第74話 5日目 ミツカミサキ討伐作戦
寅影村の一本橋を歩く。
俺と仙撃が先頭。
その後ろに國咲、しずくちゃん、東雲、三島とそれぞれのチームが並んでいる。
「それじゃあ作戦を確認するぞ」
仙撃がみんなに告げる。
「まず奴を森からおびき寄せて障害物のない北の平原で戦う。森だと動きづらくて連携も取りづらいからな。そしておびき寄せるのは鳴神にやってもらう。鳴神はミツカミサキの”能力阻害”が効かないらしい」
「おう!頑張るわ!」
「そして平原におびき寄せたら、まずは様子を伺いつつミツカミサキを攻撃をして奴の能力を全て把握しよう。わかっていない能力は2つ、まずはそれを解明するのが第一目標だ」
まあ能力がわかっていない内に倒そうとするのは危険だしな。
今わかってる能力は「能力阻害」だけか。
「そして全ての能力がわかったら。全員で協力して攻撃を仕掛ける。こっちは能力者6人、勝ち目はあるはずだ」
「これ以上は危険だと判断したら逃げる、これでいいですね?」
國咲が確認する。
「もちろん、身の安全が第一だからな」
ミツカミサキの危険さは俺たちが一番知ってる。
「それでも倒せないなら、最終兵器として鳴神に腕輪を全て持たせてみよう。もしかしたら”擬似覚醒状態”になれるかもしれない」
能力増強の効果がある腕輪はちょうど6つなので、
最初は一人ずつつけておくことに。
「最後は俺が腕輪6つつけて戦うのかー。責任重大だな」
「まあ”覚醒”できるかのお試しみたいなもんだから」
「うーん、できるだけ頑張るわ」
覚醒がどんなものか分からないが、
できることはなんでもやっておこう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
モンスターがいる森に到着する。
「よし、やるぞ!鳴神!」
仙撃が俺に呼びかける。
「じゃあ行ってくるわ」
森に入っていくのを全員が見守っている。
俺はミツカミサキをおびき寄せるため、森へ足を踏み入れた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
森の中はこの前と変わらぬ雰囲気だった。
不気味なオーラ、誰かに見られているような視線。
木を引っ掻いたような大きな爪痕。
地面には深く沈み込んだ足跡。
ミツカミサキが暴れたような形跡が至る所に確認できる。
用心しないと、いつ奴が出てくるかわからない。
その時、ズシンズシンと地響きのような足音が聞こえてきた。
あいつだ!
すぐに近くの木陰に身を隠す。
足音が近くなってくる。
森の奥から歩いてきたその巨体が姿を表した。
四足歩行で全身が白い毛に覆われた筋肉隆々な肉体。
その白い毛で気配を感じ取っているのだろう。
手足には鋭い鉤爪。
正面には三角形型に顔が3つ付いている。
それぞれの顔は奇妙にそして不規則に向きを変えて動き回っている。
何か感じ取ったのかキョロキョロと3つの顔が動き回っている。
俺を探しているのか。
手のひらにエネルギーを貯める。
意識を集中させ、密度を高めて構成していく。
すると手のひらに大きく長い槍が出来上がった。
これをあいつの横っ面にぶっ刺してやる。
あわよくばここで倒せるかもな。
木陰からミツカミサキに向かって構える。
こっちには気づいていない。
そう思った瞬間、バッとこちらを振り向いてきた。
まずい!気づかれた!
瞬間、ミツカミサキの3つの顔の目が光った。
何か能力を出すつもりだ!
そう理解した瞬間、持っていた槍を投擲した。
見事、首元に突き刺さる。
すぐにミツカミサキのグァァァァ!という悲鳴が聞こえてくる。
「ざまぁみろ!」
ミツカミサキの目の前に飛び出す。
3つの顔が俺を睨みつける。
目的はおびき寄せること。
するとそのまま俺に向かって走ってきた。
「よし!」
急いで向き直って逃げ始める。
走りながら後ろを確認すると、ミツカミサキがものすごい勢いで俺を追いかけていた。
森の木をなぎ倒して突き進んでくる。
「追いつかれる!」
足止めとして攻撃しようとした時、
あることに気づいた。
俺が与えた槍の攻撃の傷が治っている。
こんな短時間で治るはずがない。
「まさか、治癒系の能力か!?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふたりとも、だいじょうぶかな?」
しずくちゃんが心配そうに森を見つめている。
「大丈夫!鳴神は頼れる男だ!」
すると森からドドドドッ、と異様な音が聞こえてきた。
ドタッドタッ!と四足歩行の足音が聞こえる。
どんどんこっちに音が近づいてきている。
一気に緊張が走る。
「鳴神だ!」
仙撃の視線の先には、
ミツカミサキに追われて必死に走っている鳴神の姿。
「ああああ!怒らせちまったかもぉ!」
「ひゅうがうしろ!」
後ろからミツカミサキが攻撃しようと前足を振りかぶる。
すんでのところで仙撃が衝撃波を飛ばす。
衝撃波は前足に直撃し、ミツカミサキの足が止まる。
鳴神が仙撃たちの元へ転がり込む。
「あぶねぇ!ギリギリだった!」
「鳴神、よくやった。でもこりゃヤベーな」
そう呟く仙撃。
目の前でミツカミサキが嘶く。
大地を大きく揺らす衝撃。
体が自然と後ろに行ってしまう。
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