第62話 【先鋒戦】ドレイクVSロミリオ



『序列1位の座を6年間も守り続けている【デイトナ】!

 昨年の決勝戦、【豪炎のブライド】選手が放った強烈な一撃は、記憶に鮮明に刻まれております!

 今年より【無音弓】ロミリオ選手を加え、より一層強さに磨きがかかったチーム構成! 今日はどんな試合を見せてくれるんだぁぁぁ!? まもなく試合開始のゴングです!』


 【デイトナ】の選手紹介も終わり、相手の先鋒ロミリオがリングへと上がってきた。


「んじゃ、行ってくるっす!」


「おう! 派手にぶちかませ!」


 ゆっくりとドレイクもリングに上がっていくと会場の熱気は上がっていく。


 リングの中央に両者が揃い、互いに睨み合う。先に口を開いたのはドレイクだった。


「ロミリオ、お前なんでエルフ達を裏切ったんだ?」


 ドレイクの言葉に、ロミリオは目を見開いた。


「貴様……なぜそれを知っている」


「っは! やっぱりか。どうしようもねぇクズ野郎じゃねぇか。長いこと生きてても、性根は腐るんだな」


「……それを知っているからには、タダで済むと思うなよ」


 ロミリオは距離をとって弓を手に持つ。ドレイクも赤鬼の金棒を右手に持ち、開始位置まで後退すると試合開始のゴングが鳴り響いた。


 ゴングと同時にロミリオは矢を放つが、ドレイクは【ウィンドプレッシャー】でその矢を落とす。そして横方向への移動を挟みながら一気に距離を詰める。

 それに合わせてロミリオもレイピアを手に取り突き出すが、ドレイクは躱しながら赤鬼の金棒をロミリオに向け薙ぎ払う。

 スピードは互角、パワーはドレイクが有利だな。


「チッ! 【ウィンドフィルム】」


 ロミリオは咄嗟に風魔法でドレイクの攻撃を減退させ、両腕でのガードで持ち堪えた。


「【ウィンドカッター】」


「【ウィンドカッター】」


 互いに中距離からウィンドカッターを放つが、万全な態勢から放たれたドレイクの魔法の方がわずかに優勢のようだ。


 ロミリオは飛び退くと空中に舞い上がりながら矢を4連射する。


 ドレイクも咄嗟に赤鬼の金棒をマジックバッグに収納し、躱しながら飛んできた矢を叩き落とすが、突進してきたロミリオのレイピアが左腕を掠り、血が流れる。

 だが、攻撃を当てたのはロミリオだが、隙ができたのもロミリオだな。


 ドレイクはダメージを受けること前提で動いていたようだ。右手でロミリオの服を掴むと、そのままリングに叩きつけた。


「グハッ!」


「なぁ、どうして裏切ったりなんかしたんだ。同胞が奴隷にされちまうんだぞ?」


「くそっ。……この国じゃあエルフはもう終わってるんだ。これからは人間の世界で力を持ったヤツらと生きていく時代なんだ! なのに、誰も俺の言葉を理解してなんかくれなかった!」


「だから裏切って、権力があるヤツの駒になり自分だけ良い暮らしをしていくってか?」


「お前に、お前なんかに俺の気持ちは分からない!!」


「いや、なんとなく分かっちまうんだよ。俺も里を追放された身だ。自暴自棄じぼうじきになっていたこともある……でもな、それでいいのか? お前の誇りはそんな簡単に捨てて良いものだったのか?」


「……もう後戻りなんかできないんだ! うおぉぉぉ!」


 ロミリオが自分を中心に【サイクロン】を発動させドレイクを吹き飛ばす。


「俺よりずっと年上のくせに、しょうもねぇ野郎だな。しっかりと身体に教え込んでやる……誇りの強さをなぁ!【装風】、【サイクロン】」


 ドレイクは耐久値と敏捷値をバフで底上げし、ロミリオの起こしている魔法に向けて自身も同じ魔法を放つ。すると、周囲を暴れまわっていた風が弾け、リング上を暴風が駆け抜けた。


 それを狙っていたかのように、身を低くかがめ風が収まるタイミングを見計らうと、ドレイクは上空へ向けて飛び上がる。


「さて、ロミリオの性根ごと叩き潰してやるか」


 一瞬ドレイクを見失ったロミリオだったが、上空から高速で落下しているドレイクを発見し、咄嗟に【ウィンドフィルム】と【ウィンドウォール】で防御策をとる。

 しかしドレイクは受けるダメージを無視し、そのまま突っ込みながら【ウィンドプレッシャー】でロミリオの動きを封じると、落下の勢いそのままにロミリオの防御魔法の上から赤鬼の金棒を叩き込み、ロミリオの頭部を叩き割った。


『凄まじい風魔法同士の応酬! その勝者は……【星覇】ドレイクゥゥゥ!!!』


 マイケルの勝利宣言が行われ、ドレイクは倒れているロミリオから視線を外し戻ってきた。


「勝ち星一つ目取ってきたっすよ! あ、あと会話聞こえてました?」


「おう、よくやった! 会話も聞こえてたぞ。やっぱりネルフィーの故郷を襲ったのはロミリオが関係していたな」


「私はロミリオのことを知らない。どこか別の里の者なのだろう……しかし、許せん……」


「ネルフィーの気持ちは俺も同じだ。必ず裁きを受けてもらう。すまんが、それまで耐えてくれ」


「分かっている。そのために次の試合、必ず勝ってくる」


「ネルフィーねぇさん、期待してるっすよ!」


 ロミリオが担架で運び出されると、ネルフィーがリングへと上がっていった。それに合わせ相手の次鋒、癒術師のダリアスもリングへと歩みを進める。


『続きまして次鋒戦、【星覇】ネルフィーVS【デイトナ】ダリアスの試合を開始いたします!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る