第67話 阿吽VSブライド①

~阿吽視点~


「わかった。その提案を受ける」


「そうこなくっちゃな」


『阿吽選手の提案が【デイトナ】に受け入れられたようです!

 それではこれより、【星覇】阿吽VS【デイトナ】ブライドの優勝決定戦を開始いたしまぁぁす!』


 さて、まずはブライドのステータスを鑑定するか……


 そう考えリング中央までゆっくりと進んでいく。


〈ステータス〉

【名前】ブライド・イシュロワ

【種族】魔人

【状態】

【レベル】隠蔽されています

【属性】火

【HP(体力)】隠蔽されています

【MP(魔力)】850/850

【STR(筋力)】隠蔽されています

【VIT(耐久)】隠蔽されています

【DEX(器用)】38

【INT(知力)】85

【AGI(敏捷)】隠蔽されています

【LUK(幸運)】18

【称号】魔ノ者との契約者

    剣帝

【スキル】

  隠蔽されています



 ……こんなステータス初めて見たぞ。隠蔽ってこうなるのか。


 ってか、一番隠さなきゃいけない所見えちゃってるけど……

 え? 隠蔽ってランダムなの!?


 いや、それよりもだ。種族が【魔人】ってどういうことだ。

 それに称号にある【魔ノ者との契約者】、これが魔族と密会していた理由……


 コイツからは色々聞きださなきゃならないな。まずは揺さぶりをかけてみるか。

 うーん、そうだな……無口なコイツを喋らせるには、やっぱり怒らせるのが一番手っ取り早い。


「ブライド、お前……実はそんなに強くないだろ?」


「……挑発か?」


「いや、だってさぁ……“そんなステータス”で俺に勝てると本気で思ってるの?」


「……貴様きさまっ、鑑定ができるのか!」


 はい、乗ってきたー。

 昔から秘密主義者だったからな。案外チョロいかもしれん。


「見えてるぜ? お前の見られたくない、“恥ずかしい部分”もな?

 いや、隠すなら普通ソコ隠すだろ。なに大事なトコだけ出してるんだよ。お前そういう趣味なの?」


「お前は……殺す!」


「あ、そういえばさー、魔剣フラム。マーダス殺して奪ったんだな」


「っ! 貴様どこまで知っている……」


「知りたい? 知りたいよね? 知られたらヤバいこと色々してるもんなぁ?」


「……お前が死ねば、何も問題ない」


「ほぉ? この試合会場では死んでも蘇生されるんだよな? ……お前こそ、何をしようとしてる」


『両者がリング中央で睨み合っている!! これは白熱した戦いが期待できそうだぁぁ!!

 試合開始のゴングまでもう間もなくです!!』


 もう少しで聞き出せるだけの準備が整う。ただ喋ってる時間もそんなになさそうだな。最後にダメ押しだけしとくか。


「あ、そうだ。一つ良いことを教えてやるよ。お前の秘密を知ってるのは、“俺だけ”だ」


「……そうか、なら話が早いな。そして賢明な判断だよ」


『試合、開始ぃぃぃ!!』


 マイケルのアナウンスと共にゴングが鳴り響く。

 ここからは実力勝負だ。ブライドは奥の手を隠し持っている気もする……最初は慎重にいくか。


 お互いが一歩後退しマジックバッグから武器を取り出す。ブライドの武器は、噂通り炎の魔剣。俺の右手には白鵺丸。

 2人の、動き出しは同時だった。


 武器に魔力を流しながら斬り合う。

 武器のレアリティは同じだろう。属性付与もできる。

 属性こそ違うものの、互いに似た性能の武器を使用している。


 数度の打ち合いの最後にブライドは【フレイムランス】を、俺は【雷槍】を発動。

 魔法同士がリング中央でぶつかり弾けた。


「思ったよりやるな。まだまだ全力は出していないがな……」


 ブライドの方から話しかけてきたな。 

 本気ではないようだが、戦闘に入ったことで興奮状態になりだしてるみたいだ。

 少しは口が軽くなってきているか? 


「ハッ、それは俺もだ。……なぁブライド、魔剣フラムをドラゴンに刺して暴走させたのはなんでなんだ? そこだけ分からないんだ」


「……そうだな。お前はどうせ殺すんだ。教えてやろう。単純なことだよ。レクリアという街、それにレクリアの領主が邪魔なんだ。俺がこの国を支配するためにはな」


「ステッドリウス伯爵が?」


「あぁ、ヤツは優秀だ。……だが、俺の指示に全く従わないどころか、第二王子の派閥に付きやがった。それにレクリアの冒険者ギルドマスターだってそうだ。辺境にありながらアルラインの冒険者ギルドと同等の発言力を持っている。この二人の権力を失墜させられるなら、多少街の被害があっても十分な利がある」


「……お前さ、思った以上にバカなのか? そんなことしたら街の自治機能が壊滅して、近くにあるミラルダに住民が押し寄せる。その受け入れ態勢なんか作ってなかっただろ」


「考えてはいたさ。ある程度被害が出たら、俺が出ていってドラゴンを倒せば良い。そうすれば二人の権力は落ち、俺への借りもできる。

 それなのに……お前らが事態を収めてくれたおかげで計画が台無しだ!」


「それは良かった。お前みたいなクズ野郎に一泡吹かせられたんだからな」


「ほざけ! 【燎原之火りょうげんのひ】、【フレイムブレイド】」


 ブライドはバフスキルをかけると、赤茶色に揺らめくオーラを身にまとい、魔力でできた炎の剣を1本発現させ左手に持った。

 二刀流ってやつか。


「【雷鼓】」


 俺もバフをかけると背中に9つの雷太鼓が発現する。

 再び同時に地を蹴り切り結ぶ。スピードは現在互角、ブライドは手数が増えてはいるが、二刀流となったことで逆に攻撃が単調となり、隙を見つけやすくなる。


――キン、キン、シュッ、キィン、ッシュッ!


 弾く、弾く、避ける、弾く、躱す。

 徐々に攻撃のパターンも見切れるようになり、連撃の最後を紙一重で躱し背後に回れたことにより、ブライドに大きな隙が生まれた。


(今っ!)


 納刀してからの居合一閃。

 雷光が横一線に走ると、ブライドの胸部は大きく切り裂かれ、大量の血が噴き出す。


「うっぐっ! お前はいったい、何者なんだ! っくそ、クソォォぉオオ!!」


 急にブライドの情緒が不安定になってきた。これは早めに仕留めないと、何をするか……


「壊してやる、コワシてヤる、壊シテ、コワして……。全部、ブッ壊シテヤルゥ! 【魔人化ァァァ】!!」


 ドクンッ! と一度ブライドの身体振るえたかと思うと、その体躯は一回り大きくなり、目が真っ赤に染まる。


 そして、背中から生えた黒い羽を大きく羽ばたかせると、フワリと空中に舞い上がった。

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