第4話 異能学園最底辺C組


「えー、お前たちはC組。弱い能力者の集まりだ」



C組の担任の三田寺先生が放った言葉に、クラス全員が驚いていた。



「残念だが、お前たちはここで終わりだ」



意味がよくわからない。



「知ってるやつもいるかもしれないけど、この学園はA・B・C組って分かれてる。A・B組にはお前たちよりも強い能力の奴らが集まってる」



 さっきの言葉の影響か、

みんなが三田寺先生の話をじっと聞いている。



「お前らはいわば異能学園のカースト最底辺ってことだ」



 C組の担任の三田寺先生が俺たちを見つめて言う。

最底辺って・・・


 周りを見ると、みんな色んな表情をしていた。

驚いている生徒やそんなのわかってると言いたそうな生徒。

隣の席の神藤さんは不安そうな表情をしている。



「で、この異能学園には暗黙のカーストがある。さっきも言ったが、A組が一番上でその下がB組、さらに下がC組だ。3つのクラスには明確な序列がある。お前らはこの学園で蔑まれ、バカにされる対象だ」



 そんな・・・

能力の強さだけで決められるのか?

三田寺先生が続けて言う。



「そしてもう一つ、お前たちC組に伝えておかないといけないことがある」



 なんだ?

でも確実に良いことではないと感じた。

みんなも同じことを感じていると表情でわかった。



「C組の生徒はこの学園を卒業すると研究対象として研究所に送られる」



 研究所に送られる?

能力者は学園を卒業すると普通の生活に戻れるんじゃないのか?

クラスがざわざわと騒がしくなる。



「研究所に送られた能力者は、まだ未解明な能力を研究するために実験対象として研究の材料にされる」



研究の・・・材料?



「研究といってもそんな高尚なものじゃない。実際は能力者の脳を解剖したり、どれくらいまでの負荷に耐えられるか、そんな人権なんてありもしないようなことが行われている」



 三田寺先生の表情は変わらない。

まるで当たり前かのように話を続けていく。



「すなわち、お前らC組は卒業して研究所に送られると・・・死ぬってことだ」



 死ぬ、なんてもっと何十年後のことだと思っていた。

突然やってきた”死”という存在に未体験の恐怖を感じた。



「なんで俺たちC組が実験対象なんだよ!A組とかB組でもいいだろ!」



 教室の誰かが叫んだ。

誰もその反論を変だとは思わなかった。

むしろC組みんなが思ってたことだった。



「ダメだ。A、B組はお前らとは違う。A組B組は大事な存在なんだよ」


「なんだよそれ・・・A組もB組も同じ人間じゃないかよ・・・」



さっき反論した生徒が呟く。



「違う」



三田寺先生が言う。



「お前ら勘違いしてるぞ、ここは普通の高校じゃない。ここは全国の能力者が集められた”国立異能学園”だ」



 三田寺先生が少し間を開ける。

そして息を吸って言った。



「能力が発現した瞬間からお前たちは人間じゃなくなった。お前たちは”能力者”になったんだよ」



 人間じゃない。

俺たちは”能力者”になった。



「これがこの学園のルールだ。厳しいかもしれないが、自分の運命を受け入れろ。ここでは人間の常識は通用しない」



 そんな・・・

さっきまで胸にあったこれから始まる楽しい学校生活への期待が一気に崩れ去った。



「それと、卒業すれば研究所に送られることは理解したと思うが、それを回避する方法が一つだけある」



 回避する方法?

みんなが固唾を飲んで先生の次の言葉を待つ。



「それはC組からA組・B組へ這い上がることだ」



這い上がるって?



「この学園では成績優秀者や功績を残したものに”昇格権”というものを与える。それは1つ上のクラスへ昇格できる権利だ」



その昇格権を使えばC組から這い上がれるのか。



「C組の生徒なら昇格権1枚でB組へ、B組の生徒なら昇格権2枚でA組だ」



みんなが先生の説明を一言一句聞き逃さないように聞いていた。



「お前たちが助かる道は”昇格権”を手に入れる、それだけだ。・・・ここでは誰も助けてくれない、お前たちの手で未来を摑み取れ、それができない奴は死ぬだけだ」



 三田寺先生が冷たく言い放った。

卒業まであと3年、それまでに昇格権を得てC組から這い上がる。

それができなければ研究所送りで死ぬ。


 目の前の現実に向き合うことができない。

あと3年以内か・・・

遠い存在だった死が、すぐそこまで近づいていた。

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