第13話 能力の種類


 A組の”龍化”の能力者に襲われた俺たちは地下鉄へ逃げ込んできた。

地下は使われていないからか暗い。

しかし電気は通っているようで蛍光灯の灯りがチカチカと一定のリズムで辺りを照らしている。


 地下をさらに下っていくと、

切符売り場や改札がある広いフロアに出た。

 

 それにしてもまさか地下鉄まであるなんて、

この演習場の街は本当に細かいところまで作られてるな。



「・・・疲れた」



 流星がポツリと呟く。

3人ともこの短時間で疲れ切っている。



「流星、仙撃・・・俺、A組のことをちょっと舐めてたわ」


「これは試合に勝つよりも怪我しない心配をした方がいいな」


「うん、まさか龍まで出てくるなんて・・・」



ハァ、と流星が大きなため息をつく。



「あの龍も召喚型の能力なのか?」



仙撃に聞いてみる。



「いや、違う。あれは変化型の能力だ」


「変化型!?じゃあ龍に変身してるってことか?」


「ああ、そういうことだな」



召喚型に変化型・・・俺の知らないだけでそんなに能力の種類があるのか。



「じゃあ俺の能力は何系なんだ?」


「鳴神の能力は・・・」



 仙撃がうーん、と悩む素振りを見せる。

まあエネルギー砲を撃てる能力なんて変わってるよな。



「多分、超自然型だな」


「超自然型?」



いきなり難しい言葉が出てきたな。



「替えがきかない特殊な能力のことをそう言うんだよ」


「へー、じゃあ流星の”速度変化”の能力も超自然系ってことか?」


「そうだな。能力は大体5種類に分類されるんだよ。鳴神の”超力”や白川の”速度変化”、俺の”衝撃”みたいな現実に存在しない、替えがきかない能力は【超自然型】、逆に火をつけれる能力ならライターで替えがきくだろ?そういう替えがきく能力の【互換型】がある」


「色んな種類があるんだな」


「まだあるぞ。さっきの幻獣を召喚できるような、何かを召喚できる【召喚型】、自分が龍に変化するような何かに変化する【変化型】、そしてその能力の上位型の【化身型】がある」


「”化身型”はなんかやばそうだな」


「ああ、やばいぞ。”化身型”は何か概念や抽象的なものの化身に自分がなる能力だ」



聞くだけでやばいのがわかる。



「”化身型”なんて滅多にお目にかかれない能力者だが、A組やB組になら存在する」


「そっか、でも龍に変身なんてもう人間の域を超えてるよな。A組にはそれぐらいの能力者がまだまだいるってことか?」


「もちろん、A組の能力者は想像を超えるようなやつらばかりだ」



 すると、コツコツと遠くで足音が響いて聞こえてきた。

3人で顔を見合わせる。


 その音はどんどんと近づいてきている。 

確実に向こうから誰かが歩いてきている。

それに一人じゃない、足音は複数だ。

・・・A組か?


 3人で音を立てずに角に移動し、足音の主を待ち伏せする。

流星が俺と仙撃に触れた。

”速度変化”の能力ですぐに逃げ出せるようにだ。


 足音が近づいてくる。

何か話し声もきこえる。

こちらには気づいてない様子だ。


 先制攻撃するか?

他の2人の顔色を伺う。


 仙撃が俺が行く、と口パクで言う。

俺と流星で仙撃を見守る。


 俺たちがいる角のすぐ近くまで足音が近づいてきた時、

仙撃が拳を振りかぶり、角からバッ!と飛び出した。

途端、



「キャァァァー!」



 女の子の叫び声が聞こえた。

ちょっと待て、この声は・・・

俺も角から急いで飛び出す。



「お?お前は王様の護衛の・・・」



 仙撃の戸惑いの声が聞こえる。

目の前には銀髪ロングの女の子。



「神藤さん!」



 神藤さんは頭を抱えてうずくまっている。

俺の呼びかけに対してチラッとこっちを見た。



「・・・鳴神くん?」



 足音の主は神藤さんだった。

後ろには他の護衛のC組の生徒が数人歩いている。



「いやー悪い!てっきりA組のやつらかと思ってよ!」


「神藤さん、大丈夫だった?」



 突然黒い霧に包まれて、

俺たち3人は神藤さんたち護衛を置いて逃げた。



「私は大丈夫だよ、鳴神くんも白川くんも無事でよかった。でも怪我してる人がいっぱいいるの」



 神藤さんの後ろを歩く他の護衛を見ると、確かにみんなボロボロだった。

足を引きずっていたり、腕や顔から血が出ている人がいる。



「A組にやられたの?」


「うん・・・」



神藤さんが俯く。



「急に黒い霧みたいなものがあたりを包んで暗くなったでしょ?あの時にやられたみたい」



 あの時、黒い霧の中で確かに人の気配を感じた。

多分、能力の主だろう。



「王様とか関係なく手当たり次第に攻撃されたの」


「そっか・・・」


「・・・怖かった」



 神藤さんが両腕で自分の体を抱える。

その表情は恐怖に満ち溢れていた。



「ごめん、僕が2人しか救えなかったから・・・」



流星がショックそうに俯く。



「ううん、気にしないで。それでね、護衛で王様ゴールを棄権したいって人がいるの」



 後ろの護衛もそれぞれが恐怖の表情をしていた。

そりゃそうだ、あんな目に合わされたんだから。



「どうする?鳴神くん。棄権したい人も多いし、このまま王様ゴールを続けるのは・・・」



 神藤さんと後ろの護衛たちが俺を見る。

ここで諦めていいのか?

まだC組の防衛が俺たちを信じて得点されないように必死で守ってくれているかもしれない。




「俺はまだ戦うよ」



この場のみんなに向けて言った。



「でも全員じゃなくていい。怪我人や戦意喪失した人はここでリタイアしよう。当たり前だ、A組とこれだけ能力差があるんだから。でも、それでもまだ俺と一緒に戦ってくれる人はついてきて欲しい」



 神藤さんの後ろの護衛たちに呼びかける。

その場に静寂が訪れる。

俺は王様という立場である以上、最後まで諦めることはできない。



「俺も王様を守るよ」「私も!このままじゃ悔しいし!」



 護衛から声があがり、

最終的に護衛3人が賛同してくれた。



「そうだね、諦めるのはまだ早いもんね。私は残りの人たちを自分たちの陣地まで連れて行く。鳴神くん、また後で」



 そう言うと神藤さんは怪我人を連れて歩いて行った。

俺と流星と仙撃と名乗り上げてくれた護衛3人がその場に残った。

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