第220話 ウィスロの現状
「ダンジョンの概要はおおよそ理解できた。詳しい事はそれぞれの塔を攻略する時に情報を集めるとして……気になるのは攻略の進捗や主要クランの事だな」
「ふむ。ではまず攻略の進捗について説明をしようか。結論から言うと、記録に残っている今までの最高到達階層は【竜の塔】44階層だ。とはいっても最近は40階層を越えることのできるクランがなかなか現れていないらしい」
「これまでの歴史の中でも最高到達地点が44階層なんだな……。話を聞くに40階層が鬼門か。恐らくボス階層なんだろうけど……」
「その通りだな。40階層は扉を開ける為のキーアイテムを集めるだけでもかなり苦労するようだが、ボス自体の強さも別格と聞く。ちなみにその魔物は『スルト』とよばれる溶岩を纏った巨人の魔物だ。推定ランクSSの上位だったか?」
スルト!? かなり有名な魔物の名前が出てきたな……。その巨体はオーガですら小人に見えるレベルで、魔物図鑑では全長が40m程と書いてあった。もしスルトがダンジョン外に居たら余裕で一国が滅ぶレベルだ。
その特徴はネルフィーも言ったように、溶岩を纏っている装甲のような体表と“巨人タイプ”の魔物であるという事だ。
サイズに関わらず人型を取っている魔物は攻撃手段が多岐にわたり、ゴブリンですら武器を持てば人間に対して脅威となる。それがオーガやヘカトンケイルのようなサイズともなれば、歴戦の冒険者であったとしても死ぬ確率がかなり高くなるわけだ。シンクが幻影城のダンジョンで作り上げた階層はそれをコンセプトとして作られており、単純に人型の魔物というだけでも警戒しなければならない要因となる。
また、動く城を相手取っているかのようなサイズから繰り出される一撃はそれだけで質量攻撃となり得るだけでなく、防御面に関しても堅牢なのは明白。さらに全身に溶岩を纏っていることからこちらが攻撃を仕掛けたとしても手痛い反撃を食らうだろう。
となれば遠距離からの高火力魔法に頼るのが攻略の定石とはなるが、属性の相性が良くなければ如何に火力が高くてもダメージが通りにくくはなる……。
ウィスロの上位クランが30人規模で攻めているにもかかわらず、この階層を突破できないのも納得がいくボスだな。
「かなり厄介な魔物だな。とは言っても俺達は初級である【蛇の塔】からの攻略で、実際にスルトと対峙するのはまだまだ先。それまでにレベルも上がるだろうし新しい攻撃手段やパーティーとしての練度の向上も見込める。スルトの事は一旦頭の隅に置いておこう!」
「ん。そこまでにも突破するのに厄介な階層も多そう。都度みんなで考えていこ」
「そうでございますね。そうなりますと、次に気になるのは現在ウィスロ攻略を行っている主要クランについてです」
「うむ。では次の話題はクランについてにしよう。現在ウィスロにある4つのダンジョンを攻略している主要なクランは全部で20。その中でも主要なクランは6つに絞れる。さらにそのトップを走っているのは2つのクランであり、イブルディア帝国の序列1位【カルヴァドス】と近年力を付けて破竹の勢いで大きくなってきている今年序列2位の【テキラナ】だ」
「【カルヴァドス】に関してはスフィン7ヶ国協議会でも名前が挙がってたが、結構昔からある
「そうだな。イブルディア帝国の国民に序列1位のクランを聞けば老若男女問わず誰に聞いても【カルヴァドス】と答えるくらいには有名だ。だからこそ冒険者のスカウトにも力が入ってるし、有能な冒険者を獲得しやすい土壌が出来上がってる。加えて資金力も相当なものだろう」
「そんな有名なクランがあるんっすね! でも俺的に気になるのは序列2位の【テキラナ】っす!」
「【テキラナ】に関してはまだ詳しい情報は少ないが、とにかく若い連中が多いクランだ。その分勢いもあるし、クラン内の規律も緩いようだが、だからこそクラン間でのいざこざも絶えないって聞く。ただ、そんな癖のある奴らをまとめ上げてるのがクランマスターとサブマスターの二人って話だな。クランマスターはとにかく戦闘力に特化した者で、ある種のカリスマ性を兼ね備えているようだがクラン運営や集団戦闘の指揮には一切関与していないと聞く。その分サブマスターは、クランの全体の運営や指揮などを担っている頭脳派らしい。もちろん戦闘力も一流ではあるのだろうがな」
「ってかさ、このウィスロダンジョンの攻略仕様を考えたら、クラン同士の揉め事はかなりありそうじゃね? ドロップアイテムに高値が付く事とかも考えたら、特に攻略階層が被ってる場合とか、資金の調達面でも対立は起きそうだろ?」
「あぁ、阿吽の言う通りだ。【カルヴァドス】と【テキラナ】は当然のように敵対関係で、この二つのクランを中心としたクラン連合もある。その他にも両陣営にアイテムを売る事を目的とした中立的派閥があり、主たる情勢はこの三つの派閥の動きで大きく左右されるのだろう」
「ん。でもその三つに属していない冒険者達も居そう。そのあたりのことは実際に街を見て回らないと分からないと思うけど」
「そうだな。冒険者ギルドにもいく必要がある。詳しい事はそこでも聞けるだろう」
「よし、なら明日は実際に街を見て回りながら今後の方向性を考えるとしようか!」
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