第18話 担任会議


テントから出ると、三田寺先生がいた。



「いやー、これまたこっぴどくやられたなー」



C組のみんなのボロボロの姿を見て言う。



「やっぱりお前らC組じゃ格上のA組には勝てないか」



 誰も何も言い返せなかった。

だって本当のことだから。



「でも先生、おかしくないですか?この試合、能力の弱いC組が不利に決まってるじゃないですか」


「まあそうだけど、お前らが弱いのが原因だからな。ここはそういう場所だ」



C組全員が三田寺先生を睨む。



「そんなに睨むなよ、本当のことだろ?」



そうだけど・・・



「あと、お前ら次はB組と試合をする予定だった。が、あまりにも消耗が激しいことを先生方で考慮した結果、試合は中止になったわ」



 そうか、よかった・・・

他のみんなもホッとした表情をしていた。

まあ、こんな状態で戦えって言われても無理だ。



「ちなみにA組とB組は5対0でA組が勝ったらしいぞー」



 5対0。

B組でもA組から一点も取れなかったのか・・・



「あと最後にもう一個、お前らC組は今日のゲーム最下位に決定した」



え?



「先生たちと話し合ったんだが、C組はB組には勝てないと判断して最下位だ」


「そんな!なんで負けるってわかるんですか!?」



三田寺先生に食ってかかる。



「なんでって、A組との試合でわかっただろ?B組はA組からの点数を5点に抑えてる。お前らは12点も得点されてるんだぞ?」



B組は俺たちの半分以下か。



「B組もA組には負けるが強い能力者ばかりだ。ということでC組は最下位だし、今日は飯抜きだぞー」



 最悪だ、忘れてた。

こんなに疲労困憊でさらに飯抜きなんて・・・

みんなが絶望の顔をする。



「そんな顔すんなって、まあ1日ぐらい何も食べなくても大丈夫だろ」


「本当に何も食べさせてもらえないんですか?」


「そりゃそうだ。これが合宿のルールだからな」



みんながっくりとうなだれる。



「明日もこの調子じゃ、お前ら2日間食事なしだぞー」



それを聞いたみんながさらにガックリする。



「そんなの無理じゃん」「なんでこんなこと・・・」



そんな声が聞こえた。



「諦めるのか?」



 三田寺先生が言う。

そんなこと言ったって・・・



「お前ら、ここで諦めたら本当に負け犬のC組になるぞ」



 ムカつくけど、先生の言いたいことがなんとなくわかった気がした。

そう言うと三田寺先生はログハウスに戻っていった。

その後、空腹の状態で夜まで過ごした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 テントの中で寝転ぶ。

そろそろ夜ご飯の時間だ。


 外からは楽しそうな声が聞こえてくる。

テントを少し開けて外を覗く。


 ログハウスの前でA組とB組が楽しそうにご飯を食べていた。

ログハウスの中からも楽しそうな声が聞こえる。


 ここまでいい匂いが香ってくる。

その匂いにつられ、お腹がグーッと悲鳴をあげる。



「おい!閉めろ!」



 赤坂が俺に大きな声で言う。

言われた通りテントを閉め、また寝転ぶ。



「流星、腹減った」


「そうだね・・・」


「合宿が終わればたらふく食ってやるからな!」



 流星と慰め合う。

赤坂の方をちらっと見る。

俺たちに背中を向けて寝転がってる。



「お前は腹減ってないのか?」


「・・・減ってるよ」


「あっそ。なあ、明日は協力しようぜ?」


「無理だ」



赤坂が被せるように言う。



「そんなこと言わずによー。C組もいい人多いから」


「いいとか悪いとかじゃねーんだよ。能力が強い方が絶対、弱能力者に権利はないんだよ」



 赤坂が少し悲しそうなトーンで言う。

こいつは本当に能力主義者だな。

もしかして過去に何かあったのか?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ログハウスの教師用の部屋。

A組B組C組の担任が合宿について話し合っている。



「いやー、我らがA組はやっぱり強い能力者ばかりだ!」



 そう言うのはA組の担任の剛山岩鉄。

白髪短髪で筋肉隆々の体に明るい性格。



「B組も頑張ったと思いますけどね」



 B組の担任の宇佐美麗子。

黒のロングヘアーが美しく輝いている。



「やっぱりA組とB組はすごいですね」



 C組担任の三田寺傷治。

常にやる気のなさそうな表情の黒髪ウルフカット。

 


「やはり通年通りA組の圧勝だな!」


「今年はB組もいけると思ったんですけどね」



 C組の三田寺は何も言わない。

それを見かねて宇佐美が声を掛ける。



「三田寺先生。今年のC組もダメな感じですか?」



 三田寺が少し黙り込む。

他の2人が三田寺を見つめる。



「・・・今年のC組は少し違いますよ」


「え?そうなんですか?」


「はい、今までのC組とは違うものを感じます。もしかしたら、A組から1点ぐらい獲るかもしれませんよ」


「アッハッハ!それはないですよ!」



剛山がすぐに笑い飛ばす。



「学園創立以来、王様ゴールでA組はC組から得点されたことはないんですから!」


「・・・まあ無理かもしれませんね、あの子たちも戦意喪失してるみたいだし」



三田寺が軽く笑いながら言う。



「でも珍しいですね。三田寺先生がそんなこと言うなんて。C組に誰か気になる生徒でもいるんですか?」



すると、普段は無表情の三田寺がニヤッと笑った。



「・・・はい、1人いますね」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 A組B組の夜ご飯の時間が終わったのか、

声が聞こえなくなった。


 何も食べれずにふてくされて寝ていると、

何か外が騒がしく感じた。

耳を澄ますと言い争ってるような声が聞こえる。



「なあ、なんか外が騒がしくないか?」


「なんだろうね」



 流星も赤坂も声で起きる。

テントから出ると、

傷だらけのC組の生徒同士が胸ぐらを掴みあう喧嘩をしていた。



「離せ!」「お前は活躍してないだろ!」


「まあまあ落ち着けって!」



 それを仙撃や他の男子生徒が止めている。

女子たちは怯えるようにその光景を見ていた。


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