第33話 ドラゴン騒ぎの事後始末
ドレイクのステータスを確認し終えると、スパルズと【幻想の春風】の4人が馬に乗って駆けてきた。
「阿吽、大丈夫か! ドラゴンの姿が見えないが、どこへ行ったんだ!?」
「あー。色々あったんだが、端的に説明するとあの黒いドラゴンは、そこにいる竜人族のドレイクが竜化した姿で、ドレイクは『魔剣フラム』によって狂暴化させられてたらしい。背中に刺さっていた魔剣を抜いたら竜人の姿に戻ったんだ。
あと、魔剣は破壊して、ドレイクは俺たちの仲間になった」
「ちょっと待て、色々理解が追い付かないんだが……」
するとドレイクがスッと前に出て頭を下げた。
「俺が不甲斐ないせいで暴走し、お仲間を負傷させてしまい、申し訳ありませんでした!」
その姿に、俺を含め全員が唖然としてしまった。
しかし【幻想の春風】からの印象は大きく改善されたようだ。
「いえ、幸い死者は出ていませんし、重傷であったメンバーのグレイズも、阿吽さん達や治療院の方々のおかげで回復しました。
また、阿吽さんのお話では魔剣によって狂暴化させられていたとか……それが本当ならあなたも被害者という事になります。
謝罪はしていただけましたし、もう
「本当に申し訳ありませんでした。
阿吽の兄貴達に止めてもらわなければ街の人も傷付けていたっす。
もっと強くなって、この恩をお返しいたします!」
奇跡的に死者が出ていないのは安心した。それによって、レクリアの住人や冒険者達からドレイクを受け入れてもらえるかどうかにも大きく関わってくる。ここでの話し合いは非公式ではあるが、ギルドマスターが居るというのが大きい。スパルズも味方に付けてしまおう。
「スパルズ、これがその魔剣フラムだ。ドレイクの話では寝ているところを赤髪の男に刺されたという事だが、心当たりはないか?」
「赤髪の男というだけでは、さすがに分からんな。
この魔剣は預かってもいいか? 王都への報告の時に必要になりそうだ。
まぁドレイクは被害者って事で報告しとくよ。阿吽に免じてな」
「さすがスパルズだ、分かってるね」
「やめろよ。お前らは、レクリアを守るために戦地に行ってくれただけじゃなく、事態を収拾してくれたんだ。
これで全部ドレイクのせいにしたんじゃ、お前らに顔向けできねぇ。
あと報酬の件についてはまた後程話をさせてくれ。
とりあえず俺達は一足先に街に戻ってるからな。お前らも戻ったら冒険者ギルドに顔を出してくれ」
スパルズはそう言うと馬にまたがり、幻想の春風と共にレクリアの街に帰っていった。
「俺達は、もう少し狩りをしてから帰ろう。実は、俺がもうすぐ進化しそうなんだ。
あ、ドレイクにはまた後で俺たちのこと説明するよ」
「そういうことでしたら、わたくしとドレイクだけ先にフォレノワールに帰還させていただいてよろしいでしょうか。ドレイクに諸々説明をしておきます」
「そうか。なら頼む。俺とキヌは少し狩りをしたらレクリアのギルドに寄ってから帰還する。シンク、ドレイクの事任せるが、あんまり虐めてやんなよ?」
「承知いたしました。ドレイク、行きますよ」
「了解っす、シンクねぇさん!」
さてと、んじゃモルフィアの森でサクッとレベル上げちゃいますか!
そこから俺は、キヌと森を探索しながらビッグスコーピオンやグリフォンなどの赤の渓谷を住処にしているはずのモンスターを討伐し、事後処理とレベル上げを行なった結果、俺はレベル50となり無事進化をした。
今回の進化ではステータスが全体的に底上げがされ、スキルに関しても強化された。
〈ステータス〉
【名前】百目鬼 阿吽
【種族】
【状態】
【レベル】50
【属性】雷・闇
【HP(体力)】5300/5300
【MP(魔力)】1160/1160
【STR(筋力)】120
【VIT(耐久)】55
【DEX(器用)】20
【INT(知力)】116
【AGI(敏捷)】120
【LUK(幸運)】35
【称号】迷宮の支配者Ⅱ
【スキル】
・鉄之胃袋
・痛覚耐性
・体術(Lv.3)
・大食漢
・品評眼→鑑定眼:動植物の鑑定も可能。隠蔽されているステータスは鑑定不可
・迅雷→疾風迅雷:5分間STRとAGIが150%アップ 攻撃に雷属性付与(MP消費70)
・雷玉
・雷鼓
・空舞
・涅哩底王
・雷縛檻:雷属性捕縛魔法(MP消費60)
・雷槍:雷属性攻撃魔法(MP消費40)
・探知:周囲の地形や動植物を探知できる
――――――――――――――――――――
〈装備品〉
・赤鬼の金棒
・秘匿のピアス
・阿久良王和装一式
――――――――――――――――――――
正直、ステータスだけで見ればSランク冒険者の中でも上位となっているだろう。というか闇属性の魔法を一切覚えないのは何かあるのだろうか……わからん。
その後、レクリアの街に戻ったのだが……西門に民衆が集まっており、街に入った途端盛大に感謝された。
「黒の霹靂! 街を救ってくれてありがとう!!」
「お前らは命の恩人だ!」
「ありがたや、ありがたやぁ」
「キャー! 阿吽様ぁ! こっち向いてぇ!!」
「キ……キヌたん。ハァハァ……」
おい、最後の奴出てこい。炭にしてやる!
まぁそれは置いといて、どうやらドラゴンが西門からも見えており、さらにスパルズと【幻想の春風】が街に戻った際に、『【黒の霹靂】というパーティーが事態を収拾させた』と民衆に伝えたことでレクリアの街で英雄のように祭り上げられたらしい。
誰も俺の額に生えた角を見ても怖がったり嫌悪感を出している人は居ない。最近は服装も相まって悪目立ちしていたが、今回の件で恐怖感は全て払拭されたようだ。
集まっている民衆をギルドの職員や一部の冒険者が押し除け、道を作ってくれたお陰でなんとか冒険者ギルドまで辿り着き、そのままギルドマスターの部屋に入ると、スパルズがニヤけながら迎えてくれた。
「よう英雄、意外と時間かかったな」
「誰かさんが全部俺たちの手柄にしたせいでなー。揉みくちゃにされたぞ」
「ん。ひどい目にあった」
「まぁそう言うなって。ドレイクをパーティーに入れるってんなら、これぐらいしておかないと後々面倒になるぞ?」
「そうかもしれんけどなぁ。何か裏の意図を感じるわ」
「ガッハッハ! 悪いようにはしない。あと王都アルラインとミラルダにも今回の件を報告しといたぞ!
報酬はクランの立ち上げの件と合わせて1週間ほど時間が欲しいそうだ。悪いが少し待ってくれ」
「分かった。なら1週間後にまた来る。
あー、そうだ。蒼緑の平原の中心に獣人族がプレンヌヴェルトっていう新しい村を作ってるんだ。スタンピードでニャハル村が潰されちまったからな。
俺たちもソコに居るから連絡をしたいときは獣人族代表のバルバルに連絡をよこしてくれ」
「あぁ。そういえば冒険者達がそんな事言ってたな。なら連絡したいときはプレンヌヴェルトに早馬を送ることにする」
よし、さり気なくプレンヌヴェルトの事もスパルズに伝えられたな。
「おう、んじゃまた一週間後にな」
「ちょっと待ってくれ。実はもう一つ用件があるんだ」
「ん? まだあるのか?」
「いや実はな、レクリア領主のステッドリウス伯爵がお前らに会いたいんだと。今から領主の邸宅に行ってもらってもいいか?」
「んー、貴族ってのは苦手なんだが……行かなきゃダメなんだろ?」
「さすがにこればっかりは拒否できんな。なぁに、貴族だが良い方だ。冒険者に対しても理解が深い、礼が言いたいだけだと思うからな。顔出すだけで良い」
「わかったよ。今から向かう。伯爵邸ってのは街の中心にある一番デカい建物でいいのか?」
「あぁ。そこだ。門番に【黒の霹靂】って言えば通してもらえる」
「んじゃ行ってくるわ」
それから俺とキヌは、また揉みくちゃにされながら街中を移動し、何とか伯爵邸へと到着した。
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