第158話 原石たち


「メア、チェリー。ちょっとステータス見せてもらっても良いか?」


 鋼糸のはりつけから解放されたチェリーと、ひそかにドヤ顔をしているメアに向けそう聞くと……


「やったー! 阿吽様に頭でてもらえるっ!」


「ど、どうぞ……」


 2人が揃って頭をこちらに差し出してきた。

 いや、頭じゃなくて手とかでも良いんだけど……。

 まぁ二人とも頑張ってたし、頭を撫でてやるくらいは別にいっか。


「そ、その手がありましたか……。次回はわたくしも……」


 ……シンクが何かつぶやいているが、俺には聞こえない。

 そんなことよりも、二人のステータス確認だ。目の前に出されたメアとチェリーの頭に左右の手で触れ、ステータス確認を行う。


<ステータス>

【名前】チェリー

【種族】レッドオーガ

【状態】

【レベル】43

【属性】火

【HP(体力)】3250/6000

【MP(魔力)】200/350

【STR(筋力)】83

【VIT(耐久)】56

【DEX(器用)】10

【INT(知力)】17

【AGI(敏捷)】85

【LUK(幸運)】11

【称号】従属者

【スキル】

・人化

・フレイムナックル:近接魔打撃(消費MP50)

・火属性魔法(Lv.1)

ボイリングブラッド沸き立つ血液:5分間STR・VIT・AGIが100%アップするが、スキル発動時にHPが最大値の2割分減少する。(消費MP100)

・拳闘術(Lv.3)



<ステータス>

【名前】メア

【種族】ナイトメア

【状態】

【レベル】50

【属性】闇

【HP(体力)】3410/3650

【MP(魔力)】920/1100

【STR(筋力)】20

【VIT(耐久)】40

【DEX(器用)】135

【INT(知力)】85

【AGI(敏捷)】31

【LUK(幸運)】10

【称号】闇に堕ちし魔獣

    従属者

【スキル】

・人化

・暗視眼:暗所に於いても視力の制限を受けない

・闇属性魔法(Lv.4)

昼想夜夢ちゅうそうやむ:20分間DEXが120%アップする。(消費MP100)

・操糸術(Lv.4)



 この二人のステータスは“真逆”と言っていいほどのものだった。

 筋力値や耐久値、敏捷値が高いチェリーに対し、器用値と知力値に突出したメア。真逆であるからこそ今までペアでパーティーを組んでいた際に互いが互いの欠点を補い合い、前衛と後衛の役割分担も容易にできていたのだろう。


 二人に共通して言えるのは【人化】のスキルを所持している事や、俺達と同様スキルに個々の・・・魔法が載っているわけではなく、『火属性魔法(Lv.1)』や『闇属性魔法(Lv.4)』となっている部分だ。これはクエレブレの指導により、魔法の概念を理解し、戦況に合わせて自分に合った魔法を構築できるという指標でもある。


 それぞれの特徴を細かく見ていくと、チェリーはレベル43とそれなりにレベルが上がっているようではあるが、まだ進化はしていない。恐らく元々変異個体であることも関係しているのだろうが、今後レベルを上げれば進化ができるのは俺やキヌが証明している。

 模擬戦で使用したスキル【ボイリングブラッド沸き立つ血液】は強化バフスキルであり、このレベル帯で俺達が使えていたバフよりも効果が高い代わりに『スキル発動時にHPが最大値の2割分減少する』というデメリットもある。戦闘が長引くほど使い勝手は悪くなるが、戦闘開始直後から一気に勝負を付ける事ができ、そこまで致命的なデメリットではないことを考えればかなり有用なスキルと言える。


 次にメアだが、称号にある【闇に堕ちし魔獣】はユニコーンだった頃、マーダス達に角を折られてナイトメアに特殊進化した際に付いたものなのだろう。字面だけみるとすっげぇ邪悪そうな称号ではあるが、今のメアからはそんな雰囲気は微塵も感じない。どちらかと言えば物静かな少女という印象だ。

 レベルは50とチェリーより7レベル高く、ステータスの合計値もチェリーを凌駕している。比較対象として“ネルフィーがレベル50の時の合計値と同じぐらい”と言えば、そのポテンシャルの高さが分かるだろう。


 スキルに関しては【昼想夜夢ちゅうそうやむ】という20分間DEXが120%アップするバフスキルを所持しており、これを模擬戦開始直後に発動していたのも確認している。

 装備している魔鋼糸という武器は中~遠距離武器に属しており、糸の高い操作性はこのスキルに由来しているのだろう。

 というか地味に効果時間“20分間”というのも良い。戦闘の途中でバフが切れてしまうと、ステータスの変化で一時的操作にミスが生じる危険性があるが、20分間もあれば戦闘が終了している事も多く、そういった事故を避けやすい。

 メアに関してもレベルを上げ、進化することで一気に化けるのではないだろうか。


「お前等、マジで磨けば光る原石みたいなヤツ等だな」


「わぁー!! 褒めてもらっちゃったー!!」


「ありが、とう……ございます」


「魔物のお前等は、今後レベルが上がれば俺達同様進化もしていくはずだ。1か月で上げれるだけレベルを上げて来い」


「うんっ!」 「がんばり、ます……」


 2人の成長に期待しつつシンクに目配せをし、このフロアを後にする。


 次は第四階層、クエレブレとヤオウに任せたフロアだな!

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