第19話 第一回迷宮魔改造会議②
「それさ、今の俺ならそのハードルがクリアしやすい……いや、むしろ好都合じゃねぇか?」
「ぬ? 好都合とはどういうことなのじゃ?」
「いや、だってさ? 俺は2つのダンジョンのマスターだろ?
そんで、ダンジョンポイントは共有化されるから、プレンヌヴェルトで効率よく稼いで、フォレノワールの設備拡張に使えばいいだけじゃねぇ?」
「……たしかに、その通りでござる……」
「2つのダンジョンを吸収したマスターは今まで数えるほどしか居なかったし、そんな使い方していたマスターは知らないのじゃ……」
「アウン……さすが」
「ってことは問題としては効率よくプレンヌヴェルトで稼ぐ方法を考えるって事になるよな?」
「そうでござるな。何か考えがあるのでござるか?」
「まぁな。【ダンジョン都市ウィスロ】を参考にしようと思う。ただ、これは今すぐには無理だ」
「ウィスロ? それは隣の国じゃな?」
「そうだな。あそこのダンジョンは50階層を超えていて、未だ最高層まで辿り着いた者が居ないダンジョンって冒険者の中でも有名な、超高難易度ダンジョンなんだよ。
でも、30階層以降はめちゃくちゃレアなアイテムが出るって噂で冒険者パーティーが日夜問わず探索してるんだ。
でだ、人が集まる周りには街ができるだろ?
そうなればよりダンジョンに潜る冒険者も増える。それに、ダンジョンの周囲からでも魔素を吸収できるってことは、さらにダンジョンの魔素吸収効率が上がる。そしてダンジョンの拡張や強い魔物の召喚が可能となる。
さっきの説明を聞いた後だと、めちゃくちゃ好循環のダンジョンだってことが分かったんだ」
「ほぅ! 確かにそうなればポイントは稼ぎ放題じゃな!」
「それでなんだが、プレンヌヴェルトはウィスロと逆のパターンで最初は稼ごうと思う」
「逆……でござるか?」
「そうだな。つまり、先に街を作るんだ。ダンジョンの機能を使ってな」
「ダンジョンの機能でござるか?」
「要するに、1階層を平原に露出させてしまって、ダンジョンポイントを使って建物を建てる!
最初は宿屋とか道具屋だけで良い。んでその中心に2階層に転移する魔法陣を作って、そこから先がダンジョンだと冒険者に錯覚させてしまえば良くないか?」
「結構危険な気もするでござるが、それも不可能ではないでござるな……
そんな事を考えるマスターなんか居なかったでござるが……いや、でも良い案でござる!
分体コアの拙者さえ別の者に吸収されたり破壊されなければ良いだけでござるから、コアルームへの入口をちょいと工夫すれば……デメリットは消えるでござる!」
「だろ? ただ、問題が2つほどあるんだ。
これが今すぐに実行に移せない理由なんだが、1つ目は人間側に村や街を作るだけの理由や人材がないって事。
もう一つは俺たちが街に入れないってことだな。
優先順位としては街に入れるようになる事か……
街に入れれば意図的に情報を流すことも可能だし、将来的にクランを立ち上げるためにも、俺たちが冒険者になることは必須だ。どうにかならねぇかなぁ?」
「ぬ? アウンは元々冒険者じゃったのじゃろ?」
「いや実はさ、今のこの姿は、人間だった時と別人レベルで違うんだよ。冒険者だったときの俺は既に死んでる事になっている可能性も高い。
これは分からないんだけどな。だから冒険者登録をし直す必要があるんだよ。
ただ、この額に生えてる角があるだろ?
だから人間として見られない可能性が……うーん、あ……」
「どうしたでござるか?」
「そういえば、思い出したことがあるんだけど、昔爺ちゃんに『鬼人族』って人種が、和の国に居たって聞いたことがあったんだよ……
そうか、進化の時にどこかで聞いたことがあると思ったのは、俺がガキの頃に爺ちゃんから聞いた話だったんだな。
それならどこかの森で隠れ住んでた事にしてしまえば……。
冒険者登録の時の名前も『アウン・ドウメキ』って登録してあったから、漢字で『阿吽』なら虚偽の申請にならないし、和の国の人間以外は誰も読めない!
キヌも人型になれるし、獣人で問題は無いはずだ!」
「鬼人族という種族は聞いたことがあるのじゃ。すごい怪力の持ち主で、めちゃくちゃ強いのじゃが、数が少ない上に、表舞台に出てはこぬ種族じゃと」
「そこまで分かればあとは何とかなりそうだな。とりあえず、一回レクリアの街に行って冒険者登録をしてみようか。キヌもいいか?」
「ん。大丈夫」
「アルスとイルスはとりあえず今まで通りポイントを稼いでおいてくれ。何かあったら念話で連絡をしてほしい。とりあえず俺たちは、レクリアの街に問題なく入れるかだけは試してみよう」
この後、俺とキヌはプレンヌヴェルトに迷宮間転移で移動し、そこから歩いてレクリアの街に向かう事となった。
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