第5話 2度目の進化
考え事をしながら黙々と食べ続けていると、大量にあったはずのオーク肉がいつの間にか消えていた。
「ごちそうさまでした」
(そういえば解体した時に数えたけど25匹も居たんだな。っていうか全部食ったのに腹が膨れない。身体に変化も無いし、俺の胃袋どうなってるんだ? 飢餓感は減ったし、まぁいいか……
お? 捕食のスキルレベルがまた上がってる)
【スキル】
・捕食(Lv.3):満腹時にHPの自然回復量向上追加
「満腹にならねぇんですけど……もう腹減ってきたし。まぁいいや、進むか!」
階段を上り、再び2階の湧き部屋に入る。今度はゆっくりと覗いてみたが何も居なかった。一応周囲を警戒しながら通り抜け、しばらく進むと再び階段が見えた。
3階に上ると1階と同じくらいの通路があり、すぐに3体の魔物が姿を現した。
「3階はオークアーチャーも居るのか」
飛んできた矢をステップで避けながら観察する。
【オークアーチャー】はオークファイターと同じような体躯で弓矢を持っている。矢筒を見ると矢が入っている気配はない。
「ダンジョンから供給されているのか? ってことは、矢切れを見込めないか。なら優先撃破だな」
飛んでくる矢を躱しながらオークアーチャーとの距離を縮める。そして、今まで通りの感覚で腹パンしたのだが……
――ズシュッ! ブシャー
突き出した拳がオークアーチャーの腹に突き刺さっていた。
「ぬうぇ!? やばっ!」
突き刺さった拳を引き抜きながら、殴りかかってきたオークファイターの攻撃を避け、バックステップで距離をとる。
「攻撃力上がりすぎじゃね? ワンパンで倒せるのかよ」
自分の攻撃力にドン引きしながらも、「楽だし、良いか!」とすぐに気持ちを切り替える。
確実に自分はEランクの強さを超えていることを自覚し、残っている2匹のオークファイターも同様にワンパンで沈めた。
「これならこの先も楽勝だな! いや、でもダンジョンってボスが居るんだっけ……」
“ダンジョンには最奥にボスがおり、ボスを倒すと魔法陣が現れる。その魔法陣に触れると出口に転移される”というのが一般的に知られているダンジョンの情報だ。また、大型のダンジョンはボスを倒さなくても途中で帰還できる魔法陣が設置されているらしい。
「出てくる魔物はEランクばっかりだし、どう見ても小型のダンジョンなんだよなぁ。ボス部屋までにもっとステータス上げておきたいな。素手だし……」
その後、出会った魔物をすべて一撃で倒し、マジックバッグに解体した魔物を突っ込みながら進んだ。
そして4階に上がる階段が見え、襲ってきたオークファイターにカウンターの飛び膝蹴りをお見舞いすると、身体が徐々に熱を帯びだした。
「この感覚は!! 今のレベルは……20か!!」
周囲に魔物が居ないのを再度確認し、身体の力を抜き呼吸を整える。
≪進化先を選択してください≫
・
・
・
「来た! これ全部鬼種……か? 最初の進化でグールを選択したから鬼種系進化形態になった? ってことは、この選択はかなり重要な気がする……」
まず【巨鬼オーガ】は選択から除外だ。Cランクに位置付けられており、非常に力強く耐久力も桁外れな魔物だが、巨体がゆえに小回りが利かない。さらにこのダンジョンの中でその巨体に進化してしまうと身動きが取れなくなるだろう。
次に【呪鬼マミー】は、この中では無難な選択だと思われる。レベルが上がれば多彩な呪術を駆使し相手の攻撃力を下げることや、身動きを封じることができるだろう。知力が高めな俺との相性も良さそうだ。
ただ、複数を相手にする戦闘では、なかなかその本領が発揮できない。冒険者は基本的に複数人でパーティーを組んでいるため、戦術に問題がなければ討伐が比較的簡単とまで言われている。そのため、魔物図鑑ではDランクとされていた。そう考えると正直微妙だ。
最後の【鬼人】は……聞いたことが無い魔物だ。そう、魔物図鑑に “鬼人という魔物”は載っていない。
「でも『鬼人』ってどこかで聞いたことがあるんだよな……いつだったかなぁ? うぉぃ! ちょっと待て! 今のは“選んだ”って事じゃ……アァぁぁガッァァ!!!」
身体に雷が落ちたような衝撃が走る。直後から徐々に身体が変化していく感覚に変わり、痛覚耐性を持っている俺でも悶えるほどの激痛に襲われた。
「はぁ、ぅぐうっ……はぁ、はぁ。治まったか。選択先を口に出すのはダメなのか? それにしても痛みが一回目の比じゃなかった……ステータス」
〈ステータス〉
【名前】百目鬼 阿吽
【種族】鬼人
【状態】—
【レベル】20
【HP(体力)】400/1000
【MP(魔力)】310/310
【STR(筋力)】47
【VIT(耐久)】20
【DEX(器用)】10
【INT(知力)】31
【AGI(敏捷)】50
【LUK(幸運)】35
【称号】—
【スキル】
・鉄之胃袋
・痛覚耐性
・捕食(Lv.3)→大食漢:満腹状態でも捕食が可能、満腹状態で捕食するごとにHP・MPの最大量微増
・体術(Lv.2)
・剛腕: 5分間STRが50%上昇(MP消費10)
・俊敏: 5分間AGIが50%上昇(MP消費10)
「えっと…………変わりすぎじゃね?」
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