第50話 ダークエルフ
序列戦の初戦から一夜明けた翌朝、ベッドから起き上がろうとして、キヌがガッチリと俺に抱き着いているのに気付いた。
一昨日、序列戦の開催前日に侮蔑・罵倒してきた【レッドネイル】を締め上げてからというもの、キヌの密接度は飛躍的に上がっている。おそらく「俺の大事な」と言ったことが要因だろう。
これに関してはヤツらに感謝しなければならないかもしれない……。
ただ、次また同じようなことが起きたら、その時は確実にゾンビの餌にしてやる。
「ん……おはよ、阿吽」
「起きたか? 俺はそろそろ起きるが、キヌはどうする?」
「……おきる」
最近分かったのだが、キヌは朝が弱い。
そしてベッドから起き上がった時に、寝癖が付いてボーっとしている姿が最高に可愛い。絵画にしてフォレノワールに飾っておきたいくらいだ。
……どこかに良い絵師は居ないか……いや、でもこの姿を誰かに見せたくない。どうしたものか。
俺がジレンマに
「阿吽、ごはん……」
「んだな、食堂行くか!」
食堂に着くと他の3人は既に食堂におり、朝食の準備を済ませて俺たちを待っていたようだ。
「すまん、待ってたか?」
「おはようございます。阿吽様、キヌ様」
「おはようっす! 兄貴、シンクねぇさんって凄すぎないっすか? 毎回、兄貴達が食堂に来るタイミングでピッタリ食事の用意が整うんっすよ!」
「何を言っているのですか? メイドならこれくらいできて当然でございます」
「いや、それはさすがに分かんないっすよ……」
ドレイクが半ば呆れたようにシンクに言葉を返している傍ら、ネルフィーが待ち構えていたかのように話しかけてきた。
「阿吽、ちょっと良いか?」
「ん? ネルフィーどうした?」
「食事をとりながらで構わないのだが、私の戦闘方法について話しておこうと思ったのだ。今日はシンクと私の装備を一緒に見に行ってくれるのだろう? 先に伝えておこうと思っていたんだが……」
「確かにな。ただ、ここだと周囲に人も居るし、食事が終わってから俺たちの部屋で話そう」
「それもそうだな。では、そうする」
そうして朝食を取り終わって部屋に集まると、早速ネルフィーが口を開いた。
「戦闘方法を話す前に私のステータスを見てほしい」
「おう、ちょっと手出してくれ。ステータス」
〈ステータス〉
【名前】ネルフィー・ガーデン
【種族】ダークエルフ
【状態】
【レベル】47
【属性】樹
【HP(体力)】2900/2900
【MP(魔力)】600/600
【STR(筋力)】40
【VIT(耐久)】32
【DEX(器用)】70
【INT(知力)】60
【AGI(敏捷)】95
【LUK(幸運)】25
【称号】従属者
【スキル】
・
・リーフカッター:樹属性攻撃魔法(MP消費30)
・フラワーポイズン(Lv3):毒、痺れ、睡眠の任意の毒を生成(MP消費30)
・ポイズンエンチャント:生成した毒を武器に付加し攻撃時に状態異常を引き起こす確率を上げる(MP消費40)
・観察眼:罠の発見、敵の弱点を見抜く
・隠密:気配を遮断し対象に気付かれにくくなる。一度認識された状態では効果が薄い。
・弓術(Lv.4):弓での攻撃時に命中とダメージ補正
・短剣術(Lv.2):短剣での攻撃時にクリティカルヒット率とダメージ補正
「ど、どうだろうか? 私は……阿吽達の足手まといにならないか?」
あー、そういう事か。なんか焦ってるなーと思っていたが、昨日のドレイクの戦いを見て思うところがあったんだろう。
それにしても超暗殺特化型のステータスだな。ここまで暗殺に必要なものが揃っているのは奇跡的だ。
しかもDEXが相当高く、弓や投げナイフなど遠距離攻撃の命中率も相当良さそうなのが伺える。
「ネルフィーで足手まといなら誰がパーティーに入れるんだよ。それにしても超特化型だな! 凄いぞこれは……」
「そ、そうか? なら安心した。スキルが特化しているのは種族と年齢が関係していると思う。もともとダークエルフは筋力が上がりにくいらしく、種族単位で得意な事を突き詰めた結果、私のようなステータスになる者が多くなったと聞く。もちろん筋力が高い者も居るがごく稀だな。それに……私は、今年102歳だ」
「……え? 確かに長寿種って聞いてはいたが、どう見ても17~18歳だろ」
「エルフやダークエルフ、ドワーフは種族の総数が少ない代わりに長寿だからな。人間でいう15歳~20歳くらいの身体構造の期間が長いんだ。長寿である長所としては、スキルの習得に時間をかけられることだ。その分ステータスの成長は、人間や獣人ほど早くはないがな」
「へぇ、そういう事なんだな」
確かに人間はそんな簡単にスキルが増えたりしない。俺もゾンビになった時にスキルが増えてかなり驚いたし……。
それにしたってネルフィーは、相当な努力をしたのだろう。
「あと……ダークエルフは、今ではほとんどこの世に居ない種族だ。
『2000年前の人魔大戦』以降にダークエルフが魔族側ではないかという風評により、一族が迫害を受けた歴史があると聞いたことがあるのだが……それは一旦置いておこう。
私の育った里では、幼少期より少しずつ家族やその里の仲間たちに師事し、スキルを習うという風習がある。
私も生まれてから50年は色々な師匠に付いてスキルや戦い方を習ったが、もともと我が家は諜報や斥候に長けた一家だったんだ。だから私の習得しているスキルはこのようになっている」
「このステータスからいくと、武器は弓と短剣か?」
「その通りだ。普段のクエストでは基本的に矢にエンチャントで毒の追加効果を付け、バレないように隠密状態から仕留めている。もし敵に見つかった場合は、近距離と遠距離を駆使して攻撃を受けないように戦っていた。しかし大会では隠密状態にはなれないだろう。普段の力が出ないかもしれない……」
「あー、だから焦ってたのか」
「それも……ある。だが、実は……なかなか皆の輪の中に入れないのではと……。
ここ20年ほどは、基本的に単独行動だった。だから、あまり話し上手ではないのだ。それに私自身の事をみんなに知ってもらいたいと……」
「ん? もう輪の中に入ってるだろ。それに無理してまでは話す必要もないぞ? 話したい時に話せばいい。信頼しているのは変わりないしな。必要な時は今みたいにちゃんと話してくれるんだろうし」
「阿吽は、本当に“人たらし”なヤツだ……人が言われたいセリフを恥ずかしげもなく直球で言ってくる」
「ん。阿吽は……仲間の事を最優先に考えてる。だから、私たちも阿吽の事を最優先に考える」
「そうだな。話してみてハッキリ分かった。それなら私も、背伸びせず一緒に居させてもらうよ。もちろん仲間を最優先するのは私も同感だからな」
うん。良い表情するようになったな。俺もソロが長かったし、人間の時には同じことで悩んでたからネルフィーの気持ちはよく分かる。
よし、んじゃこれからみんなで、買い物といきますか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます