第165話 暗中模索
~沈黙の遺跡 シンク視点~
「これでおーしまいっ!!」
「倒すの……楽に、なってきた」
わたくしたちがSSランクとなってからおよそ3週間が経過いたしました。
この期間ネルフィーさんとわたくしはメアとチェリーのレベル上げのため沈黙の遺跡を再び周回しております。とはいってもボスであるアークキメラとは戦わず大量に魔物を召喚するリッチまでの周回パターン。
最初はわたくしたちの手伝いが必要であったリッチの討伐も、今ではメアとチェリーの二人で攻略できるほどになっています。ただ、その戦闘能力はまだ想定していたところまでは到達できておりません。阿吽様に念話で報告したところ、恐らく高レベルであるわたくしたちが一緒に居るためそこまで多くの経験値が得られていないということでした。
「メア、チェリー。レベルはいくつになりましたか?」
「私は51だよー!」
「わたし、は55レベル……です」
二人とも大きくレベルは上がっていますがまだ進化には至っておらず、阿吽様の期待に応える事ができていません。
(このままではいけませんね……)
「ふたりとも、話があります」
「はーい!」
「なん、でしょうか?」
「もう5階層までの罠の位置や種類は把握しましたか?」
「うん! 大丈夫だよぉ!」
「であれば、残りの1週間は二人で攻略をしなさい。その方がレベルも上がりやすいでしょうし、今後は二人で行動することになります。互いの理解を深めて連携をさらに強化するのです」
「わかり、ました」
「ではわたくしとネルフィーさんは幻影城に帰還しますので、予定の日になったら戻ってきなさい。それと……戻ってくるまでに必ず二人とも進化を果たすこと。これは絶対です」
「はい」
「うん! がんばるっ!」
◇ ◇ ◇ ◇
二人を残しネルフィーさんと念話で連絡後、幻影城へと帰還。
ネルフィーさんは途中から沈黙の遺跡で別行動をとっていました。なんでもダンジョンにある罠を徹底的に調べ上げたいとの事です。ここの罠の構造も幻影城に組み込むつもりなのでしょう。
かく言う私もただ子守りをしていたというわけではありません。わたくしの管轄する幻影城3階層は物量で侵入者を処理するコンセプトです。これは沈黙の遺跡でリッチの階層を見ていたからこそ思いついたもの。であればその弱点なども周回攻略していくうちに自ずとわかってきます。
その弱点とは“広範囲魔法”。リッチのフロアと違うのは魔物のランクですが、わたくしが召喚しようとしている魔物も基本的には物理攻撃や物理防御に優れた種類ばかり……。
ではどうすればよいか。わたくしなりの答えは防具で補うというものです。青等級の防具であっても魔法防御に特化したものはそれなりにあります。それらを階層の魔物に装備させ、魔法に対する耐性の底上げを図ります。
また各隊での連携のみならず、全体での連携も行わなければなりませんね。これはボスのオークエンペラーやメア、チェリーに指揮をさせることを視野に入れて更なる教育も行わなければなりません。
「あとは、私自身の強化……ですわね」
イブルディアでの魔族襲撃の際にオルトロスと戦い、わたくし自身の強みは分かりました。しかし、絶対的に足らないのです。阿吽様やキヌ様に並び立つには……。あの御二人とわたくしとの間にはまだ大きな力の差があります。
それに後から聞きましたが、南部に出現したオルトロスを圧倒的な速度で倒したのは武京国将軍の側近で『
しかし、わたくしたちのレベル帯ではこの周囲でそこまで多くの経験値を獲得できる狩場はありません。となると、当然次の進化を待つ余裕などあるはずもなく……、
「やはり……スキルと魔法が、強化の鍵……」
もう一度スキル構成を見直し、新しいスキルの獲得のために試行錯誤をする必要もありそうです。
ということで、わたくしのステータスを今一度確認いたしましょう。
<ステータス>
【名前】
【種族】夜叉姫
【レベル】63(+2)
【状態】
【属性】地・水
【HP(体力)】12300/12300(+300)
【MP(魔力)】710/710(+30)
【STR(筋力)】80
【VIT(耐久)】149(+3)
【DEX(器用)】40
【INT(知力)】71(+3)
【AGI(敏捷)】47
【称号】従属者
変幻自在
【スキル】
・
・
・ガードインパクト
・地属性魔法(Lv.6)
・水属性魔法(Lv.3)
・人化
・他種族言語理解
・挑発
・調理
・盾術(Lv.5)
・斧術(Lv.4)
もう穴が空くほど何度も見たスキル構成。この中で何か見落としている事はないか、新しいことはできないか……。スキルや魔法の組み合わせを幾通りも模索し、実際に試す事が必要かもしれません。
「やはり、ガードインパクトや盾術、斧術あたりが……あら? このスキルは……」
「シンクねぇさん、何やってるんっすか?」
「ぴゃぃっ!? ド、ドレイク……。いつから居たのですか?」
「ちょっと前からっすけど? ねぇさんが一人で何かを
急に背後から声を掛けられ、思わず変な声が出てしまいました。
周囲に誰か居るのが分からない程集中していたようです。それに独り言まで……。ここが幻影城のコアルームという安心感もあったのかもしれませんが、これは不覚ですね。
ですが、ここにドレイクが来たのはタイミングが良かったかもしれません。
「ドレイク、一緒に行きますわよ」
「えっ……? どこに?」
「試したいことがあります。久しぶりに二人で
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