第128話 潜む陰謀
~帝都イブランド 某所~
暗がりの中、2人の男女が机を挟んで座っていた。
その両者に共通する特徴は、浅黒い肌と真っ赤な目、背中から生える
「いよいよね……まさかアルト王国との戦争であれだけの被害しか出せないとは思わなかったけど、今回の計画が上手くいけば、人族は終わりよ」
女はワイングラスを傾けながら妖艶に笑う。
しかし男の表情は真逆のものであった。
「アストルエ……今回はうまく行くのか? グランパルズの時のように、またゾアが出てくる可能性もあるんだろう?」
「大丈夫よ、ブラキルズ。ゾアはあの後、魔大陸で姿が確認されているし、いくらヤツでもそう何度も大陸間を移動できるわけないわ」
序列戦決勝の裏側でキヌとシンクが戦った魔族“ゾア”は、ブライドと通じていた魔族グランパルズと戦闘を行っていた。キヌが闘技場で感じた強大な魔力や【危険感知】スキルの反応は、その時にゾアが放った魔法の余波である。
だが、この“アストルエ”と呼ばれる魔族の女と“ブラキルズ”という名の魔族の男は、グランパルズがゾアに消される直前、念話のスキルにてゾアの出現を伝えられただけであり、そこから先は正確な情報を得られず、それまでの状況報告と現状の結果からアルト王国で起こった一連の出来事を推察する事しかできていない。
「それなら良いんだけどな。さすがに俺達でも、ゾアクラスのヤツが来たら戦って勝つなんて到底無理だぞ」
険しい表情はさらに苦虫を嚙み潰したように
それはゾアという魔族が、この男にとって極めて不愉快で恐ろしい存在だということを如実に語っていた。
一方、アストルエはあきれた表情で少し馬鹿にしたように言葉を返す。
「慎重も通り越すと臆病と言われるわよ? それに、仮にも今回の計画のリーダーは貴方なんだから、少しはしっかりして頂戴」
「何とでも言え。俺はグランパルズみたいに死にたくはないんだ」
「それこそ大丈夫よ。同族が相手じゃなければ、私たちが負ける事なんてよっぽどありえないわ。
それに、帝国の人間で私たちに匹敵しそうな奴らはウィスロのダンジョンに潜ってるし、アルト王国の衛兵や冒険者は雑魚ばかりなんでしょ?
筋が良さそうなブライドって男もグランパルズがこっち側に引き入れていたし……今は行方不明とかって聞いたけど、どうせブライドもゾアに殺されたんでしょうよ」
実際には序列戦決勝にてブライドは阿吽に倒され、現在は王城の地下牢に幽閉されているのだが、その情報はこの2人に伝わってはいない。さらに戦争では竜人族が思った以上に強かったため魔導飛空戦艇が落とされたと認識している。
だが、今回の計画は帝国内で実行されるため、里を守る事を最優先する竜人族がスフィン7ヶ国協議会に来ることは絶対にありえない。
そうなれば注意すべきは武京国のみであり、その武京国も「将軍と護衛1名のみが入国した」と洗脳している人族から報告を受けていた。
アストルエと呼ばれる女魔族は高を
「まぁ、そうか。それにSランクの魔獣も何体か用意してあるしな」
「フフッ、帝都は一夜で火の海になるでしょうね。そうなれば、その混乱に乗じて各国の要人を私たちの手で始末すればすべて終わり」
「そうだな。そのあとは各国を一つずつ潰していけば、魔王様が復活されるまでの脅威にはならないだろ」
この二人に限った事ではないが、魔族という種族は基本的に人族を見下している傾向にある。
生まれながらに強大な力を持ち、成長すればSランクの魔獣をも使役できるほどのスキルまで持つ魔族。それに比べ、魔導具などの高い技術力や総数は魔族の何倍も居るが、その大多数は一人ひとりが
しかも、この計画を達成するためにこれまで長い時間を費やし、武力ではなく
ここ最近は少しずつ計画にズレが生じてきているが、この二人にとってそれは誤差の範囲でしかない。
「魔王様が復活されるまで残り5年。その前にこっちは片付けちゃいましょうか」
「人族も色々準備はしてるみたいだが、始まっちまえば逃げ惑う事しかできねぇだろうな」
「フフッ、会議の日が楽しみね」
男女の魔族は
これまでに例を見ない事件となるスフィン7ヶ国協議会の開催は、刻一刻と近付いてきているのであった。
第六章 完
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<あとがき>
今話で第六章『沈黙の遺跡編』完結です。
第七章も引き楽しんでいただけたら嬉しいです♪
それと、あと10話ほどで先行して投稿している「小説家になろう」に追いつきます。そこからは両サイトでの投稿頻度を合わせるため週一での投稿となります。(執筆はノリノリで続けていますのでご安心ください♪)
ということで、次章『スフィン7ヶ国協議会編』お楽しみに★
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