第86話 ドラゴンブレス
魔導飛空戦艇から放たれた主砲の光束は数秒で収まった。
ドラゴンたちは咄嗟に回避動作をとったものの、数体はその攻撃が掠り墜落していく。
「ドレイク、俺が負傷者をポーションで回復させてくる!」
「了解っす! すんません、兄貴!」
「大丈夫だ。回復したらそいつらに乗って追いつく。
それより……向こうから攻撃してきたんだ。もう遠慮はいらねぇ」
「分かってるっす。俺も覚悟を決めてこの戦いにきてます。奴ら全て鉄屑に変えてやるっすよ!」
「よし、なら任せたぞドレイク! 空の覇者が誰なのか……奴らに教えてやれ!」
そう言うと、俺はドレイクから飛び降り、【空舞】で位置を調整しながら負傷したドラゴンの近くに着地した。
『ギャルルロォォォォォ!!!』
上空からはドレイクの咆哮が聞こえる。
バッチリ気合い入っているようだな!
その咆哮に合わせて、他のドラゴンたちも陣形を変え攻撃の体制を整えだした。
主砲が掠り、墜落した竜人族の戦士は4名。
墜落した衝撃で全員が人型に戻っており、重傷者の2名は足や腕に重度の火傷を負っていたが、それぞれの傷口にポーションをかけると徐々に傷口が治っていく。
咄嗟に取った回避動作のお陰で、全員致命傷は避けており命に別状はないようだ。
比較的軽傷だった2人のうち1人が、事前に配られていたポーションで回復しきれていない2人に追加でポーションを飲ませていく。
「すまないが、早く戦線に復帰したい。誰か俺を乗せて飛んでくれないか?」
「回復していただき、ありがとうございます! 重傷者の2名は私が診ます!」
「では、阿吽さんは俺に乗ってください! 俺メスターっていいます!」
「メスター、頼んだ!」
メスターは竜化をすると身体を
俺が飛び乗ると地面を蹴りできる限り早く戦線に復帰をするため、全速力で進みだした。
空に舞い上がってすぐに見えたのは、ドラゴンたちが一斉に飛空戦艇に向けてブレスを放っている光景だった。
ブレスを撃ち終わった者はすぐに旋回しながら離脱し、後続の邪魔にならないように立ち回っている。
「すげぇな。これが竜人族の戦いか……」
「この波状攻撃は、阿吽さん達が雪山に出発してからずっと練習していたんです。負傷さえしなければ俺も……」
「あの主砲を咄嗟に避けられるだけでも、メスターは十分凄いと思うぞ。それに、まだ活躍の場面はあるだろ」
「はい! まずは阿吽さんをドレイクの元に送り届けます!」
16体のドラゴンから放たれる波状攻撃が止むと、2隻の飛空戦艇が煙を上げ地面に不時着していくのが見えた。
飛空戦艇は魔導具で障壁を張っていたようであり、機体の損傷は思ったほどではなかったが、飛行するための動力源が破損したのだろう。
だが、あれだけのブレスを受けてもあの程度の損傷となると、かなり硬い障壁と装甲なのではないだろうか。普通の魔法ではビクともしない可能性もある。
それが残り3隻……ジリ貧になれば、こちらも被害が出そうだ……。
戦況整理をしていると、残った3隻の飛空戦艇の船首が開口されていき、主砲を準備しだしているのが見える。
「それにしても、ドレイクはどこへ行ったんですかね? 見当たらないのですが……」
確かにドレイクの姿が見えない。
飛空戦艇を視界にとらえながらも周囲を見渡していると、突然上空から一筋の光束が飛空戦艇に向けて放たれ、轟音と共に一撃でその装甲を貫いた。
そして、撃墜された機体はそのまま荒野に叩きつけられ、次の瞬間地面で大きな爆発を起こし、黒煙が吹き上がる。
上空を見上げると、一際大きな黒いドラゴンが太陽の光を受け、身体の青い模様を光らせながら羽ばたきその存在感を示している。
「上かっ! なんちゅう破壊力してるんだよ、ドレイクのブレスは!」
他のドラゴンのものとは圧倒的に違う……レーザーのようなドラゴンブレス。その貫通力と破壊力はその比ではない。
飛び回っていたドラゴンたちもその動きを止め、唖然としてしまっている。
「ありゃあ、俺が乗らない方がドレイクの力を発揮できそうだな。メスター、悪いけどこのまま乗せてもらえるか?」
「あ……は、はい! それにしてもドレイクってあんな強かったんですね……」
「実は、俺もかなり驚いてる。あそこまでの破壊力を身に着けているとは、思ってもみなかった」
ドレイクは敵の主砲で狙えないであろう上空に陣取ったまま、再び口腔内にエネルギーを溜め始めた。
そして、その数秒後、2発目のブレスを放つ。
1発目とは違い、広範囲に放たれたブレスは、青白く光り輝きながら残った2隻の飛空戦艇を、その射程にとらえる。
今回のブレスには氷属性の魔法が込められていたようであり、何とか持ち堪えている敵の船体が少しずつ凍っていくのが分かった。
ドレイクのブレスの直撃を受けた2隻の飛空戦艇は、装甲だけでなく動力源も凍らされたようであり、その機体を傾けながら地面へと墜落していくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます