第39話 叛逆 


 C組のみんなが俺がMVPに選ばれたことを自分のことのように喜んでくれている。

みんなだって”昇格権”が欲しかったはずなのに。

”昇格権”がなかったらC組のままで卒業すれば研究所送りで死んでしまうのに。



「尚、王様ゴールで得た昇格権は保持できない。つまり強制的に昇格権を使用してもらう!さあ鳴神!ここまで来て”昇格権”を受け取ってくれ!」



 A組の先生の手には1枚の紙切れが握られている。

あれが昇格権なのか。



「おめでとう!鳴神ならMVPに選ばれると思ってたぜ!悔しいけど先にB組に行って待っててくれ!」



仙撃が俺の肩を叩きながら言う。



「寂しいけど、僕もすぐB組に上がるから待っててね」



流星も同じように言う。



「短い間だったけど鳴神くんと一緒に戦えて楽しかったよ!私はB組に上がれないかもしれないけど・・・きっとまた会えるよね!」



神藤さんが言う。



「さあ早く!」



 A組の先生が俺を催促する。

ゆっくり一歩ずつ歩き出す。


 本当にこれでいいのか?

俺たちC組は初日にA組にボコボコにされた。

みんな戦意喪失していたけど、C組のみんなは俺を信じてもう一度気持ちを奮い立たせて戦ってくれた。


 A組から1点獲ったのだって俺一人じゃ絶対できなかった。

そんなみんなを置いて俺一人がB組にあがっていいのか?

これはみんなで掴み取ったMVPじゃないのか?

途中で足が止まる。



「ん?何してる?」



 A組の先生の声が聞こえる。

A組からB組までこの場の全員が俺に集中している。

王様ゴールでの散々にやられた思い出が走馬灯のように蘇る。

俺は心の中で決意した。



「・・・辞退します」



俺の声が闘技場に響き渡る。



「な、なんだって?」



A組の先生が驚いたように聞き返す。



「辞退します」



みんなが俺の言葉に驚いていた。



「俺はC組全員で誰一人欠けることなくB組に、いやA組に上がりたい。高みの見物してるA組の奴ら、そして七罪聖夜・・・お前をA組から引き摺り下ろしてやる」



 闘技場が静まり返る。

全員が驚く中、七罪だけがニヤッと笑っていた。



「ほ、本当にいいのか?B組に上がらなくて」



A組の先生が再三の確認を取る。



「はい」


「そ、そうか!それでは鳴神日向はMVPを辞退したということで今回のMVPはなしとする!えー・・・これにて王様ゲームを終了とする!」



 A組の先生が高らかに言い放つ。

同時に闘技場の周りから花火が上がった。

花火の音と共にこの長かった2日間が終わりを告げた。


 C組全員で上がるなんて不可能かもしれない。

それにこれは俺のエゴでC組の全員が同じことを思っているとも限らない。

でも、それでも俺は沸々と湧いてくる自分の中の衝動を信じることにした。




第一章 王様ゴール編 完


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