第60話 友達
「二つ目のお願いなんだが……その前に、ルザルク殿下の個人的な見解を聞きたい。
奴隷制度や亜人・獣人に対する差別をどう考えてる? ……これは
「……そうだね。奴隷制度に関しては完全に時代遅れだ。
犯罪奴隷に関しても、奴隷にして放置するのではなく、しっかりと国が罰を与え、その罪を裁くことが必要だ。
それに奴隷なんて制度があるから、この国の黒い部分は完全に消す事ができないと考えている。
亜人差別だってそうだ。阿吽たちのように有能で強い志をもった者たちもたくさんいる。人間が至上なんて考え方も気に入らない。
本当なら王族がこんな事を言ってはいけないのかもしれないがね……。もともと奴隷制度はこの国の王族が始めた制度なんだから……。
しかし、だからこそその制度を撤廃できるのも王族のみだと思っているよ」
「よく分かった。なら二つ目のお願いだ。ルザルク第二王子、あんたがこの国の国王になってくれ」
その言葉にルザルク第二王子は目を丸くする。
「さっき殿下が言った事が俺の考え方と一致している。
それにこの国の上層部や貴族が変わらなければこの問題は永遠に終わらない。それを終わらせてくれ、ルザルク殿下」
「ハハハハ! 君は、本当に面白い男だな! 今までで一番“嬉しいお願い”だよ。
分かった。そのお願いしかと聞き届けよう! その代わりと言ってはなんだが、私からももう一つお願いがある。聞いてくれないだろうか」
「なんだ?」
「僕と友達になってくれ。今までこんな風に会話がしたいと思い焦がれていたんだ」
「ん? もう
「ブフッ……ハーッハッハッハ! そうか、これが友達というのか!
フフッ……そうだな。では、これからも色々意見を言ってほしい。阿吽の考え方は僕とよく似ている。
それに核心を突いたことを言ってくれる。僕にはそんな友が必要だ。
それと、非公式の場では僕の事は“ルザルク”と呼んでくれ。敬称は不要だ。友達なんだからな!」
「そんなことか、わかった。でも、俺レジェンダに怒られないか?」
「殿下のお決めになった事で、私が怒るなんてことはございません。これから殿下の良き友として、お願い申し上げます」
「おう! んじゃ、明後日の決勝戦楽しんでくれ! じゃあな!」
◇ ◇ ◇ ◇
『歌う小犬亭』へ着くと部屋に4人が集まっていた。もう0時を過ぎているが、皆待っていてくれたらしい。この場にはネルフィーも居るし、ルザルクとの話をしても身内以外の誰かに聞かれている心配はないだろう。
「阿吽……おかえり。どうだった?」
「そうだな。かなり良い感じに話が進んだぞ。せっかく待っていてくれたし今から情報共有だけしちゃってもいいか?」
「そっすね! 気になって寝られないっすもん!」
チラッとネルフィーを見ると無言で頷いている。大丈夫そうだな。
「そっか、じゃあ要点だけまとめて話すことにするよ。まず、俺とルザルクが
「いや、サラッと流そうとしましたけど、王子とダチっすか!? それめちゃくちゃすげぇことっすよ!」
「ん? ダチくらいなるだろ。色々考え方とか似てたしな」
「兄貴、マジでパネェっす……」
「そんな事より続けるぞ? ルザルクはある程度だが、奴隷商と貴族の癒着や闇営業について知っていた。
その中心となっている貴族が、現在序列1位【デイトナ】の4人の家だろう。そして、その貴族達は第一王子の派閥に入っている。
今回の序列戦で俺達が優勝し、ヤツらの悪行をルザルクと共に断罪する事によって第一王子派閥を衰退させ、ルザルクを王位に押し上げる目論見もある」
「なんか、すげぇスケールデカくなりましたね」
「ん。でも私たちがやる事は変わらない」
「その通りだな。俺たちはこの序列戦で力を見せつけ、優勝する。
それによって人間至上主義ってクソみたいな風習をぶっ潰す第一歩にする。これはルザルクも同じ考えだろう。
さらに、ルザルクがいずれ王になれば腐った貴族達も一掃できるってわけだ」
「私や奴隷商に捕まっていた者達が【星覇】に入ってからまだ一週間程度だぞ……ここまで解決の道筋が立つものなのか……」
「さすが、阿吽様でございます」
「ん。……明後日の決勝戦、観衆に私達の本気を見せる」
「そうだな! 全員思いっきり暴れてやろうぜ!」
こうして情報共有を終え、翌日エントリーシートを作成した。
そして『アルト王国の大変革』の発端となるクラン対抗武闘大会決勝戦の朝を迎える。
〈エントリーシート〉
【星覇】
先鋒:ドレイク
次鋒:ネルフィー
中堅:
副将:
大将:
【デイトナ】
先鋒:ロミリオ
次鋒:ダリアス
中堅:メロリア
副将:エリア
大将:ブライド
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