第85話 開戦
~阿吽視点~
氷の魔核を取り込み進化したことにより、一回り大きくなったドレイクに乗り竜人族の里を目指して飛んでいると、ルザルクから連絡が入ってきた。
「阿吽、ボットロックからアルラインへ3隻、竜人族の里へ向けて5隻の飛空戦艇が飛び立つのが目撃された!
それに伴い国境付近にも兵が集結されている。宣戦布告後すぐに攻撃が始まることも予測される。まずは竜人族の里を守り、その後アルラインへできるだけ早くで向かってくれ」
「アルラインへも飛空戦艇は向かっているのか? ってかそれ大丈夫なのか?」
「しばらくは大丈夫だ。街に被害は出るだろうが、住民は既に大半が他の街へ避難させてある。
避難を拒んでいる住民も居たが、闘技場と王城内に避難済みだ。それに王城にも特殊結界を改良したものを張ってある。
何とか持ちこたえるくらいはできるだろう。
戦場は国境付近になることが予測されるが、もし街に強襲されても人的被害は防げるように防衛策はとっておいた」
「了解した」
帝国が動き出した。ここからは時間との勝負になりそうだ。
「みんな、帝国が動き出した。とりあえず、竜人族の村についたら最速で情報共有をする」
「了解っす。急ぐっすね!」
10分後、竜人族の里についた俺達は、早速情報共有を行う事にした。
竜人族は、既に戦闘態勢万全といった感じだ。老人までもがウズウズしている。
「なぁ、竜人族って戦闘狂なのか?」
「そういう訳でもないんっすけど、みんな里や仲間を守るために張り切ってる感じっすね」
「ファーヴニル、里長は?」
「今回は私が総指揮を任された。父は最前線で戦うと張り切っているよ。
ドレイクを除けば父がこの里で最強なんだ。遅れは取らないさ」
「そうか。こっちへは5隻の飛空戦艇が向かっているそうだ。作戦はどうする?」
「もちろん里を破壊されないために打って出る。
竜人族は作戦通り4チームに分けて陣形を組み、波状攻撃でブレスや魔法を撃てるだけ撃ってから後退だ。阿吽はドレイクに乗って遊撃に回ってくれ」
「了解した。俺達は、こちらを片付けたらすぐアルラインへ向かう。ただ、最低でも2隻の飛空戦艇がボットロックの基地にいるはずだ。ここを撃退したら里へ戻って備えておいてくれ」
「分かった」
ファーヴニルが号令をかけると子供と女性を残しすべての竜人族が【竜化】をした。
20体のドラゴンがこちらを向いている光景は圧巻の一言だ。
これは、過剰戦力なんじゃないかとも思ったが、敵は主砲一発で街の20%を破壊する攻撃用の魔導具まで装備している。慢心はダメだな。
するとルザルクから通信が入った。
「阿吽、宣戦布告が成された。こちらは地上でのぶつかり合いが始まりそうだ。
そっちは頼んだぞ、武運を祈る!」
「おう! ルザルクも死ぬんじゃねぇぞ!」
ファーヴニルの方を見ると通信が聞こえていたようだ。俺が頷くと全体に指示を出している。
ファーヴニルは作戦や指示が的確であり、里の者からの信頼も得ている。軍師としての素質もありそうだ。
「皆の者! たった今イブルディア帝国の宣戦布告が成された!
敵の目的は、この竜人族の里を壊滅させる事だそうだ……“随分舐められたもんだ”と、言わざるを得ない!
竜人族の強さ、帝国の兵士どもに見せつけてやろうぞ!!」
『『『『ギャルルロロォォォォ!!!』』』』
地響きが起こるほどのドラゴンたちの咆哮、その瞳の輝きは微塵も敗北を考えてなどいない強者のモノだ。
「各自ブレスを放ったら旋回し、敵の攻撃を回避しつつ陣形を整えよ! 負傷者が出た場合はペアになっている者がフォローする事、また撤退は各部隊長の指示に従え!
いいか、誰も死ぬことは許さない! この戦争の勝利は戦死者をゼロに留めることと、敵機を全て撃墜する事だ! 行くぞぉぉ!!」
ファーヴニルの
そして5体が1組となり陣形を作り北へ向かって飛び立った。その先頭に居る一際大きな巨体は里長のリンドヴルムだろう。
「んじゃ俺とドレイクも行くか! もしもの時のためにキヌ、シンク、ネルフィーは竜人族の里を守っていてくれ」
「ん。がんばってね」 「分かりました!」 「了解した」
竜化したドレイクに乗るとフワリと空中へと舞い上がる。
「っし! じゃあ、行ってくる!」
一気に速度を上げると先に飛び立ったドラゴン達にすぐに追いついた。
ドラゴン状態でのスピードも、進化したドレイクは群を抜いているようだ。
そのまま2時間程空を飛ぶと、前方から巨大な飛空艇がこちらに近付いてくるのがわかった。
竜人たちにも緊張感が走っている。
すでに宣戦布告はなされた後だ。いつ攻撃を仕掛けてきてもおかしくはない。
こちらは、ドラゴンたちのブレスの射程距離に入っていないようであり、ファーヴニルからの指示はまだなく、距離を縮めながら待機状態となっている。
すると敵軍の先頭を飛んでいる1隻の飛空戦艇の船首部が開口し、巨大な主砲が姿を現した。
「主砲がくるぞ! 回避だ!」
俺が咄嗟に叫ぶとドラゴンたちは素早く旋回しつつ散開し、回避動作に入る。
次の瞬間、飛空戦艇から柱のような光束が轟音と共に発射された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます