第190話 ブライドとの再戦②


 ブライドの頭部を覆っていたファントムヘルムが割れ、カランと音を立てて地面に転がる。それと同時にまるで焦点のあっていなかった目や、苦悶に歪んでいたブライドの表情に変化が生まれ、それまでより幾分かマシにな顔つきになったように感じた。

 一応、ステータス確認しとくか。


<ステータス>

【名前】ブライド・イシュロワ

【種族】魔人

【状態】激情・熱痛・出血・空腹

【レベル】54

【属性】火

【HP(体力)】8709/9900

【MP(魔力)】1220/1800

【STR(筋力)】171

【VIT(耐久)】105

【DEX(器用)】58

【INT(知力)】172

【AGI(敏捷)】255

【LUK(幸運)】18

【称号】魔ノ者との契約者

    剣帝

    豪炎

    呪われし者

【スキル】

  ・魔人化

  ・燎原之火りょうげんのひ

・フレイムソード

・フレイムボール

  ・フレイムランス

  ・体術(Lv.4)

  ・剣術(Lv.6)


【装備】

  ・魔剣オルグヌス(呪):鑑定不可

  ・アスピレーションソウルアーマー(呪):鑑定不可

  ・ブラッディーグローブ(呪):鑑定不可

  ・ソーンブーツ(呪):鑑定不可

  ・デビルズリング(呪):鑑定不可


 装備枠のファントムヘルムが消えた事で、VIT耐久が120から105に減少し、DEX器用は99から58に、INT知力も202から172まで大きく低下しているが、状態異常の【狂乱】と【幻聴】も消えている。


 となると、ファントムヘルムの効果は、VIT耐久DEX器用INT知力を大きく底上げする代わりに、【狂乱】と【幻聴】の状態異常を付与するようなものであったらしい。

 うーん、これは、敵に塩を送っちゃった感じか? あの単調な攻撃が、状態異常によって複雑な思考ができなかったものであったならば、それが消えたことで逆にブライドが強化されてしまった可能性もある。


「んでも、あのままサンドバッグにするだけじゃつまんねぇしなぁ……まぁ、いっか!」


「ガァ……、ハァ、ハァ……。俺は、今まで、何を……」


「おぅブライド、やっと言葉が通じるようになったか?」


「っ!? 貴様は、阿吽っ! 死ねぇぇぇ!!」


 この野郎、俺の事を再認識した上でいきなり斬りかかってきやがった。

 それを赤鬼の金棒で弾き、そのままがら空きの胴体に回し蹴りをブチ込んで一旦距離を空ける。


「おいおい。お前さ、今どういう状況か分かってんのか? ってか、どこまでの記憶があるんだ?」


「俺は……、序列戦でお前に敗れ、地下牢に……っく、なんだ? ……そこからが思い出せないっ」


「あー、オッケー、オッケー。だいたい分かったわ」


 序列戦で俺に負け、魔族に裏切られたことで折れかかっていた心に自白剤を使用されたことで完全に精神が壊れた感じだな。

 ってか、強力な呪いの装備を付けられて【狂乱】にまでなっていた状態異常だったが、俺がファントムヘルムを壊したことで自我を取り戻したって感じか? だとしたら、俺に感謝してくれても良いくらいじゃね??

 まぁ、ブライドに感謝されても気持ち悪いだけだし、コイツはここでぶち殺すって決めてるけどな。どうせやるならしっかりと因縁に決着を付けたい。というか本気で戦いたい。さっきまでのパニクってるコイツに勝ったところで虚しくなるだけな気がしてたしな。


 んー、よし! とりあえずあおっとくか!!


「混乱してるだろうから教えてやるよ。お前さ、またされてるぞ? しかも、お前が散々“無能だ”、“傀儡くぐつだ”って馬鹿にしてたフェルナンド第一王子にな」


「そんなわけ――」


「いやいや、あるんだよソレが。今王都はフェルナンドが仕掛けたクーデターの只中ただなかだ。そんで、それを鎮圧しに来た俺達を足止めするための“時間稼ぎ”にお前が使われてるってわけ」


「クーデター? 足止め? そんなこと信じられるわけがないだろう!!」


「だったらさ……お前の右腕、見てみろよ」


 俺が顎で右腕を指すと、ブライドは恐る恐る自分の右腕を確認する。

 はブライドの目にはどのように映ったのだろう。俺からはガッツリ魔剣に右手を喰われてるようにしか見えねぇけど……。


「うわあぁぁぁぁ!! なんだコレはっ!!」


「うんうん、思いっきり喰われちゃってるよねー。……あのさ、今どんな気持ちなん? お前がドレイクにやった事が、自分の身に降りかかってるわけだけど。これが“因果応報”ってやつなんだろうなー」


「っく……クソが!! だが、まだ……これだけなら何とかなる!!」


「あー、言いにくいんだけどさ。お前の首から下……全部呪いの装備に喰われてるぞ?」


「なん……だと……?」


「自分のステータス確認してみろよ。多分、このままお前のこと放置しててもそのうち死ぬぞ」


 ここまで言って、ふと思った。

 あれ? 俺って性格悪いのかな?

 傷口に塩塗って、それをポーションで直してからまた深い傷を付けて塩でこすってる感じになってるけど……。


「うぐっ……ガハッ!! 何だこの痛みはっ!! あがぁぁああぁあ!!」


 今までは呆けていてその感覚が分からなかったのだろうが、状態異常には【熱痛】や【出血】ってのがしっかりと残っている。今の状況を再認識したことでその痛みを脳が理解してしまったのだろう。

 それでも、俺へと向ける殺意は変わっていない。むしろ増大したようにすら感じる。

 だが、それで良い。それでこそ本気でコイツをぶちのめせるというもんだ。


「っく!! どうせ死ぬなら……お前も、道連れにしてやるっ!!」


「やれるならやってみろ。お前との因縁……ここで綺麗に断ち切ってやっからよ!」

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