第四部
第十章 巨大迷宮都市ウィスロ編
第218話 国の改革
~阿吽視点~
王都クーデターが終息してから半年が経過した。
首謀者であるフェルナンドが死んだことをきっかけに、ルザルクは何かがふっ切れたように毎日一心不乱にアルト王国のために動き続けている。
というのもアルト王国の王都アルラインは、イブルディア帝国の侵攻と合わせ、短期間で2度の戦争や内乱を経験し、建物だけでなく政治基盤も崩壊。さらに住民の精神までも疲弊させていた。
それだけではなく、さらに追い打ちをかけるように国王が
14歳のフィリップに関しては王位に執着はなく、むしろルザルクを支えることに注力したいと言っているようであり、ルザルク派が実権を握っている現状を見ても争いの火種となる事はなさそうだ。
まだまだ肉体面も精神面も発達途中の年齢ではあるが、これからルザルクと良い関係を築いていって欲しいと願っているのは俺だけではなく、国民の総意だろう。
とまぁ、ついにルザルクを「陛下」と呼ぶ日が来たのだが……アイツの忙しさを見ていると素直に喜んでいいものなのか分からなくなってくる。
そんな俺の心配とは裏腹に国王に即位したルザルクは様々な改革を次々と打ち立てている。
時期的に不安定な情勢の中での国王崩御は、現状に輪をかけて国全体が不安定になる可能性が非常に高かった。しかし、そのタイミングを逆に好機と捉えたルザルクは抜本的に政治基盤や国の方針を大きく改変していく事としたようだ。
全てがボロボロになっている体系を逆手に取り、王位就任早々から数年単位での国の大改革を提言。政治機関に関しても一時的に王都アルラインから現在開発が進められているプレンヌヴェルトへと移行した。これは元々ルザルクの派閥に属していた貴族がレクリア周辺に固まっていた事もありスムーズな体系改革を目的としたようだ。ちなみにバルバルも間接的にだがこの政治体系に組み込まれている。
それだけではなく、国力向上のための人材育成が大きな課題となったため、兵士・文官・研究者などの各育成機関として新たに王立の学校をプレンヌヴェルトに建設、早期開校を目指すという流れとなった。
これは政治や軍部が貴族中心となってるこれまでの流れから、平民であっても優秀な人材は取り上げていくという変化の現れであり、ルザルクは国民全員にこの抜本的な国の改革と今後の方針について丁寧に説明を行った。それにより今まで不透明であった政治や国家経営の方針が明確化され国民の不安感は大きく軽減さている。
このあたりはフェルナンドの影響もあるのだろうが、フェルナンドとは違う方向からのアプローチはルザルクらしさが出ている改革内容だと感じた。
そして俺達はというと、それに合わせてプレンヌヴェルトのダンジョン効果範囲を拡大、バレない程度にダンジョンポイントを使って建設のサポートをしていた。といっても開発地区の建設速度が速過ぎて、新しい建物がポンポン出来ていても誰も気にしていないようではある。さすがに学校などの大きな施設を造る時はかなり気を使ったが……。
ダンジョンポイントに関してはクーデター以後アルラインからの住民の流入が増え、ダンジョンの範囲の拡大を行ったことで収支は大きくプラスとなっている。
とまぁ、この半年は色々な事が起きていたのだが、俺たち自身も今後のための準備をしていた。というのも、いよいよ俺達はかねてから計画していたウィスロダンジョンの攻略へと向かうことにしたためだ。
ウィスロダンジョン、それはいまだ未踏のダンジョンであり、全階層が50階以上の大迷宮だ。高階層にはSSランクの魔物も確認されていると聞く。ともなれば、俺達であったとしても攻略には長い期間を要するのは明白。しかもイブルディアの中でも東方に位置していることもあり、一度プレンヌヴェルトへ帰還転移すると容易にウィスロまで行く手段もない。
よほどの事があれば帰還転移を行い緊急脱出するのだが、攻略を視野に入れるとなると今までのように簡単に帰還転移は行えなくなってしまったわけだ。
そうなるとしばらくの間プレンヌヴェルトを空ける事になってしまうのだが、幻影城の魔物の配置などは各階層担当がこの半年で完成に大きく近付け、あとはアルスがポイントを調整しながら配置を行っていくこととなっている。また、プレンヌヴェルトのダンジョン運営はイルス・ウルスのコア組とバルバルが随時改変や階層追加などを行っていく手筈だ。
「阿吽、みんな準備できた」
「おう! んじゃ、そろそろ出発するか!」
「あの……阿吽様、ウィスロへは本当に飛空艇で行くことができるのですか?」
今回の内乱鎮圧の褒賞として【星覇】はルザルクから飛空艇1隻をもらった。整備や修理も星覇に所属しているドワーフ達がこの半年で完璧に覚える事ができ、魔力の充填も済ませてある。星覇単体で150名が搭乗可能な飛空艇1隻を動かす事ができるようになったのだから移動に関する利便性は向上したと言える。
シンクが懸念しているのはイブルディア側の飛行や着陸許可に関してなのだが、それもルザルクからルナに打診して既に許可は得ているそうだ。
「あぁ。イブルディア側の調整はルナがやってくれたみたいだから大丈夫みたいだぞ」
「ルナ皇女……いや、今は女帝だったな。数年間魔族に支配されてボロボロだったところからよく持ち直したものだ」
「そうっすね! 一年もかけずに政治基盤を戻したって聞いたっすよ!」
「もともとアルト王国にたった3人で亡命しようとするくらい行動力はあったしな。あの魔族襲撃以降は各国と飛空艇の技術共有とか整備士の派遣とかを決めて、良い関係を再構築してるってルザルクが言ってたぞ。それが前皇帝の悲願で、ある程度の下準備は終えられていたって聞いたけど、いざ実現しようと思ったら大変な事だっただろうな」
「ふむ。若い世代の力というのは本当に素晴らしいものだ」
「ん。二国のトップが短期間で代替わりするのはかなり珍しいみたいだけど、ルザルクとルナならちゃんとした協力関係を築けそう」
「だな! よし、飛空艇の準備もできてるみたいだし、俺達も乗り込むとするか! 大迷宮都市ウィスロ、どんなところか楽しみだな!」
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どうも幸運ピエロっす!
今話より『第10章 巨大迷宮都市ウィスロ編』スタートです!
この章に関しては、当初考えていた内容から数度に渡る改変をしていっているところですが、現在もその改変作業が間に合っておらず……、申し訳ありませんが来週の投稿を空けさせていただきます。汗
書きたい事が多すぎて纏まり切っていないのが正直なところで、めっちゃ嬉しい悩みなんですが、時間が足りなくて1日40時間くらい欲しいって切実に思ってるくらいです!!
ちょいちょい投稿は遅れてしまうかもですが、必ず投稿は続けていきますので、そこはご安心ください♪
ということで、次話は5/31(金)投稿予定です★
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