第26話 オークガードの独り言(前編)
~夢見る乙女の独り言 ①~
わたくしはオークガードでございます。名前は、まだありません。
先日、“ある御方”と出会い、生きる目的が見つかりました。
その目的とは「あの御方に、わたくしを召し上がっていただく」事でございます。
わたくしは、誰かと話すのが苦手でございます。
頭の中で考えていることを口にしようとすると、どうしても
しかし! 次にあの御方と再び出会った時、上手く話せないのではまた落胆させてしまいます。
そうなると、もう二度と食べていただくチャンスは巡ってこない……そんな確信があるのです。
なので、今日から頭の中で『誰かに話をする訓練』をしようと考えたのでございます。
……え? この喋り方?
申し訳ございません。まだ不慣れなもので……。
少しずつ慣れていく所存でございます。実は、この口調にしているのにも理由がございます。
それは少し時を
あの御方と出会った直後から、わたくしに大きな変化がございました。
それは『他種族の言語がわかる』というものでごあ……ございます。
フォレノワールのダンジョンを出ようとするわたくしは裏切り者と見られたのでしょうか、下位のオーク達に襲われました。全員ぶちのめして差し上げましたけど……。
わたくしには“強く、賢くなる”という使命がございます。情けはかけていられません。
ダンジョンを出まして、森に着き、数体の魔物を撃退しましたら、身体が熱くなってきまして……気が付いたら【ガーディアンオーク】になっていました。
しばらく森を歩いていますと、野営している人間達が何やらお話しされていましたので、興味が湧きバレないように陰から聞き耳を立てていました。
すると凄い事が分かったのでございます。
話題は男性が『思わず食べたくなる女性』について。
雷に打たれた気分でした!
ご主人様に美味しく召し上がっていただくための知識が、ココにあったのでございます!
強く、賢いだけではダメなのだと……一晩中こっそり
他の種族の言語が分かるって、こんなに素晴らしい事なのですね。
これから色々な知識を身につけ、名も知らぬあの御方に美味しく召し上がっていただくために日々精進してまいります。
本日はお話を聞いていただけて嬉しかったでごあす……あ、ございます。
わたくしの経験談につきましては、また機会がございましたら、お話しさせていただきます。
◇ ◇ ◇ ◇
~夢見る乙女の独り言 ②~
わたくしは元オークガードでございます。
最近、冒険者の方々から『シンク』と呼ばれております。
本日は、このお名前と最近の出来事についてお話しさせていただきたいと思います。
わたくしは更なる強さを求め、常闇の森から出て、歩き回っておりました。
そうしましたら、色々な魔物や人間達に襲われまして……全て撃退して差し上げました。
あ、人間だけは殺してはおりませんよ?
人間の方々には色々な事を教えていただけますので、追い払うだけです!
冒険者の方が逃げる時に置いていかれた「ハルバード」という槍と斧がくっついたような武器はお借りいたしましたが……
数日後に小さなダンジョンを見つけたので入ってみますと、色々な魔物や、なかなかお強いボスがみえましたが、なんとか倒せました。
ダンジョンの事は少しだけ知識がございましたので、出口から出て……また入口から入り直しまして、何度か挑戦させていただきました。少し時間をおけば再び同レベルの魔物が出現するからです。
そうして4回目のボスを倒しましたら、また身体が熱くなってまいりまして……わたくしは【オーククイーン】になっておりました。
オーククイーンになってから、疲れた身体を癒すために木陰でのんびりと休憩させていただいておりますと、冒険者の方が近くを通られましたので、「お話が聞けるかな?」と陰から聞き耳を立てておりましたの。
そうしたら、うっかり見つかってしまいまして……
その時はダンジョンの魔物やボスの返り血で全身が赤くなっていたらしく、冒険者の方々は逃げてしまわれましたが、その時から色々な冒険者の方々に『シンク』と呼ばれるようになりました。
とても可愛らしいお名前を頂けましたが、あの御方も気に入っていただけるでしょうか……少し不安です。
あ、それだけではありませんでした。
冒険者の方が「すてーたす」というものを使われておりましたので見様見真似で喋ろうとしていると、自分の事が色々分かりました。
名前も『深紅』となっております。これで「シンク」と読むのでしょうか? やはり冒険者の方々は、わたくしの先生でございますね!
それで「スキル」というものの中に【人化】というものがございました。試してみますと、どうやら人間の姿になれるようでした!
とても興奮いたしました!
これであの冒険者の方達がお話しされていた『ツルツルでボンキュッボン』という身体にもなれますね!
それに街へ向かえば、色々な事が学べるのではとワクワクいたしました!
あ、お話が長くなってしまいましたね。
独りよがりな話で退屈されませんでしたか?
またお話しさせていただけると幸いでごあす。コホンッ、ございます。
それでは、またの機会に。失礼いたしやす……ますっ!
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