第27話 オークガードの独り言(後編)
~夢見る乙女の独り言 ③~
わたくしはオーククイーン、名前は『
本日は、初めて人間の街に入った時のことをお話しさせてください。
わたくしは、伝説の『ツルツルでボンキュッボン』を手に入れるため、いろいろと試行錯誤をしておりました。
『ツルツル』はなんとなく分かるのですが、『ボンキュッボン』がよく分かりません……
そこに2人の女性冒険者が現れたのです。
意を決して話しかけてみますと、意外なわたくしの盲点に気付かされました。
そう、わたくしは“服を身に着けていなかった”のです。
確かに人間は、みなさん服やオークジェネラルのような鎧を着ていらっしゃいましたね……。
女性達に、「魔物や冒険者に襲われた」と話をすると、涙を流して話を聞いてくださります。
同情されているようでしたが、なぜでしょう? その後はとても優しく接してくださり、予備に持っていた服などを頂きました。
……後で気づきましたが、ハルバードと盾をダンジョンの前に置き忘れていました。
今度取りに行かねばなりませんね。
そして、「れくりあ」という街に連れていってくださるとおっしゃり、道中で色々な話を聞かせていただきました。
彼女達に、常々不思議に思っていた『ボンキュッボン』の事を聞くと笑いながら「それは、あなたのことよ」と教えてくださりました。
わたくしは知らぬ間に『ボンキュッボン』を手に入れていたようです。
それでもまだ、あの御方に食べていただけるか不安は残っております。
私に残されたチャンスは“一度しかない”と本能で分かるのです。
運命の時まで日々精進しなければなりません。
喋り方も、もっと上手にならなければ……『しっかりとした口調で、大きい声で、端的に』お伝えしたいことを言わなければならないのです。
街に入りますと、とても心が躍りました! 見たことが無いものがたくさんあります。
これからが勉強の本番ですね!
今わたくしが一番知っていることは“冒険者という種族”の事です。
冒険者の女性達に「あなた方のようになりたい」と伝えるとすぐになれると言うではありませんか!
連れていっていただいた「冒険者ぎるど」でお話を聞かせて頂くと、魔物を倒すと“お金”という良いものがもらえ、この街の中ではその“お金”を武器や食料などと交換してもらえるとの事です。
『目から毛皮が落ちた』ような気持ちでした!
その後「冒険者とうろく」をして「まじっくばっぐ」をもらいました。これで勉強が捗りますね!
さっそくダンジョンに戻ってハルバードと盾を回収し、魔物をボコボコにしなければなりません!
忙しくなってまいりましたが、とても楽しく充実しています。
フォレノワールのダンジョンから出てきて正解でしたね!
あ、またまたお話が長くなってしまいました……少しずつ喋り方も上手になってきているでしょうか?
またお話しさせていただけると幸いです。それでは失礼いたします。
◇ ◇ ◇ ◇
~夢見る乙女の独り言 ④~
わたくしは【ボンキュッボン】のシンクと申します。
最近はクエストを行う事が楽しく、冒険者ランクはCまで上がりました。
また、寝る前【人化】スキルの特訓をした成果でエルフや獣人にも変化できるようになりました。
伝説のボンキュッボンを手に入れたわたくしであれば、種族を変えるなど造作もない事でございます。
そこで常闇の森で冒険者の方に聞いた『思わず食べたくなる女性』最後の要素を探そうと思います。
『めいど』
これがなんなのかさっぱり見当がつきません。
そこで蒼緑平原へ行き『めいど』を探し回っておりますと、男性冒険者の方が一角兎に向け、高らかにこう仰っていたのです。
「“めいど”の土産に教えてやろう! 我が名はスマッシュ! この世界を救う者だ!」と。
思わず声をかけてしまいました。
すると、その方はなぜか顔を真っ赤にして走り去ってしまわれたのです。
これは逃してはならないと思い、レクリアの街まで追いかけていき、先ほどのセリフはどういう意味か尋ねました。
その方は泣きそうになりながら「頼むから他の人には言わないでくれ!」と懇願されました。
もちろんでございます! それほどまでに『めいど』は得難いものなのでしょう!
わたくしは約束を守る女でございます!
それから色々と質問をさせていただくと、「あぁ、そういう事か……」と仰りながら『めいど』になる方法を教えていただけました。
そのために必須なのは「めいど服」という服装でございました。
そこで防具屋へ行くと、店主様に特注で作っていただけるという事になりました。
今まで貯めたお金は全て使いましたが、『めいど』が手に入るのなら安いものです!
これで『思わず食べたくなる女性』すべての要素を揃えました。
あとは、あの御方にわたくしの思いのたけをぶつけるだけでございます!
やはり不安は残りますが運命の時まで日々精進を続け、必ずや養分としていただくのです!!
ここまでわたくしの拙劣な話にお付き合いいただいてありがとうございました。
わたくしの念願が叶いましたら、もうお話はできなくなります。
最後に今まで学んできた事を、世の迷える女性達のために残しておこうと思い、わたくしの知識を記した本をレクリアの書店にこっそり並べておきました。
これでもう思い残すことはございません!
あら?
こ……この、
そ、それでは皆様行って参ります!
わたくしの最後の大舞台、しかと見届けてくださいませ!
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