第3話【佐世保】


これは、セレスティーナと出会う前の話になる。


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今日は、7月21日。夏休みだ。

今年は梅雨が明けても、なんだかズルズルと雨がちの毎日が続いている。


夏休みと言っても、喜ぶのは小学生だけ。

俺はほどほどの歳になってるし、仕事だってやっている。

まぁいわゆるテレワークって奴。

つか自営に近いかも。


そんな訳かどうかは知らないが、今日は仕事がない日なのだ。


とは言っても天気は雨。

家に篭っておくしかない。


俺は一軒家で一人暮らし。


両親からは、随分前に縁を切られた。

他に家族はいない。


天涯孤独の1人身なわけだ。


今日みたいな日にやれることと言えば、iPhoneでゲームしたり、ふと思い付いて検索するくらい。

やってるゲームは白猫プロジェクト。

かつてはモンストFGOと共に三大ガチャゲと呼ばれていた。

一時期は売り上げが低迷もしたが、最近はセルラン1位にも復活!割とブイブイ言わせているゲームなのだ。


で、俺はと言うと、なんと7年も続けている、最古参のユーザー様だ。


で、絶賛開催しているガチャが、7周年記念なわけ。

で、俺はと言うと、なんと大爆死を演じている、最も不幸なユーザー様なのだ。


「クッ!クウッ!」


ガチャ画面で「10+1回ガチャる」をタップするたび、俺の顔面には油汗がジワジワと浮かんでいた。


「こんな!こんな!この俺が!」


いわゆる阿鼻叫喚だ。


「なんで、なんで、なんで俺の所に来てくれないの?サヤちゃん!エレノアちゃん!」


大爆死してるのに、来てくれる訳がない。


結局、ジュエルを5000個も使って、引けたのは「白髪」だけ。


万九郎は、この白髪が大嫌いだ。

一番弱くて人気のない赤髪ってキャラが、白髪の正体だから。


「はーんもう、水着ガチャもスルーして引けないじゃん?俺の夏はどこに行った?」


スマホの画面側を下にして置いて、暫くぼぉっとしていた。


拒絶状態。


息もしていたか、怪しい。


「ブフォ!」


危うくガチャで、死にかけた。


「まぁ負けたものは仕方ない。ビールでも買って来て、気持ち良くなるか」


2階のPC用デスクに向かって座っていた万九郎は、財布をジーンズの後ろポケットに入れて、階段をスイスイ降りると、玄関から外へ、出掛けたのだ。


「とは言っても、これじゃなあ」


さっきから相変わらず纏(マト)まった雨が降っているので、丈夫な自動オープン型の傘をさして、改めてホイホイと外に出掛けた。


万九郎の家は、割と佐世保北高校に近い。

自分が通ってた頃は西高とも拮抗してたのだが、今では佐世保唯一の進学校だそうだ。

今さら関係ないけどな。


現在時刻は、午前11時48分。

腕時計で確認した。


「昼時だけど、さっきガチャで大爆死したから、ストロング系のを3本と、カルビーかっぱえびせんにしよっと」


財布には確認しない、万九郎なのだ。


「ピコンピコンピコン」


「いらっしゃいませー!」


向かったのは、近場のファミリーマート。


近くの長崎県立大学の可愛い女子大生が、スマイルゼロ円なのに、微笑み掛けてくれる。


万九郎も思わずスマイル。

大爆死のダメージが、少し癒された。


入り口近くに重ねてあった買い物カゴを、ヒョイっと片手に持つと、颯爽とドリンク売り場でストロングゼロ500ml缶を3本買い、おつまみとしてカルビーかっぱえびせん1袋と一緒に買い物カゴに入れて、レジに向かったのだ。


「いらっしゃいましませ。お買い物袋は、ご利用になりましたか?」


「はい。ジーンズの前ポケットに入ってます」


いい男は、無駄な手間を好まないものだ。


「はい。会計は1023円になります」


「会計はSuicaで!」


「まぁ」


女の子が、にこやかに微笑む。


効率的に、鋭角的に。

これが、万九郎のモットーなのだ。


「じゃ」


クルッと左87°回転すると、颯爽とファミリーマートから立ち去ったのだ。


帰りも雨が降ってて、傘と買い物袋で両手が塞がれるが、身体能力が脅威的に高いので、ルンルンと軽やかに歩いて行く。


「うん?」


北高の女子高生の集団だ。


「キャハハ♪」


こっちが坂を登る形なので、生足にミニスカートの制服姿が、よく見える。


万九郎は、自分が目上でもあるから、しっかりした立ち姿を見せてあげる。


上着は黒のTシャツでゆったりしてるが、下半身は濃紺のジーンズでタイトに締め付けている。


身長は182センチ。


正々堂々、威風堂々といった立ち姿だ。


「プファー」


女の子の間から、溜息をつく声が、コッソリと聞こえて来た。


でも無視。


万九郎は、ロリコンではない。


「よいしょ」


やっと家に、戻った。


玄関のドアを閉めたら、手荷物を片手に、颯爽と階段を駆け上がる。


自分の部屋のドアを開けると、ストロングゼロとかっぱえびせんをデスクの上に置いて、昼っぱなから晩酌を始めたのだ。


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すっかり眠ってしまってたようだ。


ベッドで身体を起こすと、目覚まし時計で、時刻を確認する。


午後2時9分。


少し酔ってたこともあって、ベッドの上でぼうっとしていた。


さらに2分ほど、経過しただろうか。


午後2時11分。


「ウィンウィンウィン!ウィンウィン!」


机の上のiPhoneが、突然けたたましい音を上げた!


「緊急地震警報だ」


直後、もの凄い縦揺れ!


万九郎は、ベッドにしがみ付いたまま、動くことさえ、できなかった。


「午後2時11分!?東北大震災と同じ?」


ズズズズズズーーーん!


地獄の底から鳴り響くような、凄まじい地鳴り!


とにかく、現状を確認しないと。


iPhoneでBB2Cを開き、ニュース速報+となんJを見てみた。


「九州の地の果てで大地震www」


「東京より先に大地震とか、フザくんな!」


まともなスレもレスも、1つもない。


「駄目だ。トンキンが仕事してねえ」


こんな時は、なんだかんだ言ってもNHK。


跳ぶように1階に降りて、50インチ大スクリーンのTVを、リモコンでONにする。


アルコールの酔いは、すっかり失せていた。

元々、酒に酔いにくい体質なのだ。


チャンネルは、すでにNHKになっていた。


「大変なことになりました。つい先ほど、佐世保市の沖合いを震源として、巨大地震が起こった模様です」


「震度は7でも、足りないかも知れない大きな揺れ。そしてマグニチュードは、脅威の9.6だと?」


恐るべき事態が、佐世保を襲っていた。


「東北大震災と同じだな。フザケてる奴は、真っ先に死ぬ」


「まずは正確な情報だな。暫くTVとスマホで、信用性の高い情報をゲットしよう」


情報が間違えてると、自分がミスするだけでなく、他の人たち、例えば女子高生たちに、大怪我を負わせる原因にもなりかねない。


「こちら佐世保から中継です。巨大地震に襲われた佐世保は、市街地、自衛隊基地、US Navy Baseのいずれも、落ち着いた雰囲気です。東北大震災と違って、停電が全く起こっていないのが、大きいですね」


最寄りの松浦発電所と電源開発(株)松浦火力発電所から佐世保市内への電力供給に、全く滞りが無かったことが理由らしい。


「玄海の原子力発電所は、全然揺れなかったのか。松浦市の発電所周辺も震度5弱程度と、何ひとつ事故が起こってないもんなあ」


「NHKの撮影クルーの車が、ちょうど大地震が発生した時刻に、松浦市の発電所に近い国道204号線を、偶然ほかの理由で走っていました」


「揺れなどは大丈夫だったのですか?」


「それがですね、国道204号線の様子を撮影していた映像が、ちょうどNHK佐世保支局に到着した所でした。この映像を、視聴者の方々にもお分かりになりやすいように、ご覧になっているTVで、今から再生します」


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「えっ、これ大地震の被災地の映像なんですよね?」


「本来なら、そのハズなんです。佐世保市と松浦市は南北に隣り合ってて、体感的にも非常に近いですから」


「あ今、午後2時11分の映像が映ってるハズなんですが、全く揺れていません。国道両側の歩行者も、ごく普通のように歩いています」


「はい、九州大学の地震火山観測研究センターから急遽、NHK佐世保支局を訪れて頂いている松尾昂理学部教授に、この映像を確認して頂いているところです」


「皆さん、ご苦労様です。九大理学部の松尾です」


それで、教授はこの映像について、どのようにお考えですか?」


「これは、アレですね」


「アレと仰いますと?」


「どうにも嫌な感じの、アレです」


いやその・・・ぶん投げてるよな、コレ?


「取り敢えず、慎重に様子を見て行きましょう」


専門家が「自信はありませんヨ?」みたいなこと、抜かしてるんじゃねえよ。


とは言え、今の時点では,何も決定的な事を言えないのも事実。

さすがに九州大学の教官さん、基礎的なデータと情報を、時間をかけて引き出す大切さを、良く理解している。


まっ、権力を持ってて、時間をかけてじっくりと、人海戦術でデータや情報を集める事が出来るお偉いさんは、言うことが違うな。


「でもさ、それじゃあシロウトなんだよなぁ」


万九郎には、親はいない。


いつかある日、ある時に、佐世保の総合病院の正門前に、捨てられていたのだ。


「これは行幸。よもや当病院改築の竣工日に現れるとは」


当時の院長、二位田原(ニイタバル)由美兼任3佐は、美しい容貌と弾けんばかりの肉体で、幼児を抱きしめた。


「お前は、これより未来、無数の、まさに万事(ヨロズゴト)の哀しみから、苦しみから、そして漆黒の絶望から、無数の、まさに万(ヨロズ)の人々を救う事を、生業とするであろう」


「よって、万(ヨロズ)万九郎と名乗るが良い」


二位田原1佐には、幼少の頃から、厳しい教えを受けた。


「なのに、自分だけさっさと死にやがりやがって」


「アンタの気持ちは、俺が死ぬまで背負って、行ってやる」


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俺の生い立ちについては、自分自身、よく把握できていない。

今さら教えてもらうのようなことてもなし、知ったところで俺はどうでもいいから、脳内で放置している。


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この地震の後、万九郎は25日間、潜伏する事になった。



佐世保市の西南西には、九十九島と呼ばれる、文字通り無数の島々で構成される多島海がある。

これらの島々は、遥か昔から、唯一神社により、統率されて来た。


それが、九十九島神社である。


「それで、ミスター・ヨロズは、そのツクモシマ シュラインに行ったと?たった1人で?」


「済まない。そちらの懸念は、良く分かる」


「良く分かる?良く分かる、だと!貴様こそ現状について、良く分かった上で物を抜かしてるのだろうな?」


米軍第7艦隊、別名太平洋艦隊。


太平洋戦争における大日本帝国の敗戦以来、自衛隊のあらゆる活動、瓢箪、諜報を、常時決定付けている、日本国に属さない存在。


「で、あるからでこそ、第7艦隊と海上自衛隊は、ディーセンシー・コードの遵守を優先すべきなのでは?」


日米両軍が驚異的と見做した存在に対しては、取り分けその存在が個人の場合、肉体的、精神的、社会的、並びに能力的な面に対して、徹底的な干渉が行われる。


「奴らが神か悪魔か知らぬ!僅かな猶予で、こちらが破滅的殲滅を被りかねないのだぞ!」


「心得ています」



松浦佳菜。

九十九島神社の筆頭巫女である。


8月15日午後4時27分。


「やっぱり、来たのですね?」


「松浦家長女様の、お待ちとあらば」


松浦家の歴史は古い。

魏志倭人伝のマツロ国が起源であり、奴国、邪馬台国同様、日本において最も古く、かつ最も由緒正しいクニの1つなのである。


「万九郎・・」


鮮やかな白と赤の巫女装束で、佳菜が問う。


「やってくれますか?」


「もちろん。お姫様の願いとあれば」


恭しく頭を下げる、万九郎。


「いつも貴方ばかりに、迷惑を掛けるわね」


「あの日、佐世保で迷子になってた佳菜に、うっかり魔法見せちまったからな」


「あれは素晴らしかったわ」


「人が空を飛んだり、指先からレーザービームを撃ったり、海面を走ったり、挙句の果てに佐世保から平戸の城下まで瞬間移動するなんて」


「最初は肉体強化で速く動いたり、5トンぐらいはありそうな岩をぶん投げてるだけだったのにな」


「だけって?普通は驚きますよ」


「だからって、普通はあれこれ違うのオーダーするか?」


「夢見る魔法少女だったのですよ」


「それにしてはUS Navyと自衛隊相手に、とんでも無くエゲツナイ商売やってるじゃねえか。何でも、案件当たり数千億ドルとか」


「私は、松浦の姫として、全ての領民の安全と命を、何としても守らなければなりません」


「万九郎。貴方にも分かるハズです。寒い寒い海風が吹く中、時化た海に漕ぎ出す漁師たちの気持ちが。暑い暑い真夏の日差しの下、田畑を耕し、実りに結び付ける百姓たちの気持ちが」


「皆んなが走って笑って喜んで、たまには悲しくて泣く、そんな皆んなの毎日を、万九郎、貴方は良く知っているハズです」


「何故なら万九郎、貴方も松浦の民の1人だからです」


「ああ。だからこそ、守れる俺が、守らなくちゃいけない。皆んなが皆んなの仕事をしてるように、俺も俺の本懐を果たしたい」


「良く言いました。それでこそ万九郎です」


「もう段取りは、出来てるんだろ?」


「今回のミッションに取り消し(Cancellation)は有りません。貴方が取り消す場合、全人類に恐るべき災厄が降り注ぎます」


「俺の答えは言うまでもない。Goだ」


「今回のターゲットはオロチ、超巨大な地竜よ」


「ターゲットの所在は?」


「ここ、九十九島神社の裏手にある、広い、広い森よ」


「この森の中は、魔素で満ちており、屈強なUS Navyや自衛隊の戦士たちも、立ち入ることは出来ません」


「この広大で黒い魔の森は、入れば入るほど深くなる、階層型のダンジョンになっています。階層の深さは不明ですが、少なくとも100層あるのは、確実よ」


「このダンジョンにたった1人で挑み、最下層にいるドラゴンを殺しなさい」


「下手に時間がかかるか、ドラゴンの討伐に失敗すると、魔素がダンジョン内に過剰に溜まり込みます」


「で?」


「Implosion。壊滅的内破よ」


「予測されている南海地震の1億倍以上の超巨大地震と、付随する巨大津波によって、九州の平野部、すなわち博多、天神、小倉、佐世保、熊本、別府、延岡、鹿児島の市街地及び周辺の住宅地域は全て、全て灰燼に期します」


「巨大津波が引いた後も水位は下がらず、九州は海抜50メートルが新たな海面になります」


「結果、雲仙、久住、阿蘇、霧島の山岳部だけが、新たな九州になります」


「交通インフラは完全に水没し、海には恐るべき魔獣が生息するようになって、九州の文明は消滅します」


「要するに、その腐れドラゴンをサッサと殺せばOKというわけだな?」


「それで、さ」


「はい?」


「たった1人で魔王に挑む勇者って、城のお姫様から何かこう、貰えなかったっけ?ズル的なのでさ?」


「強力なスキルとか魔剣とか?私の勇者様は、何をご所望?」


「魔法も身体能力も、十分なほどに強いからな。二位1佐の地獄のシゴキのお陰で。何か超強力な武器ない?」


「では、この魔剣パルムルクを与えましょう。古代ドイツの英雄、ジークフリートが、シュバルツバルク(黒い森)で振るい、強力な狼の魔獣フェンリルを斬り殺した時の魔剣よ」


「Oh! Thanks alot!剣とか持ち歩いたら、銃刀器法違反で即逮捕だからな」


「万九郎。貴方には、銃でも剣でも、戦いに勝つために使う分には逮捕されない許可を与えましょう」


「何か007っぽいな。二度死んだりして」


「貴方には、私が生きている間、死ぬことを許しません。もちろん、私は貴方と共に生き、貴方より長く生きます」


「早速ミッションをスタートしたいんだが、もちろんプランBもあるんだろ?」


「残念ながら、Yesです。貴方が万が一ミッションに失敗して、破滅が確実になった時には、佐世保基地とこの島の中間地点にUS Navyの空母ニミッツ、海上自衛隊の駆逐艦金剛、並びに付随軍艦が配置しており、F-22、F35の艦載機全てと、US Navyの原子力潜水艦から搭載する核ミサイル全てを、ダンジョンに向かって投入する事になっています」


「げえ、World War 3とか、全力で拒否する」


「フフフッ、そうね。せっかくのお盆なのだから、楽しい夜にしたいわ」


全力で同意。


「ではClock Adjustment on 17:12。同時にOperation Begun!」


俺は、闇魔法の一種、身体強化で得られた恐るべきスピードで、ダンジョンを1階ずつ確実に攻略していく。

ザコ魔獣は見掛けても無視。

オーク以下のザコは、US Navyと自衛隊に片付けてもらう。

基地発の輸送機からの空挺降下とか、ノルマンディー作戦かよ。


俺はたった1人、目にも見えない速度で、ダンジョンを駆け降りていく。

10階ごとのラスポスも、最初は弱過ぎて瞬殺。

予想に反して100階を超えても、登場したのはせいぜいマグマジンとかゴーレムといった中ボスたち。

京都に修学旅行で行った時に買った木刀で塵にする。


「いや火とか石を報酬で貰っても、1ドルにもならねーだろ!こっちはリモートオフィスで仕事が途絶えて現金が欲しいンだ。I need cach!あ、Alotな、しかもASAPで!」


130階を超えた辺りでクジャタ、ウェンディゴといった大型モンスターが、ようやく出現し始めた。


「よっしゃ。やっと魔剣バルムルクの出番!って、紙防御wwwお前らはプリンか」


まるで白猫プロジェクトの無限ダンジョンのように、160階を超えてもモンスターが弱い。弱過ぎる。


麒麟もバルムルクでバウムクーヘン状のナイスな肉塊に分解。


何故か海がある階ではクラーケンや超巨大エビが出現。


「はーん?海の男を舐めるンじやねえ!クラーケンって、要するに12メートルぐらいあるイカだろ?佐世保市場はやってるだろうな!閉まってたら、アイツら殺す」


万九郎は、美味しそうな海の幸をガンガンGetして、持ち込んだ丈夫な袋に収納した。


この辺りの階になると、宝箱もゴージャス。

金銀宝石聖なる剣、ウッハウハだ。


「宝石とか質屋で足が着いちゃうでしょ。佐世保の総合病院の若くて綺麗でオッパイが大きい看護婦さん達に、何かの賄賂として渡すしかねーじゃん。いや俺犯罪してないし、いくら佐世保に色街が無いと言っても、宝石で一発とか、看護婦さん達に殺されるwww」


有りもしない妄想に耽っているうちに200階のダンジョンボス、アースドラゴンに遂に接敵!


「コイツはデケェ!さすがドラゴンなだけある300メートルぐらい?全長的に」


土竜だから羽生えて無いし、精霊呪文とか魔法陣とか、とにかくターゲットがデカいからガンガン決まる!


「プフモーーーーー!」


苦悶に悶えるドラゴンが、叫んでいる!泣いている!


「悪いが無駄に馬鹿デカい恐竜を、気の毒に思うマインドはねえよ。哺乳類的に」


「ドラゴンの肉とか超美味いって言うし、全身隈無く分厚く輪切りだ!」


目に見えない速さで、魔剣のシュタシュタ切り!


「こりゃ佐世保市民だけじゃ食い切れないな。今回日影役やってるUS Navyの諸君!それと食いしん坊そうな海上自衛隊の兵士諸君!あ、コネが出来たら色々美味しそうな米軍、自衛隊、大手金融機関、TVその他のマスコミの偉い人にも差し入れしよう。刺身とか」


ダンジョンコンプリート報酬は、もう想像にお任せしますというか、超古代文明の遺跡とか、どうすんだよこれ?佳菜に相談してみるか?貴重な歴史遺物とか持ってそうだし、よしこれで行こう」


既に勝敗は決し、敗者としての魔獣たちとダンジョンは、凄まじい勢いで消滅しつつある。


「ドドドドドドドーーーッ、ダン!」


暗黒の魔素と、強烈な地震エネルギーが、今完全に大気圏外に放出された。


一時期真っ黒だった空が、お盆の夕方に戻って行く。


############################


「おめでとう。早くもドラゴンスレイヤーね。S級冒険者の目的を、易々と成し遂げた感想はいかが?」


「全然楽勝じゃ無かったって。佳菜がUS Navyや海自のお偉方と、事前に完璧なプランAを立案したおかげだよ。それに地竜って相性良かったし、万年単位で生きるらしい古代竜(Ancient Dragon)とは格が違い過ぎるよ」


「これで目出たくオペレーション・コンプリートよ。帰りはUS Navyの空母ニミッツで送ってくれるって」


「俺は、いい(I pass)。US Navyのストロングなアルコール野郎共に囲まれたら、佐世保に上陸できる気がしない。それにお盆は近くの港の精霊流しに、ひっそり参加して、今年去った人達を見送りたいし」


「分かったわ。私は領主の娘として、ハウステンボスで行われる"The great

Obon Festival in Tembos"で挨拶とかダンスとか、出なくちゃ行けないのよ。今回の報酬だからって、国の予算でテンボス究極、貸し切っちゃって、佐世保市民はどのイベントもホテルも無料だそうよ。自治体がサクッと解決したから、国としては充てるハズの緊急予算が浮いちゃったって」


「なんか上級民も大変だな。じゃ、ニミッツから揚陸艦が着いたし、ここでアデューだな」


「万九郎!貴方はいつも、これからだって私のヒーロー。私もお姫様として、いつも同じパーティに参加できるように、頑張るわ」



US Navyのストロングガイ達が、佳菜をエスコートして空母に戻って行く。


俺は、北高の近くの自宅までフラフラと飛んで行き、途中で昼前に寄ったファミマに寄って、ストロング系の500mlを3本と、アタリメという名前のスルメを買って、家に帰って2階のベッドで寝た。


############################


今日は暇な午前から落差が大変だったなぁ。あと、ストロング系飲んだから、近くの港の精霊流しに行くの、すっかり忘れてました。二位1佐は何回忌だっけか?すみません1佐、彼岸には墓参りに行きます。


今回はベリーストロングな魔法と精霊呪文と魔法陣が使い放題だったので、すぐに眠れた。


まだまだ夏だ。


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