第32話 ドラゴン捕獲大作戦
ドラゴンが空から墜落したタイミングでキヌから念話が入ってきた。
≪阿吽、シンク、このドラゴン様子がおかしい……≫
≪ん? どういうことだ?≫
≪すごく、苦しそう……。自分の意志で動けていないみたい……≫
≪マジか。そうなると厄介だな……どんな攻撃を仕掛けてくるか予想がつきにくい≫
≪助けて……あげられないかな?≫
≪うーん、そうだな。とりあえず原因を探りながら戦闘を続けよう。原因が分かれば助けられるかもしれん。
キヌはそのまま翼へ攻撃を集中させてくれ、シンクも挑発は継続。俺は接近してドラゴンの状態を探ってくる≫
≪ん。ごめんね、無理言って≫
≪お任せください≫
「【雷鼓】、【迅雷】」
バフを重ね掛け、最高速でドラゴンの真上へ移動、後頭部へ魔法攻撃をしながら背中へ着地した。
「ん? あれは……」
ドラゴンの背中に1本の剣が突き刺さり鱗や皮膚と同化しているように見える。【品評眼】で鑑定をしてみると『魔剣フラム』となっていた。
「魔剣フラム……だと?」
鑑定結果に驚愕しているとドラゴンが跳ね上がり、俺は振り落とされてしまった。
≪キヌ、シンク、原因がわかったかもしれん≫
≪何か見つけた?≫
≪あぁ、背中に魔剣が刺さっている。あの剣を破壊、もしくは引き抜くことができればドラゴンの暴走は止まる可能性がある。
ただ、一時的にでも動きを止めなきゃいけないな≫
≪じゃあ……可哀想だけど気絶させる?≫
≪うーん、あ……そうだ! ちょっと準備するから二人は攻撃を引き付けておいてくれ≫
そう指示を出すと、俺はマジックバッグから大きめの麻袋を取り出し、常闇の森で大量に採取しておいた『アンミンダケ』をその麻袋に詰められるだけ詰め込んだ。
あとはこいつを無理やりにでも食わせられれば……
ちょっと危険だが、やるしかないか。
≪2人とも攻撃をやめて、俺にターゲットが来るようにしてくれ。噛みつき攻撃が来たタイミングで口の中に催眠効果のあるキノコを大量に突っ込んでくる≫
≪わかった。サポートに徹する≫
≪了解いたしました≫
2人に指示を出すと、なるべく顔の近くを空舞で跳び回り、【雷玉】を何発か当てる。
そしてまた顔の周りを跳び回る。
『ギャロォォォォウ!!!』
執拗に顔の周りを飛び回っていると、ドラゴンは噛みつき攻撃を仕掛けてきた。
(今だっ!!)
マジックバッグからアンミンダケの詰まった麻袋を取り出し、大きく開いた口の中へ投げ込むと、空舞で噛みつき攻撃を回避して二人の近くに着地した。
「うまくいった?」
「バッチリ飲み込んだはずだ。あとは攻撃を耐えながら雷玉を中心に攻撃して麻痺を狙ってみる」
「では、わたくしは挑発でターゲットを分散しておきます」
「ん。回復は任せて」
それから10分ほど攻防を繰り返していくと、ドラゴンは少しずつ動きが緩慢になり、ついにはうつ伏せに倒れ込み、グゥグゥと寝息を立てだした。
「ふぅ。ちゃんと眠ったようだな。剣を引っこ抜くから少し離れててくれ」
ドラゴンの背中に上り、魔剣を引き抜こうとするが皮膚と一体化しているためなかなか引き抜けない。
「これは全力で引き抜くか。【雷鼓】、【迅雷】」
バフを重ね掛けし、筋力を最大まで上昇させる。そして、
「うおぉぉるぅぅあぁぁぁぁぁ!!!!」
――ブチブチブチッ、ブッシュ!
『ギャルルルロォォォォォ!!??』
思いっきり引き抜くとドラゴンは飛び上がりながら大きな悲鳴をあげ、そのまま気絶した。
すると突然、右手に持っていた魔剣にMPが吸われ始め、頭の中に黒い感情が入り込んできた。
≪ギャーッハッハッハ!! 血ヲ、モット吸ワセロォォ!!!≫
「なんだこの魔剣!?」
俺は咄嗟に魔剣フラムを地面へ突き刺し、飛び退いた。
地面に深々と刺さった魔剣からは、黒いオーラが溢れている。
「うわ、びっくりしたぁ!!」
「どうしたの?」
「急に意識を乗っ取られかけた……こんな危険な魔剣だったのか……」
「という事は……やはりあの魔剣が、ドラゴンが暴走した原因だったのですね」
「ん。どうする?」
「この魔剣は危険すぎる……とりあえず、破壊だな」
そう言うと、俺はマジックバッグから赤鬼の金棒を取り出し、地面に突き刺した魔剣フラム目掛けて力いっぱいフルスイングした。
「うぉらぁぁ!!」
――パキィィィン!
魔剣フラムは剣身が真っ二つに割れ、黒いオーラが霧散し消えていった。
スパルズへの報告のため、折れた魔剣をマジックバッグへ収納し終えると、突然ドラゴンの身体が光り出し、徐々に小さくなっていく。
そして、光が収まると16歳くらいの黒髪の男が倒れ込んでいた。
「これは……キヌ、とりあえずコイツを回復してやってくれ」
「ん。【ヒーリング】【キュア】」
腹部に空いていた傷が塞がり、睡眠の異常状態も解除できたようだ。
「ぐ……グフッ、ここは……」
「よう、起きたか? お前はあの黒いドラゴンで間違いないのか?」
「っ、
一瞬何が起きたのかと思ったが、シンクが鬼の形相で男を蹴り飛ばしていた。
「阿吽様に向かって……貴様とは……クソガキが。今からでも叩き潰してやろうか」
「シンク、口調変わってるぞ」
「あ、申し訳ありません……わたくしとした事が……」
「なんだってんだ……いったいお前らは、ングゥ!」
「あなたを助けた阿吽様に向かって、その口の利き方はないでしょ? 教育が……必要ですね」
あー、完全にシンクのスイッチが入っちゃったっぽいな……まぁキヌが助けようとしたんだ。
さすがに殺しはしないだろ……多分……。
――数分後――
「……大変申し訳ございませんでした。俺の名前はドレイクと言います。俺を助けてもらったとは知らず……」
教育が完了したようだ……。
素直になったのは良いんだが、シンクを見る目が完全に小動物のソレになっている……。
「阿吽様、キヌ様、この愚か者をわたくしに預けていただけませんか? きっと立派な
「いや、シンク……下僕はやり過ぎだ。そこまでしなくていいだろ」
「お二人の素晴らしさを分からせるだけです。おのずと下僕にもなりましょう」
「お、おぅ。ってかドレイク、お前はなんで魔剣に乗っ取られてたんだ?」
「それは……よく覚えていないんだンゲフゥ! ……いないのですが、寝ていた時に誰かに背中を刺されたのはなんとなく覚えて……います」
「誰か……そいつの特徴は覚えてるか? あとシンク、喋りにくそうだから許してやれ」
「阿吽様がそう仰られるのなら……」
「ふ、普通にしゃべっても良いのか? た、助かった。はっきりは覚えてないが、赤い髪の男だった」
「ん? 赤髪? ってことはマーダスじゃないのか……それに、お前はなんでそんな所で寝てたんだ?」
「話せば長くなるが……」
そう言ってドレイクは事情を語り始めた。
要約するとドレイクは『竜人族』という種族であり、赤の渓谷を越えた先にある『竜人族の里』という所で生まれ育ったそうだ。
父親は竜人族の里長であり、次期里長を決める試合で兄に敗れ、その結果が受け入れられず大暴れ。
そして里を追放されたと。
行く当てもないため、赤の渓谷でも魔物相手に大暴れを繰り返し、疲れて眠っていたところを後ろからグサリ……
「自業自得じゃねぇか」
「ち、違うんだ! あいつ、卑怯な手を! 試合の前に俺の食い物に何か仕込みやがったんだ……全然力が出なくなって!」
「詳しいことは分からんが、それでドレイク……お前はどうしたい? 別に俺たちの仲間になる事を強制はしないし、やりたい事があるなら見逃してやる」
「お……俺は、強くなりたい! もう里の事なんかどうでもいいが、もう誰かに負けるのは……嫌なんだ! お前たちの仲間になれば俺は……強くなれるのか?」
「うん? そんなもんは自分の努力次第だろ。ただ、独りよりもみんなで努力した方が楽しいのは確かだな」
「……俺も、仲間にいれてくれるのか?」
「おう、俺たちは一向に構わねぇぞ? ただ、俺と従属契約ってのをしてもらわなきゃならない。
まぁ、お前を縛るものじゃないからそれは安心してくれ。嫌になったら契約を解除することもできる」
「……実は、お前らと戦ってる時に少しだけ意識はあったんだ……一方的にやられて悔しかったが、信頼しあっている姿が羨ましかったのを
「兄貴って……まぁいいけど。んじゃ契約成立だな」
俺がそう言うと、ドレイクとも魔素が繋がっていく。
「よし、完了だ! これからよろしくな、ドレイク」
「うっす! 兄貴、姉さん方、これからよろしくお願いしゃす!」
何か急に口調が変わったが……元々こんな感じの喋り方なんだろう。
こうしてまた一人、新たな仲間が加わった。
〈ステータス〉
【名前】ドレイク・ベレスティ
【種族】竜人族
【状態】
【レベル】41
【属性】風
【HP(体力)】4600/4600
【MP(魔力)】400/400
【STR(筋力)】70
【VIT(耐久)】62
【DEX(器用)】40
【INT(知力)】48
【AGI(敏捷)】55
【LUK(幸運)】10
【称号】従属者
【スキル】
・装風:INT値の30%をVITとAGIに上乗せ(MP消費30 ON/OFF)
・ウィンドプレッシャー:風圧で敵の動きを制限する(MP消費20)
・ウィンドカッター:風属性攻撃魔法(MP消費30)
・サイクロン:風属性範囲魔法(MP消費60)
・竜化:自身の肉体を竜型に変化可能(MP消費30 ON/OFF)
・飛行:自在に飛行が可能
・剣技(Lv3):剣での攻撃時に相手に与えるダメージと衝撃が強くなる
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〈装備品〉
・シルバーロングソード
・竜人族のローブ
・竜人族のシャツ
・竜人族のロングパンツ
・竜人族のブーツ
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