第214話 ゾンビ先輩の大冒険⑤

 

~イケてる元ゾンビ視点~


 はい、まいどー!! ゾンビのおっちゃんやでー!!

 言うても、今は業火の冥府騎士フレイムヘルナイトっちゅうイカした種族やけどな!

 種族なんてちっさい事は気にしたら負けや! それにルーツは大切にせなアカンからな! これからもワイはゾンビを名乗るでっ!


 そんな事よりも、見てやこの装備! この前助けた人間の男から『マジックバッグ』っちゅう便利な鞄をもろたんよ! んで、そん中に入ってた装備品をゴーレム君鎧に合わせてみたんや! 最高にクールやろ?

 ……うん? どんな装備かって? しゃーないなぁー、せっかくやからステータスもついでにお披露目したろっ!



<ステータス>

【名前】――

【種族】業火の冥府騎士フレイムヘルナイト

【状態】――

【属性】火・土

【レベル】72

【HP(体力)】16500/16500

【MP(魔力)】1010/1010

【STR(筋力)】142

【VIT(耐久)】165

【DEX(器用)】32

【INT(知力)】101

【AGI(敏捷)】92

【LUK(幸運)】18

【称号】腐鬼ゾンビ先輩

 猛焔に焼かれし者

【スキル】

 ・八熱地獄はちねつじごく:5分間STRとAGIが2倍となり、自身に炎を纏う(MP消費70)

 ・銘肌鏤骨めいきるこつ:10分間STRとVITとAGIが2.5倍となる(MP消費200)

 ・火属性耐性(Lv.10MAX

 ・火属性魔法(Lv.2)

 ・バーンスタンプ蹴たぐり

 ・フレアナックル全力のパンチ

 ・ヘルバイト噛みつき

 ・擬死死んだふり:生者ならざる者は容易に死を擬する事ができる。

 ・騎乗(Lv.7)

 ・騎乗調教テイム:一定時間騎乗した生物を従者とすることができる。

 ・骸暗がいあん眼:その眼に光はない。だが、その眼はあらゆるものを見通す力を持つ。

 ・矛術(Lv.7)

 ・棒術(Lv.5)


 ――――――――――――――――――――

<装備品>

 ・炎月矛

 ・赤鋼人形ゴーレム君の鎧

 ・霊廟王のマント

 ・ガーディアングローブ

 ・ガーディアンブーツ

 ・紅焔のネックレス

 ――――――――――――――――――――



 ドヤっ!! ごっつ強うなっとるやろ!?

 ぶっちゃけこの数字が意味してる事なんか一つも分からんのやけど……、何かいっぱい数字が並んでるやん?? ってことは強そうやん!!

 まぁ、小難しい事なんか考えてもしゃーないし、どうせ考えてもよう分からんのやから数字はスルーさせてもらいますわ。


 そんなことよりもや! 見てやこの装備!! 結構ええ感じやろ? 未だに頭骸骨だけ丸出しやけど……。

 いやぁー、人助けってするもんやなぁー! アイツ、ラヴァンの餌にするには肉が少ないし、そない美味そうでもなかったからな! こんな見返りがあるならナンボでも人間助けたるわ!


 スキルは進化したりレベル上がったりで色々増えたんやけど、特筆すべきは【火属性耐性】やな。なんやかんやで火龍はんに3回も燃やされたらスキルのレベルがMAXになっとったわ。

 ってか普通ならこんななる前に燃やされて灰になってしまうんやろうけど、運良くギリギリ死なんかったんよなー。言うても初回に燃やされた時はガチで死にかけたし、めちゃくちゃ熱いし痛いしでヤバかったわ……。ギリ死なんのもガチの拷問かって思っとったけど、スキルが成長したんやからやっぱ運良かったんやな!

 まぁ、このスキルのお陰で火山島の魔物の攻撃なんかHP全然減らんかったし、数日砂漠におっても涼しいって感じるくらいやからな。熱に対しては無敵に近い防御力になっとるわけや!(ドヤァ!!)


「キュエェェ」


(うん? ラヴァン、どないしたんや?)


「ギルルルゥ……」


 あー、喉乾いたんか……。

 確かにジャイアントワーム巨大芋虫食ったから腹は膨れてるんやろうけど、水分は全然飲んでなかったな。ワイが全く水分も必要とせんから気付かんかったわ。すまん、すまん!


 ただ、この砂漠地帯に水なんて……ん?

 遠くに見える緑と青。あれは……オアシスか!? あー、でもその周りに集落もあるな……。ってことは人間が住んどることになる。出来れば人間には関わりたくないんやけど……


「ギュルエェェェ……」


 分かった分かった。行って水飲んですぐ退散すれば問題ないノープロブレムやろ。

 ってことで、とりあえずあのオアシス向かおかー!


「キュイ!!」


 ラヴァンに乗ってオアシスに向かって行くが、近付いていくにつれて様子がおかしいことに気付く。

 集落があるにもかかわらず人気があまり感じられへん。それに人間くらいの大きさがある蟻の魔物達が、集落の中を我が物顔で徘徊しとる。

 まぁ、ワイ等には人間のトラブルなんて関係ないんやけどな! さて、湖まで水飲みに……って、そない簡単に水は飲ませてなんかくれんわな。


 湖の近くに降り立つと、土の中から這い出てきた蟻の魔物に取り囲まれる。

 恐らくこのオアシス一帯がこの蟻の巣になっとるんやろけど、それにしても意味分からんくらいの数がおるやん……。

 これ……何かしらの理由で大量発生して、人間の集落が崩壊したって感じか? んで、餌が潤沢にあることでさらに数も増えたと。なるほどなるほど、我ながら名推理やなっ!

 ってか縄張り意識が強いのは分かるけど、ゴリゴリ敵意向けてくれちゃってるやん。コイツ等駆逐せんと水は飲ませてもらえんって事かいな。となれば……やる事は一つや!


(ラヴァン、コイツ等全部ぶちのめせば念願の水が飲めるで!!)


「キュルルルルァァァ!!」


(おっしゃ! いてもうたれぇ!!)


 一斉に向かってくる蟻んこの群れ。炎月矛に魔力を通し横薙ぎに振り回すと、蟻んこ達は面白いくらいにスパスパ斬れて液体を撒き散らしながら屍となっていく。

 ラヴァンも向かってくる大量の蟻んこを千切っては投げ、千切っては投げ。順調に駆逐していくも一向に蟻んこの数は減る気配が無い。

 それでもワイごと燃やそうとブレスを放つのはやめてくれへんかな? いや、無傷やけどな? ちょっと傷つくやん……主に心が……。


 まぁ数こそ多いけど蟻んこ一体一体はそない強ない。ランクで言えばDの上位かCの下位くらいのもんやろ。

 さすがにワイとは力の差があり過ぎて微々たる程度しか経験値は入らんけど、ラヴァンにとってはそれなりに良い経験知稼ぎにもなるわけで、それがザっと見る限り200体以上も食い散らかせば……


「ギュルァ!?」


 ビクンッと身体を震わせたラヴァンは、咄嗟に尻尾で周囲の蟻を吹き飛ばした後にうずくまる。

 出会った時から変異個体やったラヴァンも、レベルが上がれば進化する可能性はあると踏んどったけど、それが的中したな。


(ようやったで、ラヴァン! あとはワイに任せて、大人しく進化しとき!)


「キュアァ?」


(こんなん余裕やで! 安心して休んでてええよー)


「ギュイッ!」


 ラヴァンを背にして蟻んこ達に向き直る。そうして向かってくる蟻んこを全て殲滅し終え、ラヴァンの方を振り向くと、そこには巨大な異形の竜が鎮座しとった。


 全長は15m程にも達する巨体で、溶岩を彷彿とさせるゴツゴツとした赤褐色の体表。

 3つの頭に尾っぽが12本、翼が3対という特異な容姿のドラゴンは、見る者全てに畏怖いふを抱かせる。

 ワイにはそれがラヴァンやってことは理解できるんやけど、ビックリし過ぎて身体がビクッってなったわ。ゾンビの頃やったら物理的に目が飛び出てたな!


 いやー、それにしてもイカツいわ。種族名は……【ゴルィニシチェ】?

 なんか呼びにくいし、これからもラヴァンって呼ぶことにしよ!


 てか、ワイにテイムされたからイレギュラーな進化しちゃった……とか?

 んー、まぁカッコエエし、頭が三つにもなれば賑やかにもなるやろ!

 ってことは、最高の進化やな!!


 あっ……、でもこれで完全に人間の街に行くことはできんくなってしまったか……?




―――――――――――――――――――――――――――――――

数話ゾンビ先輩の閑話が続きます♪

次話は4/26(金)投稿予定です★

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