可能性よ」


「そういう、ものなのか?」


「ええ。さすがに寒くなってきたし、近場でビジネスホテルにでも、泊まりましょう」


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千葉編終了です。




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