第3話 能力面談


 ガラガラと教室のドアを開けると、

何もない教室に細長いテーブルが置いてあり、

そこに先生だろうかが2人座っていた。


 その前にはイスが一つだけポツンと置いてある。

なんか面接みたいだな。


 1人は黒髪ウルフカットの男性で目に光がなく、

能力面談なんて面倒くさいと思っているのが表情から伺える。

そしてもう1人は・・・小さな男の子だった。


 茶髪のマッシュルームヘアーで子供らしくニコニコしていて、 

テーブルからヒョコッと顔を出している。


 座高が隣の男性と違いすぎる。

この小学生みたいな子が先生なのか?



「入学おめでとう!」



 小さな男の子が大きな声で言う。

目がキラキラと輝いており、眩しいほどの笑顔だ。



「あ、はい。ありがとうございます」


「私が国立異能学園学長です!」



男の子がドンッ!と椅子の上に仁王立ちして言い放った。



「え、学長!?こんな子供なのに!?」


「びっくりした?こんな小学生みたいな見た目でも学長なんだよ!」



 学長と自称する子供が椅子に乗って、

ふん!っと腕を組み、プクーっと頬を膨らませる。



「は、はい・・・」


「それじゃあ早速だけど能力を見せてくれるかな?」



学長だという男の子が椅子に座り直す。



「俺の能力は・・・”超力”です!」



 ”超力”は俺が勝手につけた能力の名前だ。

しかし、学長と黒髪ウルフカットの男性はポカンとした顔をしている。

教室に変な空気が流れる。

あぁ!恥ずかしい!絶対変な奴だと思われた!



「えーっと・・・体にエネルギーが溜まるんです!」


「エネルギーが溜まる?」



 黒髪ウルフカットの先生が訝しげに言う。

何言ってんだこいつってオーラをじんじん感じる。



「た、溜まるんですよ!だから常に元気なんです!」



 フンッ!と元気な様子を見せつける。

すると、また教室が静まり返った。

全然伝わってない!?



「溜まったエネルギーをぶっ放せるんです!」



 エネルギー砲をぶっ放す時みたいに、

右手を大きく広げて前に伸ばし、それを左手で支えるお決まりの構えを披露する。

しかしポカンとした顔をされる。


 

「なるほど!元気いっぱいなのが能力ってことだね!」



 学長が言う。

うん、もうそれでいいわ。



「はい、そうです・・・」


「そっか!すごいね!」



おい、全然すごいと思ってるようには聞こえないぞ。



「じゃあ君は・・・C組だね!」


「・・・C組ですか?」



C組?クラスの名前か?



「そう!じゃあ面談は終わりだから教室を出ていいよ!廊下を奥に進めば案内の紙が貼ってあるから!」


「あ、はい」



 そそくさと教室を出ていく。

なんか一瞬で終わったな。

よく分からないが俺はC組らしい。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 学長に言われた通り、廊下を進んでいく。

すると昇降口らしきところに来た。

そこにクラスごとの教室の場所が書いてある紙が貼ってあった。


 全部でクラスはA、B、Cとあるようだった。

C組は・・・こっちか。


 紙に書いてあるC組の場所へ向かう。

廊下を歩いていると、



「1ーC」



 という教室を見つけた。

あ、ここか。


 ドアの前に立ち、

入る前に深呼吸をする。

このドアを開けたらこれから一緒に生活するC組のクラスメイトがいるんだ。

ワクワクするな。


 胸が高鳴るのを感じた。

ついに始まる、俺の異能学園での生活が!

・・・よし!入るぞ!


 力強く取っ手を持ち、ドアを開ける。

ガラガラ、と音が響くと同時に教室の風景が目に入る。

教室にはすでに多くの生徒がいた。


 みんな入ってきた俺のことを一斉に見る。

座って寝ている人や、

もうすでにクラスメイトと打ち解けて楽しそうに立って話をしている人。

みんななんだか個性的だ。


 これがC組のクラスメイトか。

黒板を見ると、どうやら名前順に座るようだった。

鳴神日向、鳴神日向。


 なんとなく名前順の自分の席であろうところに着席する。

席に座ってジロジロとクラスメイトを観察していると、



「あの・・・一緒のクラスですね」



 隣の生徒に話しかけられた。

振り向くと、さっきの”交信”の能力を持つ、銀髪の女の子がいた。



「あー!同じクラスなんだ!」


「はい!」



 さっきと違って表情が柔らかい。

緊張が解けたのかな。



「そういえば名前言ってなかったね!俺は鳴神日向!」


「私は神藤天音って言います!」



 少しでも知ってる人がいてよかった。

これでちょっと安心だ。


 神藤さんと談笑していると、

クラスメイトの話し声が聞こえてきた。



「C組かよ」「なんで俺の能力でC組なんだよ」



 何人もの生徒がC組であることに対して、

何か不満を抱いているような言い方をしている。

どういうことだ?C組ってダメなのか?



「みんなやっぱりC組は嫌みたいですね」



神藤さんもその光景を見て言う。



「どういうこと?」


「C組はこの学校でも能力が弱い人が集められるクラスらしいです」


「へー、そうなんだ。じゃあA組が一番いいってこと?」


「そうみたいですね」



 ということはA組にはC組よりも強力な能力を持った人がいるのか。

そういえば俺を助けてくれた金髪は何組なんだろう。

まあ、あの空を飛ぶ能力じゃ絶対A組だな。


 ちょっと待てよ、じゃあ俺は絶対A組だろ!

頑張れば能力で山一つぐらい吹き飛ばせるぞ!?

最悪だ!さっきの面談でちゃんと能力の説明をすればよかった!

俺、絶対A組だって!もう1回面談やり直させてくれ!



「はーい、みんな座れー」



 すると教室に俺の能力面談をしたさっきの黒髪ウルフカットの男が入ってきた。

ダルそうにトボトボと猫背で教壇まで歩いてくる。


 もしかしてこの先生が俺たちの担任の先生なのか?

先生が教壇に到着すると同時に話し出す。



「えー、このC組の担任の三田寺傷治です」



 三田寺という先生は相変わらずだるそうな顔をしている。

C組の生徒をジロッと一人一人確認するように見ている。

それが終わると、三田寺先生はこう言った。



「えー、お前たちはC組。弱い能力者の集まりだ」



 ・・・え?

いきなりの強い言葉に、今まで楽しそうな話し声が聞こえていた教室が静まり返る。



「残念だが、お前たちはここで終わりだ」

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