第82話 6日目 縦割りサバイバル最終日
夜遅くまで続いた祝勝会を終え、
ついに縦割りサバイバル最終日を迎えた。
縦割りサバイバル最終日。
宿屋の前で仙撃チームと集まる。
「じゃあ俺らはゴールを探すよ。仙撃チームもあと1日、頑張れよ」
「もちろん、じゃあ現実世界でな!」
仙撃チームに別れを告げる。
「それじゃ、俺たちはゴールを探すか!」
中間試験の縦割りサバイバルの目的は腕輪を3つ集めてゴールに向かうこと。
腕輪は苦労の末、3つ手に入った。
あとはゴールするだけだ。
「久しぶりに3人に戻ったな」
俺の前には國咲としずくちゃん。
「やっぱりこの3にんだよー!」
「まあ、3人の方が落ち着きますね」
「だな。で、ゴールを探すか。國咲の予想ではこの寅影村にゴールのヒントがあるんだろ?」
「はい。私たちのチームは”寅ノ四”、ここは寅影村。安易かもしれないですけど、ゴールに関係はあるはずです」
確かに今はそれ以外に手がかりが全くない。
少し不安だが、信じて行動するしかない。
あと1日しかないしな。
「ごーるってどんなのかな?」
しずくちゃんが言う。
「うーん、どんなのだろうね」
「この世界に入ってきた時、ワープホールのような入り口から入ってきましたよね?」
中間試験が始まる前を思い出す。
記憶では、この架空世界を作り出した能力者の先生がワープホールのようなものが出現させ、生徒全員そこから入ってきた。
「ゴールもそんなワープホールのようなものだと考えます」
「それはそうだな。でもそんなワープホール、今まで見かけなかったぞ?」
「多分、出現させる条件があるんでしょう」
「そのじょうけんって?」
しずくちゃんが國咲に質問する。
「それは・・・わかりません」
ここにきて行き詰まってしまう。
あとはゴールするだけなのに。
宿屋の前で3人で頭を抱えて悩む。
「そんちょーさんだ!」
しずくちゃんが急に叫んだ。
「ど、どうしたの?村長さん?」
「なるほど!この村の村長さんに聞いてみようってことですね!」
「そうです!すごいでしょ!」
しずくちゃんがえっへん!と威勢良くしている。
「でも、村長が教えてくれるか?」
「わかりません。けど今は少しでも可能性があるなら試してみましょう」
「・・・そうだな」
思えば中間試験が始まった頃の國咲は全くやる気を感じなかったのに、
今は率先して考え、行動してくれている。
最初は俺のことをあんなに嫌ってたくせに。
随分と仲良くなったもんだな。
「じゃあこの村の村長を探すか!」
そうして村人に聞き込みを始めようと思った時、
「おや、あんたたち、旅人かい?」
おばあさんが話しかけてきた。
「実は俺たち、この村の村長を探してるんですよ」
「そうかい、村長なら向こうの教会にいつもいるよ」
おばあさんがそう言い、指差している。
その方向を見ると、村の中でもひときわ豪華な教会があった。
「ありがとうございます!・・・あれ?」
おばあさんはいつの間にかいなくなっていた。
「どこいったんだ?」
「おばあさんどっかいっちゃった」
しずくちゃんと2人であたりを見渡す。
「・・・妙ですね」
國咲が呟く。
「あんな都合よく、村長の場所を教えてくれる人に出会えると思います?」
「うーん・・・」
「これは外部の力が働いてますね」
「外にいる先生たちが助けてくれてるってことか?でもなんで?」
「わかりませんが、今はありがたく思っておきましょう」
少しの疑問を持ちつつ、
村長がいるという教会に向かう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
教会の目の前に到着する。
教会は見上げても全貌が見えないほど大きく、
中からは何か音楽が聞こえる。
「入りますか」
大きな扉を3人で開ける。
中はとても広い空間で木製の椅子が綺麗に並んでおり、教壇には誰か立っていた。
あれが村長だろうか。
教壇へ続くレッドカーペットを歩く。
「あのー、寅影村の村長さんですか?」
「・・・そうだ」
村長はポツリと呟いた。
後ろを向いたままで、こちらには振り向いてくれない。
「変なこと言うかもしれませんが、僕たちはゴールを探してるんですよ。何か知りませんか?」
そう聞いても村長は何も話さない。
「知ってる」
「え?」
今そう言ったよな?
すると村長がバッ!と振り返った。
「身構えてください!」
國咲が呟いた。
するとみるみる村長の体が形を変えていく。
どんどんと体が大きくなっていく。
二足歩行から四足歩行に変わり、
体は人の形から筋肉隆々な獣のような肉体に変化していく。
グォォォォ!
村長だったものが叫ぶ。
「なんだこれー!?」
「とらー!」
目の前には教会の天井に届きそうなぐらい巨体の虎。
分厚い黄色と黒の縞模様の体毛、地面を這う長い尻尾、相手を本能から震わせる強者の眼光。
もはや人間の面影はない。
唖然と目の前の大きな虎を見つめる。
大きさはミツカミサキと同じ、いやそれ以上か。
すぐに戦闘態勢に入る。
「ここから先に進みたければ、私を倒してから行け」
村長だった虎が喋った。
「なんだよその定型文!寅影村だから虎ってことか!?」
「どんだけ安易なんですか」
國咲が呆れている。
虎が身をかがめた。
今すぐにでも飛びかかってきそうだ。
「これはまずいな」
「でも、この3人ならできる気がします」
國咲は笑っていた。
「そうだな。今までこの3人で乗り切ってきたからな!」
3人で横並びで虎に対峙する。
瞬間、虎が空気を割る咆哮と共にこちらに向かって走ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます