第162話 ランダム召喚


 初めて行うランダム召喚。


 ウルスの説明を聞くと、今まで行ってきた魔物の召喚に様々な設定を加える事で簡単に行えそうだということも分かった。

 そして今回設定するのは「レベル1での召喚」、「消費DPダンジョンポイントは10億ポイント」、「召喚者は俺」というところだ。


 この“10億DP”は SSランク上位の魔物を生み出す事ができる下限・・ギリギリのラインであり、幻影城ダンジョンの作成にあたってそれぞれの階層守護者に割り振ったポイントだ。ちなみに今回の幻影城計画により半年以上かけて貯めてきたポイントは、ほぼほぼ使い切っている。


 残ったのはクエレブレとヤオウが余らせてくれたポイントだが、実際のところプレンヌヴェルトダンジョンを50階層まで増やし、強化するには全然足りていない状況になってしまっているわけだ。

 まぁ、期待以上の強化はできているし、ポイントはプレンヌヴェルト街の人口が増えるのに比例して増えていくため、貯め直すのは以前よりだいぶ楽になっている。


「よし、んじゃさっそくやっていくか!」


「ん。阿吽と私の初めての共同作業……意味はないかもしれないけど、召喚する時に私の魔力も阿吽に流してみる」


「おう、こういうのは気持ちが大事だからな!」


 何か照れるな……。と考えながらもキヌからの暖かな魔力の流れを感じながら各種の条件設定を行い、最後に“消費DP”の項目に1,000,000,000DPと設定。


 そしていざ召喚をしようするも、不意に脳内へ誰かの言葉が流れ込んできた。


(これは……進化する時に聞いた声と同じ……)


 思わず正面に居るキヌを見ると、ピクッと耳を震わせこちらを見ていた。恐らく、俺に魔力を流している事で同じ言葉を聞いたのだろう。



 互いに合わせていた目線をそのままに、俺とキヌは自然と言葉を復唱する。


『『星より出でて、星へと還る――。その永劫の流れに捕らわれし巨獣――。今こそ、数奇の運命から解き放たれよ』』


 この詠唱が何なのか、何を意味しているのか全く分からないが、このセリフを言い終えると幻影城第五階層内部が突然闇に満たされた。


………………

…………

……


 どこまでも黒く、何かに吸い込まれてしまったかと錯覚するような深い闇――。近くに居るはずのキヌやウルスの気配も感じにくい。


 立っているのか、寝ているのか……、上下の感覚や時間の感覚までも曖昧になり出した頃、この真っ黒な空間に変化が生じた。

 漆黒を照らす炎が優しく灯り、一閃の落雷が何か・・に落ちる。そして空間を支配している闇の中にぼんやりと丸い光が灯っていく。


 それはまるで闇夜に浮かぶ満月のよう。


 しばらくその光景を眺めていると、階層を満たしていた闇が少しずつ光球に吸い込まれていき、最後には黒色のが残されていた。


「な……なんなの? 何が起こったの!? こんなこと知らないの!」


「コレは……?」


「阿吽、鑑定してみて」


「お、おう」


【名前】――――

【種族】????

【状態】孵化???日前

【レベル】1

【属性】火・雷

【HP(体力)】1010/1010

【MP(魔力)】400/400

【STR(筋力)】???

【VIT(耐久)】???

【DEX(器用)】???

【INT(知力)】???

【AGI(敏捷)】???

【LUK(幸運)】???

【称号】天災

【スキル】――――

  


「なんだ、コレ……。ほとんど分かんねぇじゃねぇか……」


 想定外の事態に呆気にとられながらステータスの確認をしてみるも、そのほとんどが鑑定不能のような状態だった。

 分かっているところは属性とレベル、一部のステータスと称号……。

 とりあえず、一つずつ見ていくか。


 まず種族は不明だが、これは孵化前だからだろう。それにしては属性やHP・MPは分かっている。なんともチグハグな感じだ。

 ってか、HPとMPがレベル1にしては高くねぇか!? 確か俺がHP1000を超えたのは、2回進化して鬼人になったレベル20の時だぞ?

 それに称号にある【天災てんさい】。孵化する前から既に災害を引き起こすことが確定しているようにもとれる。相当ポテンシャルが高い魔物が生まれてくるという事だろうか……?


「阿吽、何か分かった?」


「分かったともいえるし、分からないとも言えるな……。恐らくだが相当強力な魔物であるとは思う。孵化前にもかかわらずHPが1000を超えてるしMPも相当高い」


「ん。生まれてきた魔物がどんな種族であれ、私が責任を持って育てる」


「んー、まぁそこはみんなで育てていく事にしようぜ。メインはキヌに任せるけどな。ただ、まずはできるだけ毎日様子は見に来るようにしようか。孵化するタイミングも鑑定で分かりそうだしな」


「二人とも平然としてるけど、これは異常なことなの! コアであるウチでも卵が召喚されるなんて聞いたことないの!」


「まぁ、そうは言っても実際卵が召喚されちゃったわけだし、今できる事って孵化するのを見守ることくらいだろ? なら慌てても仕方ねぇって」


「ウルスは驚きすぎ。ほら、ムギュってしてあげるからこっちおいで?」


「な、中身がはみ出るくらいムギュっとするのはやめてほしいのぉぉ!!」


 キヌがウサギゾンビのぬいぐるみを抱きしめてる姿は眼福だな。

 うん、平和だ!


 とりあえず召喚された卵のことで今やれることはなさそうだし、次は何をすべきか……あれ? そういえばルザルクが今回の魔族撃退とイブルディア侵攻の報酬渡すって言われてたんだった。いろいろやってて忘れてたけど、いつだっけ?


「そういえば、ルザルクが王城に来いって言ってた日にちっていつだ?」


「ん? それならシンクが明日って言ってた。阿吽忘れてたの?」


「マジか! 完全に忘れてたわ。危うくすっぽかすとこだった!」


 いや、マジで危なかったわ。嬉しい悩みなんだけど最近はやりたい事が多すぎて時間が足りてない。

 でもまぁ明日の予定は決まった。【黒の霹靂】の5人で王城だな!

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