第61話 マイケルパフォーマンス
決勝戦当日、午前中に3位決定戦が行われており、俺達は控室での観戦を行なっていたが、禅が【ソードマスター】を5人抜きし、見事序列3位を決めていた。
そして現在、決勝戦開始予定時刻の数分前となっている。
「さて、あと少しで決勝戦だ。みんな準備はいいか?」
「ん……バッチリ」
「相手は、14年前とはいえ阿吽様を裏切った愚か者達でございます。本気で潰して参ります」
「俺の相手はエルフのロミリオっすね! 昨日見た試合だとかなりやる感じっすけど、絶対勝ってくるっす」
「私はこの【星覇】クランを本当に誇りに思っている。私の出せる全力で勝ち星を取ってこよう!」
「よーし! んじゃあお前ら……思いっきり暴れるぞ!!」
控室から入場口へ歩き出す。それに合わせて実況者マイケルのマイクパフォーマンスが始まった。
『皆様、お待たせいたしましたぁ! これよりクラン対抗武闘大会の決勝戦を開始いたしまぁぁす!!
最初に姿を現したのは【星覇】!!
新設クランでありながらその戦闘力は圧倒的の一言! 初戦から1試合の負けもなく全試合完封勝利で決勝戦までコマを進めました!
見てください、そして聞いてください、この大・歓・声を!!
亜人、獣人……もはや、そんな事は関係ないと言わんばかりの声援です!! 私は感動のあまり、既に涙で前が見えません!』
観客の大声援が鳴りやまない……
今のマイクパフォーマンスでこの国の“人間至上主義”を崩す一撃目を入れやがった! マイケル、マジで最高かよ!
『さらに【星覇】は、この大会で“異名”が付けられた選手が多数在籍しております。初出場という事もあり、
まず先鋒は、ドレイク・ベレスティ選手! 初戦を4人抜きし、見事勝利を収めたわけですが……試合後【レッドネイル】は解散する事となったようです!
圧倒的な力の差を見せつけ、武具や肉体のみならずメンタルやクランまでも破壊する! 戦うその姿はまさに、異名どおり【破壊の
……余談ではありますが、試合観戦した一部の熱狂的な女性ファン達は「私も壊して!」と叫んでいたそうです! この男は、いったいどこまで破壊すれば気が済むんだぁぁぁ!!』
「あ、兄貴……恥ずかしいっす!」
「まぁこれは仕方ない、諦めろ」
うん、最後の一文はともかく……ドレイクの異名はイメージに合ってるな!
『次鋒を務めるのはネルフィー・ガーデン選手!
第二回戦の一試合目で歴代の最速決着の記録を大幅に更新した選手でございます!
対戦相手からは、「いつの間にか姿を消している」、「気が付いたら額に矢が刺さっていた」と話しており、冒険者の間では【
「ん? 異名が変わっているな」
「そうなのか?」
「以前は【黒い狩人】と呼ばれていた」
「でもさ、めちゃくちゃカッコいい異名付いたじゃねぇか」
「私はなんでも構わないのだが……フフッ、男は誰もがそういうのが好きなんだな」
「そうだな! それに、そもそも異名は実力の証明みたいなモンだ!」
ネルフィーは、あの試合では異名が変わるだけの実力を見せつけていた。
こうなってくるとキヌとシンクがどんな異名が付いたのか楽しみだ!
『中堅を担うのはシンク選手!
オークションで競り落とした“
しかも、その対戦相手はSランク冒険者が4人も在籍している昨年序列4位のクランでございます!
カウンターや魔法を巧みに操り、攻守ともに優れた技術で戦うその姿はまさに【
試合解説をした私も、映像を確認するまでは全く何が起きたか分かりませんでした!
個人的に私が一番気になっている選手でございます!』
シンクは華麗にお辞儀をしてマイクパフォーマンスに応える。
【変幻自在】これも確かに的を射ている。
仲間以外は知らないだろうが、見た目だけなら種族まで変える事ができるっていうのは、シンクを除いて他に居ないだろう。
『続いて副将はキヌ選手!
その愛らしい見た目からは想像もつかない魔力・知力の持ち主!
精密な魔力操作により7本のフレイムブレイドを発現させ、見事に操ってみせました!
さらに自身で回復魔法まで習得しているという規格外っぷり! 昨年序列2位ゼン選手を圧倒し、決勝進出を勝ち取った!
まさに【
「阿吽……炎姫、どう?」
「キヌらしくて良い異名だ。強くて可愛い感じが出てるんじゃないか?」
「ん……阿吽が気に入ったなら、いい……」
『そして最後は大将、阿吽選手!
今までその戦いは見ておりませんが、一説によるとシンク選手、キヌ選手と3人でドラゴンを撃退したという話があります! 今日の大将戦、目が離せないぞぉ!!』
……あ、俺だけ無いの?
いや、良いんだよ。別にいじけてなんかいない。
少し期待しただけだ、うん……
……大将戦、全力で暴れてやる!
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