第4話・変化師

 ──翌日。

 金はあるけど、あんなのダメだ。あんな卑怯なことは、もう俺はしたくない。

 無職の俺は、じゃなく、働く。

 そんな俺の姿を見た爺さんが

「働くなら、砂金掘りでもしたらどうじゃ? 結構稼げるぞ? 幸いまだまだ砂金はありそうじゃし? なんなら砂金探しの旅をするってのもよかろうて?」


「砂金探しの旅? そんな反則技みたいな仕事……」

「頭の堅いやつよのう? そもそもその為のスキルではないのか?」

「『変化師』が?」

 俺の不思議そうな顔を見て爺さんが言う。


「お主の『変化師』はお主にしか出来んと思って与えられたスキルであろう?」


 ──俺にしか出来ないスキルかぁ……。でもこの「変化師」を使って働くとしたら? 何をすれば?

 砂金から金を作ること? そんなのは邪道だろ……。


「そんなに悩むことか? 少年よ? 『変化師』ほど素晴らしいジョブはないぞ?」

「え? 『変化師』が素晴らしい?」


「おい? 本当に何も知らんのか? 『変化師』の素晴らしさを?」


 俺の不思議そうな顔を見て、爺さんが再び言った。

 だって、みんなに出来損ないのクズと言われたスキルだぞ? 素晴らしいって分かってたら、そんなこと誰も言わないだろ?


「うーーん。嘆かわしい事態じゃのぅ……。わかった。それなら仕方あるまい。儂が『変化師』の凄いところを教えてやろう」


「え? 何で爺さんが? って、何で爺さんずっとここにいるんだよ!」

「まぁそこは気にするでない。フォフォフォフォフォ」

 何が悲しくてこんな爺さんと一緒にずっといないといけないんだよ。可愛い女の子なら大歓迎だけど……。

「お? お主も女子おなごには興味あるのか?」

「おい! 俺の心の中、読んだら許さないって言ったよな?」

「なら心の中で呟くのやめたら良いと言ったではないか? フォフォフォフォフォ」

「もう、あっちに行ってくれよ! 俺に付きまとわないでくれ!  金が欲しけりゃ全部やるから! 迷惑なんだ!!」


 俺はついに言ってしまった。無能のクズだと罵られた挙句、実家を追い出されたことの悔しさからか? 何も持っていない自分にイラだったからか? とにかく俺は今の状況に苛立ちを感じていた。


 ガークハイム領を出た時に俺は誓ったんだ。俺は新しい地でやって行こう。俺のことを誰も知らない町で一から頑張って行こうって。


 あんな、詐欺みたいなことをして富を得る為に、俺は家を出たわけじゃないんだ!



「少年よ儂からの最後のアドバイスじゃ『スキル』と言う物は、皆それを使用して何らかの利益を得ている。『魔導師』なら魔術を。『剣術師』なら剣術を。皆自分の『スキル』を利用することで名声なり富なりを得ておる。お主が言うように直接「金」を鋳造することには抵抗があるかもだが『魔導師』が民にヒールを掛けて、金を得るのも『スキル』があってからこそなせる技じゃ。だからお主が『変化師』として、スキルを使用することは決してやましいことではないのだぞ?」


「そうだけど! でも俺はやっぱりそんなのは……」

 ──確かに『スキル』がなければ回復魔法は使えない。それを仕事としている人もいる。

 でもそれは、みんなに喜ばれる仕事だし……。

 剣術師だって、国民の為に危険を冒して戦っている。

 人の為になる仕事?


「『変化師』はもっとも簡単に人の為になる仕事が出来るジョブじゃぞ?」


「え?」


「『変化師』は『錬金術師』と勘違いされることがあるが、実際は全く違う。『変化師』は物質自体を如何様にも『変化』出来るのだ。例えばじゃが、ここに鉄がある」

 そう言って爺さんが鉄の板を出した。

 え? どっから出した? 相変わらず怪しい爺さんだ……。


「これを、剣をイメージして『変化』と唱えてみよ」


「え?」


「いいからやってみると良い。『変化師』の本当の力を知ることが出来るはずじゃ」

 そう言ってニヤニヤしながら俺を見る爺さんにちょっとムカついたが、俺は自分の『変化師』のことを知りたくて、爺さんの言われた通りにする。

 鉄の板を受け取り唱える。


 ──「変化!」


 ドンッ!

 ガシャリン!


 え???

 何で?

 嘘だろ? 


 先程まであったの鉄の板が、剣になっていた。

 驚いた俺は、思わず手からその剣を落としてしまった。


 俺はあまりにもの衝撃的だった光景に言葉を失いつつも、何度も自分の手を見た後『変化』してしまった剣に恐る恐る視線を移す。


「ほれ。これがお前のスキルじゃ」

 そう言って、俺の手から落ちた剣を拾って俺に渡す。


「え? 何で? 剣になるの?」


「『変化師』とはスキルじゃ。フォフォフォフォフォ」


「そういうスキルって……」

「物質を自由に変化出来るって言うたであろう? まだ試すのか? 粘土あったかのぅ? ちと待っておれよ?」


「い、いや。いいです……」

 俺は自分が怖くなって断った。何だこれ? これが『変化師』?


「ああ、それだけじゃなく、鉄屑を大きくしたり、小さくしたりも出来るぞ?『変化師』とはまさに『変幻自在』に物質の姿を変えれるスキルじゃからのう。フォフォフォフォフォ」


 は? 何それ???



 俺は、あまりにもの衝撃的事実に目眩がしそうになった。



「変化師」??


 無能? 


 嘘だろ? これヤバくね? 俺?





























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