第17話 七罪聖夜
A組との試合でぼろ負けした後、
俺たちは休憩として一度キャンプに戻ることに。
俺は最後にあの男に吹き飛ばされたダメージが大きく、
腹を抑え、流星とミリシャに肩を借りながら歩いている。
キャンプに戻る最中、
流星もミリシャも話そうとしなかった。
2人の気持ちが痛いほどわかる。
3人ともA組との戦闘で傷だらけだ。
A組との能力差。
得点できそうだったのに、
あの男の圧倒的な力で吹き飛ばされた。
仙撃やミリシャと似た能力を使い、
最後は俺の能力も真似されていた。
「僕、もっと頑張れたかなぁ」
流星が言う。
「いや、俺たちは全力を尽くしたって」
すぐに流星を慰める。
でも本当に俺たちはやれるだけやったと思う。
悔しいがそれがこの結果だ。
「私は残していった仙撃や薄井、安寧たちが気になる。それに他のはぐれた護衛や防衛たちも」
ミリシャが言う。
確かに、みんな無事だろうか。
「そうだな。とにかくキャンプに戻ろう」
体を引きずる形でキャンプに戻る。
次はB組との試合らしいが、
こんな体じゃ無理だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ログハウス横のキャンプ広場に到着すると、
異様な光景が広がっていた。
ボロボロのC組のクラスメイト。
みんな傷だらけで暗い表情をしていて、
中には泣いている生徒もいる。
怪我だらけで血が出ている生徒も多く、
痛々しい傷を抱えて横たわっている生徒もいる。
もう戦いたくない、そんな雰囲気が伝わってきた。
「おぉ、鳴神!無事だったか!」
仙撃が走ってくる。
仙撃はあまりダメージがなさそうだ。
「なんとかな。仙撃は俺たちと離れた後、大丈夫だったか?」
「大丈夫だ!俺も薄井も安寧も大した怪我はしてない・・・が他の護衛や防衛の生徒は違うらしい」
そこら中で呻くような苦しい声が聞こえる。
「鳴神くん!」
そう声をかけたのは神藤さんだった。
「神藤さん!俺たちと別れた後大丈夫だった?」
「うん、無事に自分たちの陣地に戻れたよ。でも・・・」
神藤さんが言い篭る。
「でも?」
「その時にはもう防衛のみんなはやられていて・・・」
「そっか・・・」
やっぱりA組の王様の天使を止めることはできなかったか。
でも、天使には護衛がいなかったはずだけどな。
「空を飛んでた金髪の女が防衛のみんなをこんなに怪我させたのか?」
「違う」
すぐ近くに座っていた生徒が言う。
その生徒はまるで刺されたような傷を負っている。
「A組に体から棘を出す能力のやつがいたんだ。俺たち防衛はそいつに壊滅させられたんだ。その隙に空を飛んでる金髪に大量得点されたよ」
棘を出す・・・
「そんな能力のやつがいたのか」
「・・・もう戦いたくねぇよ」
座っている生徒からポツリと言葉が溢れた。
みんな疲れきっている。
その後、一緒に来ていた保健室の先生が来てC組のみんなの応急処置をしてくれた。
「こりゃ次のB組との対戦は無理そうだな」
仙撃が呟く。
「ああ、でも怪我が少ない俺たちは動けるように休んでおこう」
こんな状態じゃB組になんて勝てるわけないが、
今できることをやるしかなかった。
「得点しようと思ったんだが、A組の王様が強くてボコボコにやられたわ」
仙撃に言う。
「S級の”七罪聖夜”だな」
「S級の七罪聖夜?」
俺と赤坂を圧倒的な力でいともたやすく俺を吹っ飛ばしたあの男。
「ああ、俺たち”能力者”よりもさらに優れた圧倒的な力を持つ者を”超能力者”いわゆる”S級”に学園が指定するんだよ」
「そんなものがあるのか・・・S級は何人いるんだ?」
「確か日本でも数人しか指定されていないはずだ」
数人だけ・・・
そんな奴がA組にいるのか。
「あいつの能力、変なんだよ。仙撃やミリシャに似た能力を使ったり、まるで一つの能力じゃないみたいだった」
「七罪も”進学組”なんだよ。あいつは様々な能力を使えるんだ」
「そんなのありかよ」
誰も勝てないじゃないか。
「異能学園最強の能力者、いや”超能力者”だ。まあ”超能力者”と言われるS級なんて、もう人間の域を超えてるだろうしな」
人間の域を超えてる・・・
明日もA組との対戦がある。
多分、もう一度戦うことになるだろうな。
S級に指定される超能力者、そんなやつに俺たちC組は勝てるのだろうか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
流星とテントの中に戻ると、
寝転がっている赤坂がいた。
「お前、A組の王様の七罪にビルに向かって吹っ飛ばされてたけど大丈夫か?」
こっちを向かない赤坂に話しかける。
「大丈夫だ」
ぶっきらぼうに言い放つ。
「王様の七罪ってやつ、”超能力者”って言われるS級らしいな」
赤坂が起き上がる。
「そうだよ。C組なんかじゃ相手にならねぇぞ」
赤坂が悔しそうな表情をする。
そういえば赤坂の能力、紫色の炎を出してたな。
七罪との戦闘を思い出す。
赤坂が”紫炎”と言ってたあの技。
勢いよく大きく燃え上がる紫の炎。
C組とは思えないほどの能力だった。
「お前のあの紫の炎の能力、すごかったな。C組とは思えないわ」
赤坂褒められて恥ずかしそうな顔をする。
「だからお前らC組とは違うって言ってるだろ」
そう言うとまた寝転がってしまった。
でも本当に赤坂の能力はすごい。
A組と言われても違和感ないぐらいだ。
もしかして赤坂も俺と同じで能力面談の時に上手く伝えられなかったのか?
「おーい。みんな出てこーい」
テントの外から声が聞こえた。
三田寺先生の声だ。
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