第15話 2つ目のダンジョンコア吸収


「キヌ、ありがとな。もう大丈夫だ」


 やばい、冷静になっていくと急に恥ずかしさが込み上げてくる。なんとかごまかさなくては! キヌにはもう何もかも見透かされている気がするが……


 お! ちょうどいいところに宝箱が!


「キヌ、赤色の宝箱だぞ!」


 え? 何その「はいはい、ノってあげるか」みたいな表情! 俺が開けちゃうぞ? いいのか?

 「どうぞ?」って顔してるな!? 何か立場が逆転している気がするが、まぁいいや。


「開けるぞー!」


 宝箱を開けると綺麗な布が畳まれて入っていた。鑑定してみると、



≪阿久良王和装:防御力20。強靭な鬼が使用していたとされる和装一式、男性用装備≫


 とんでもねぇモン出てきたぁぁぁ!!! レアリティー赤!?

 これ俺が使っていいよな! キヌは女の子だもんな!


 ん? 女の子……だよな?


「キヌ、レアな装備が出てきたんだが……どうやら男性用らしい。俺が使っていいか?」


『コンッ!』


 よし、さりげなく女の子って確認できた! 俺ナイスだ!


「んじゃ早速装備しますかね!」


 着てみるとサラサラとした肌触りで、動きに制限も受けず意外と動きやすい。

 こんな感じの服を着てたのは爺ちゃんくらいしか見たことないけど、憧れに近づけたようで恥ずかしくも嬉しくなってきた。

 しかも防御力20。今までの装備一式合わせても防御力は8だったから大幅に強化されたという事だろう。


 今着けている装備も目立ちたくない時に使うだろうし、アルスに貰ったものだからな。大切に保管しておこう。


「さてと、あとはコアルームの入口を探すだけだな! ん? キヌどうし……え? もう見つけてる」


 キヌできる子っ!!

 俺が着替えてる時に部屋の中を歩き回ってたからか?

 壁にあった出っ張りを押し込むと下の階層へと降りる階段が現れた。


 階段を下りコアルームへ入ると、四方を石壁に囲まれた、異様に天井の高い空間が広がっていた。

 床には綺麗に整った芝生が広がっており、その中心には大木がそびえ立ち、風もないのに葉が静かに揺れていた。キヌもその光景に驚いている様子だ。


 大木の根元には中に入ることができる穴が空いており、チラッと祭壇が見えていた。


 ゆっくり祭壇へと歩みを進め大木の中へ入ると、祭壇の上に虹色の玉が浮かんでいる。2度目であるため、何も躊躇せずダンジョンコアを手に取り……


「いただきます」


――ゴクンッ


 隣を見るとキヌがギョッとしている。まぁそうなるよな。


≪ダンジョンのコアの吸収が確認されました。以後『プレンヌヴェルト迷宮』のダンジョンマスターは個体“百目鬼 阿吽”となり、必要値まで知力が向上します≫


「よし、無事吸収できたな」


≪分体コアの生成および獲得済みダンジョンとの同期を行います≫


「今度はどんな分体なんだ?」


 腹から光の玉が出てくる。それが徐々に形を変え、光が収まった。


「狼ゾンビのぬいぐるみ……そうきたか」


『キュゥ?』


「ぎゃぁぁぁ! 食われてしまったでござるぅぅー!」


「よぉ、おまえダンジョンコアだよな?」


「むむ? 拙者は突然食われたはずじゃぁ? む……そういうことでござるか。おぬしがマスターでござるな?」


「俺の呼び方はアウンでいいよ。こっちはキヌだ。お前の名前は何っていうんだ?」


「拙者はイルスでござる! アウン、キヌ以後よろしく頼むのでござる!」


「イルスか。よろしくな! あー実は、俺はここ以外にもダンジョンマスターになってるんだ、フォレノワールってダンジョンだ」


「おぉ、そうみたいでござるな! 繋がりが分かるのでござる。では追加された能力だけ説明すれば良いのでござるか?」


「そうだな。よろしく頼む。キヌは少し休んでおいた方が良さそうだな」


『クゥン?』


「いや、一応だよ。結構ダメージ食らってたし、休まず戦闘を繰り返してたからな。ヒーリングで治療して少し休んどけ。イルスから説明聞いたら数日はゆっくりしよう」


 キヌはコクッと頷き、芝生の方へと歩いていった。


「それでは説明に入るでござるよ。追加されたものは2つでござる。1つ目は【迷宮間転移】、アウンが支配しているダンジョン間は転移が可能でござるな。これは従属者も可能でござる」


「ほぅ、便利な機能だな! 続けてくれ」


「2つ目は、【迷宮同期】でござるな。支配したダンジョン同士で獲得済みのモンスターや施設を移すことができるでござる。ダンジョンポイントも共有化されるでござるよ。簡単に説明すると以上でござる!」


「迷宮間転移と迷宮同期だな、理解した。そういえば、ここはダンジョンポイント結構あるのか?」


「そうでござるな! 実は、ダンジョンポイントはこのダンジョン周囲の魔素の流れや生物が死亡したときに流れ出るエネルギーの吸収も関係しているでござるが……今、説明聞くでござるか?」


「うーん、結構難しい話になりそうだな。その話はまた今度でいいか? 今は結構ポイントがあるって事が分かっただけでいい。あと、このダンジョンの事は今のところ全部イルスに任せるから、フォレノワールのコア、アルスと相談して色々決めてくれ。ダンジョンを使ってできそうな事で、ちょっと考えはあるんだが……まだ先の話になりそうだから、今はできるだけダンジョンポイントを貯めておいてくれると助かる」


「分かったでござる! アウンたちが休む場所はどうするでござるか?」


「一旦フォレノワールに戻るから作らなくて大丈夫だ。キヌと合流してから、フォレノワールに転移で戻ってみるわ。また顔出すよ!」


「念話もできるでござるから、何かあったら呼ぶでござるよ!」


「おう、ありがとな! んじゃ」


 俺は、イルスから一通りの説明を聞き終え、大木の外へとキヌを探しに向かった。


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