第6話 C組とA組の能力差



部屋に入ってきたのは白川流星という優しいオーラが溢れる男の子だった。



「同じC組だよな?」


「うん、日向くんと同じC組だよ」


「よかったー。同じ寮の人が優しそうで!」


「ありがとう、僕も日向くんで良かった!」



 2人で荷物を広げて部屋を整理した後、

少し雑談する。



「流星は地元を離れてきたのか?」


「うんそうだよ。”転入組”だから」


「え、転入組?」



初めて耳にする言葉だ。



「この学園には中等部があるでしょ?その中等部から高等部に内部進学した人を”進学組”って言って、他所の普通の学校からこの学園に進学した人を”転入組”って言うんだって」


「へー、その”進学組”も能力面談を受けてるのか?」


「受けてるらしいよ。進学組も転入組も高等部に上がるときに能力面談を受けてクラスが決められるらしいね」


「そうなんだな・・・初めて知ったよ」


「”進学組”は中等部での経験があるから、みんなエリートらしいよ」


「そっか、中等部のC組は卒業すれば研究所だし、必然的にA組かB組ってことか・・・流星、C組は卒業すれば研究所送りってこと、どう思う?」



流星に聞いて見ると、暗い顔をした。



「ひどいよね・・・そんなの入学まで聞かされてなかった」


「だよな、でも卒業まで3年もある!それまでにC組から上がればいいだけだし!」


「うん、そうだけど・・・」



 流星が俯く。

多分、上がれる自信がないってことだろう。



「流星も能力者だよな?どんな能力なんだ?」



慌てて話題を変える。



「僕の能力は、”速度変化”」


「え?”速度変化”・・・それって速さを変えられるってこと?」


「そう、例えば・・・」



 流星が近くにあったペンを取って投げる。

流星の手から離れたペンはそのまま放物線を描いて落ちていくと思いきや、

宙を浮いてるみたいにものすごくゆっくり、フワッと落ちていった。



「な、なにこれ!?どうなってんの?」



 流星がゆっくりと落ちたペンを拾って取る。

するとまた同じようにペンを投げた。

しかし今度はものすごい速さでペンが壁に突き刺さった。



「すげー!すごい能力じゃん!」



なんか、人でも簡単に殺せそうな能力だな。



「全然だよ。僕のこの能力でC組だし、A組はもっとすごいんだよ」



 そうか、流星のこの能力でC組か。

じゃあA組って化け物みたいな能力ばっかなんじゃないか?



「A組は僕みたいな小手先の能力じゃ敵わないよ。聞いた話によるとA組の能力はもっと圧倒的で強力な能力ばかりらしい・・・」



ゾクゾクと恐怖感が体を襲う。



「日向くんはどんな能力なの?」


「俺は・・・」



 どうしよう、下手に説明すればさっきの能力面談みたいに変な空気になるぞ。

寮の同居人の流星から変な奴だと思われるのは最悪だ!



「俺の能力、説明が難しいんだよ。なんかパワーを溜めておけて、それを放出できるんだよ!」



流星が難しそうな顔をする。



「・・・理解できた?」


「うーん、わかったような、わからないような・・・」


「だよなー」



 俺の能力、説明するのマジでむずかしいな。

簡単に実演とかもできないし。

ここで能力を使ったら寮ごとぶっ飛ぶ気がする。

本当はA組ぐらいの威力の能力だって言っても信じてもらえないだろうな。



「また今度、日向くんの能力を見せてもらえる機会もあるかもしれないしね」


「う、うん」



 ごめん流星、それは当分ないと思うわ。

破壊力のある俺の能力を披露する機会はないだろう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 今日はもう休んでいいということだったので、

男子寮の食堂で昼ごはんを食べた後に流星と少し学校の周りを散歩をすることに。


 男子寮を出ると他の生徒が沢山、中庭で談笑していた。

昼下がりのゆったりした時間が流れている。

山の上だし空気が美味しい。


 中庭から小中高のエリアが階段で繋がっていてすぐに移動できる。

中等部の方まで降りると、赤色の制服の生徒たちがいた。

中学生だし高校生よりも少し幼いな。


 さらに小等部まで降りると、

青色の可愛い制服の小学生たちが中庭で無邪気に走り回っていた。

2人で可愛いなと微笑んでその光景を見つめる。


 さらに下がると街を見渡せる場所に出た。

こんなすぐ近くに街があるなんて。

下は街に続く階段になっている。



「すごいな・・・」


「うん・・・」



 山の上が一つの街になっている。

あの金髪に抱えられて空を飛んだ時に上から街の全体像を見たけど、

とても広かった。

よく考えれば能力者のためだけに街が一個作られるなんてすごいよな。


 ふと横を見ると、俺たちから少し離れたところで誰かが同じように景色を見ていた。

ん?こいつ・・・



「あ!ロープウェイの時の金髪!」



 俺がそう言うと金髪は気づいて、

嫌そうな顔をしてこちらを向いた。



「人のこと髪色で呼ぶのやめてくれる?」



反応があったので近づいていく。



「さっきはありがとな、助けてくれて」


「命の恩人なんだから感謝しなさい」


「はいはい、そういえばお前何組なんだ?」



すると金髪は、ふん、と鼻を鳴らした。



「何組?そりゃもちろんA組だけど?」



ニヤニヤして誇らしそうに言う。



「まあ、A組の人たちも私の能力に比べれば弱いのばかりだけどね」



 こいつ、自分の能力に圧倒的な自信を持ってるんだな。

まだニヤニヤしてるわ。



「あなたたちは何組?」


「俺たちはC組だけど」


「ふーん、C組ね。噂によるとC組は卒業すれば研究所送りらしいじゃない」



やっぱりA組も知ってるのか。



「らしいな。でも絶対C組から上がってやるよ!」


「無理よ」



すぐに金髪が冷たく言い放つ。



「そんなのわからねぇだろ?」


「わかるわよ。あなたたちC組とじゃ能力の格が違うの。諦めて死になさい」



残酷に冷たく言い放つ。



「嫌だね」



金髪に反論する。



「嫌って、これが現実なのよ」



あきれた、と金髪が手を広げてバカにする。



「・・・お前友達少ないだろ」


「何よ急に!友達ぐらいいるわよ!バカにしないでくれる!?」



 俺の言葉に金髪がやけにムキになって怒る。

これは図星だ、絶対少ないな。



「あっそう。俺はもう友達できたけど?・・・お前は1人か?」



そう言って隣の流星の肩を組む。



「くっ・・・1人よ!っていうかまだ入学初日なんだけど!これから友達なんてたくさんできるわよ!」



 そう言うと金髪は膝を曲げてしゃがみ込んだ。

あ、これって最初に俺が声をかけた時もやってたな。

途端に金髪の背中から白くて美しい翼が生えてくる。



「じゃあね!C組さん!」



 嫌味を言って飛び立とうとする。

バサッバサッ!と翼がはためく。

強い風を体に感じる。



「あと私の名前、天使翼だから!覚えときなさい!」



天使はそう言うと、街の方へ向かって飛んで行った。



「日向くん!?い、今の子、飛んで行ったよ!?」


「あー、流星、見るのは初めてか。あれがあいつの能力なんだよ」



 流星が口を開けて驚いている。

俺たちは街に飛んでいく金髪の後ろ姿を眺めていた。

夕日に照らされて輝く白い翼はとても綺麗だった。

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