第15話 謎の能力



 A組の攻撃を受けて俺たちは地下へ逃げ込み、

そこではぐれた護衛の神藤さんたちと合流した。

神藤さんは怪我人をC組の陣地まで連れて行くことに。

そして俺と流星と仙撃の他に、



”煙”の能力の薄井煙霧。


”重量変化”の能力のミリシャ。


”召喚:小人”の能力の安寧さん。



 3人の護衛を仲間に加え、

俺たちはA組の陣地へ向かう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 地下から出ると眩しい光が俺たちを包んだ。

A組の生徒がいないか確認しながら外に出る。



「よし!作戦通りに行こう!」



 俺がそう言うと、安寧さんが小人を召喚した。

途端に安寧さんの周りを何十人もの小人が取り囲んだ。



「よし!お前ら、行くぞーー!」



1人の小人が声をかけると小人たちは四方八方へダダダーと走って行った。


 作戦は簡単だ。

まず安寧さんが召喚した小人を街の一定間隔に配置する。

小人は小さくて目立たないから隠れて街を観察してもらい、

その小人たちに伝言ゲームのようにA組の生徒に出会わない安全な道を俺たちまで伝えてもらう。



「おい!この道はダメだ!」「こっちもダメだ!」「この道なら行けるかも!」



小人たちが何人も俺たちの所に走って戻ってを繰り返している。



「真莉愛!こっちの道なら安全だ!」



 小人が道を指差す。

小人の指示通りに道を走っていると、

また違う小人が近づいてきた。



「少し先に人がいるらしいぞ!もう1本横の道にいけ!」



従って違う道に行く。



「よし!これならいけるぞ!」



 仙撃が嬉しそうな声を出す。

うん、いける、これならいける!

そう思った時、前から小人が焦った様子で走ってきた。



「先にいる小人たちの連絡が途絶えた!危ないかもしれない!」



すると前からA組の生徒が数人走ってくる姿が見えた。



「流石A組、そう簡単にはいかないか。薄井!」



 護衛の薄井に呼びかける。

でもこうなることも予想済みだ。



「任せろ」



 薄井はそう言うと両手を前に出した。

するとその手から煙がモクモクと出てあたりを包んだ。

すぐにあたりが白い煙で充満する。

これで前から向かってきたA組から隠れられる!


 薄井のこの能力、最初に俺たち護衛を分断した黒い霧の能力に似てるな。

でもその黒い霧の能力と違って薄井の煙は透明度が高く、影が見える。

これがA組とC組の差か。


 でも作戦はこれで終わりじゃない。

A組の生徒が煙の中を突っ込んでくる。

すぐにミリシャが俺と流星を両脇に抱える。



「行くよ!2人とも!」



ミリシャが俺たちを離さないようにギュッと力を込める。



「仙撃、頼む!」


「おう!あとは任せたぞ!」



 仙撃がしゃがみ、バレーのレシーブのような構えをとる。

そこに俺と流星を抱えたミリシャが飛び移る。



「おりゃぁぁぁぁ!」



 仙撃が”衝撃”の能力を使って俺たちを空へ送り出した。

煙の中を空に向かって進む。

そして煙を抜け光が戻ると、俺たちは高度をあげ、空にぐんぐん登っていた。

ミリシャの”重量変化”の能力で3人の重さを軽くした影響でスピードはなかなか落ちない。


 下を見るとかなりの高さだった。

ロープウェイから落ちた時に天使に助けられたのを思い出す。



「あぁぁぁぁ!俺、高いとこ嫌いなんだよ!」


「僕もこれは無理かも!」



流星と2人でミリシャにギュッと抱きつく。



「あたしは大好き!上がれるとこまで行くよ!」



 怖がっている俺と流星とは違ってミリシャはウキウキと嬉しそうにしている。

その時、後ろからグォォォォと聞いたことのある鳴き声が聞こえた。

まさか・・・


 空中を上がる中、後ろを見ると龍がこちらに向かって飛んできていた。

もう見つかったのか!

俺たちの速さは少しゆっくりになったが、まだ高度は上がっていく。



「日向くん!龍が!」


「なんなのあれ!?龍が飛んでる!?」



龍は俺たちを追いかけるように後ろから空を駆け上がっている。



「ミリシャ!そのまま俺たちを掴んでろ!」



 ここでやられたら意味がない!

ミリシャに抱えられながら手を前に出して構える。


 幻獣に追い詰められた時も俺の能力を使ったが、

その時放ったエネルギー砲よりもやばいやつをこいつにぶち込んでやる。

エネルギーはまだまだある。


 龍は俺たちを食い殺そうとしているのか、

大きく口を開けて一直線に向かってきている。



「やばいって!あたしたちを食べようとしてる!」



 まだだ、今撃っても避けられる可能性が高い。

龍に向かって手を構えたままじっとする。



「どうしよう!日向くん!」



 2人が焦っているのが伝わってくる。

その時、俺たちの上昇するスピードが完全になくなり、空中に停止した。

龍はそれを狙っていたのかさらにスピードをあげて俺たちに向かってきた。

そして俺たちは空中で停止した後、落下を始めようとしていた。


 ドクドクと心臓の鼓動が速まる。

龍はあと数秒で俺たちを噛みちぎるだろう。

A組はもう王様ゴールだなんて関係なく俺たちを殺しにくる。

それが許されるんだ・・・A組には。


 なら俺たちだって全力で迎え撃ってやる。

C組が弱能力者じゃないってことを証明してやる。



「マジでやばいって!鳴神!」


「日向くん!」



 いや、まだだ。

ギリギリまで粘ってゼロ距離でぶっ飛ばしてやる。

一撃でいい、一撃でも龍に与えられたら勝機はある。

流星とミリシャは何か策はないかと慌てている。



「2人とも!俺を信じろ!」



 そう言うと、2人が覚悟を決めたのか体をギュッと俺に寄せてきた。

すでに俺たちは落下しており、自分達から龍に向かっている。


 龍が目の前まで迫る。

手の届くところまで鋭い牙が迫っている。

龍のギロッとした目と目が合う。

視線がぶつかり合う。


 その龍の目からは自信と傲慢を感じた。

しかし、それに負けないぐらいの覚悟と闘志が俺の目には宿っていた。


 今だ!

瞬間、俺は強力なエネルギー砲を龍に向かって思いっきり解き放った。



”高火力砲”



 エネルギー砲の反動のせいで空中を大きく移動する。

このエネルギー砲は幻獣の時よりもさらに大きく広範囲で、

龍の大きさを遥かに超えていて体を完全に包み込む大きさだ!

龍は避けられないはず!


 思った通り、

龍はエネルギー砲の威力に驚き避けようとしたが、

避けられないのを悟ったのかうずくまって防御の姿勢をとった。

俺が放ったエネルギー砲が龍を包み込む。

C組だからって舐めてやがったな!


 よし!まともに喰らった!

これは効いただろ!


 エネルギー砲は空中で分散して消えていく。

どうだ!?

龍は空中で俯いて止まっていて、鱗だろうかがボロボロと落ちている。

かなりダメージを受けている様子だ。



「ざまぁみろ!龍退治だ!」


「ちょっと鳴神!あんた何者!?」


「すごいよ日向くん!これならA組にも勝てるよ!」



 途端に龍はどんどん小さくなり、男の姿になった。

やっぱり仙撃が行ってた通り、変身型の能力だったのか。

男は傷だらけのボロボロだった。


 龍だった男はそのまま地上へと落ちていく。

完全に意識がない様子だ。


 同時に俺たちも再び落下し始めた。

落下が始まって下を見ると、

俺たちはA組の陣地の近くまできていた。

少し奥に白線が見える。

あれを王様の俺が超えたら1点獲得だ!



「このまま下に降りてゴールしよう!」



 体にヒューッっと落ちる感覚が襲う。

怖くてミリシャにギュッと抱きつく。

それは流星も同じだった。



「ちょっと、どんだけ怖がってんのよ!っていうか真下にA組の生徒がいるよ!」



 ミリシャに言われて下を見ると、

確かに俺たちの真下にA組の生徒が数人待ち構えていた。

作戦ではバレずに着地まで行くつもりだったが、これだけ派手にやればそりゃバレるか。

バレたなら仕方ない。



「ミリシャ!」


「次はあたしの出番ね!」



 俺が呼びかけるとミリシャの足が薄く白いオーラに包まれる。

途端に落下のスピードが速くなる。



「ミリシャの”重量変化”の能力と流星の”速度変化”の能力で落下のスピードを最大限加速させて下の奴らを吹き飛ばすぞ!」



 着地の衝撃でA組は動けないはず。

その間に王様の俺がA組の陣地に飛び込む。

着地点からA組の陣地までは近い!



「ミリシャ!着地の時に怪我しないのか!?」


「大丈夫よ!そんなヤワな能力じゃないわ!」


「じゃあ僕も最大までスピードをあげるよ」



 流星がそう言うとスピードが格段に上がった。

地面がどんどんと近づいてくる。

あと数秒で着地だ。


 下のA組の生徒も何やら能力を使おうとしているのを感じる。

いや、気にするな。

何かあれば俺の能力を使えばいい。


 幻獣や龍との対戦でわかった、

俺の能力はA組にも十分通用する。



「2人とも!着地するよ!」



 ミリシャがそう言った瞬間、

ドカンッ!と体に大きな衝撃が走る。


 ミリシャを中心に着地したコンクリートがバリバリと円状に割れる。

周りを見ると目の前に2人、A組の生徒が存在した。


 まずい!

A組の2人は着地の衝撃で少し吹き飛んだが、

距離はまだ近いままだ!


 目の前のA組の生徒、2人のうち1人は女でもう1人は刀を腰に携えている。

なんだこいつ・・・でも侮れない能力者であることは確かだ。


 流星とミリシャを置いて陣地に向かって走り出す。

しかし思った以上にA組の動きが早く、回り込まれた。



「よくここまで来たね」



 女が話しかけてくる。

女は首元までの黒髪パーマ。

余裕そうに俺のことを見ている。



「ああ、すごいだろ!」


「うん、C組にしてはすごいね。でもここで終わり」



 女はそういうと俺をじっと見つめて、

目をガッと見開いた。


 途端に体が重くなる。

手足を動かそうとするが思うようにいかない。

すぐに体が動かなくなる。


 ダメだ、全く動かない・・・

なんだこの能力は・・・



「3人共止まっちゃったね」



 女が笑いながら言う。

後ろの流星とミリシャも女の能力で動けてないのか。


 その時、さっきの刀を持っていた男がいないことに気づいた。

瞬きをした瞬間、目の前に強い殺気を感じた。

すぐに恐ろしい程の寒気が襲ってくる。


 目を開けると、すぐ前に男がいて俺の首元に刀が迫っていた。

刀の動きがスローモーションに見える。


 まさか俺の首をはねたりしないよな?

いや、今まで出会ってきたA組の能力者は手加減なしで俺たちを殺そうとしてきた。

こいつも同じだ、俺のことを殺すつもりだ!


 首元に刀の気配を感じる。

このままじゃ・・・斬られる!

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