変態と仲良くしたくねぇ

 見せパンをわざと見せて行動していた新海にいみさんと本城ほんじょうさんの2人が、俺の教室を探し当てやがった。


…ここまで来たら仕方がない。逃げずに立ち向かわないとな。



 2限後の休憩時間、俺は自販機前の休憩スペースに向かった。

名前は立派だが、5人ぐらい座れるベンチが数基あるだけだ。大したことはない。


到着したところ、新海さんが1人で座って待っていた。本城さんはいないのか?


「詩織なら、風祭君の教室に向かったよ。入れ違いみたいだね」


キョロキョロしていた俺が気になったんだろう。新海さんが補足する。

その後、彼女はスマホをいじり始めた。本城さんを呼ぶんだろう。


「そうか…。あの人も俺に用があるのか?」

新海さんの付き添いの可能性もあるからな。


「もちろんだよ」


「なら仕方ないな。待とうか」

俺は新海さんと同じベンチの端っこに座ることにした。



 待って数分後だろうか。本城さんが来た。


「さっき嫌そうにしてたから、引きずってでも連れてくるつもりだったけど、自分から来るなんて偉いじゃん」


「子供扱いするなよ。俺と1歳しか違わないだろうが」


「はいはい」


そう言って、新海さんの隣に座る本城さん。


「彰君。何でそんな端っこに座ってるの? もっとこっちに来なよ」


俺と新海さん・本城さんの間に、不自然な空間があるからな。

気になってもおかしくない。


「結構だ」

仲良くなりたくない人と距離を詰めたくないし。


「強がっちゃって」

新海さんがクスッと笑う。


こいつら、マジでうぜーな。



 「で? 俺の教室を探してまで、声をかけたい理由はなんだ?」


「風祭君がウチらのタイプに合ってるのは、あの時話したよね?」


本城さんが言っていたな。


―――


「近頃の男って、ナヨナヨしたのが多すぎるのよ。あたし達はそれが不満でね。

彼氏にするなら『パンツ見えてるぞ』とかはっきり言ってくれるタイプが良いの」


(やっぱり関わらなければ良かった より)

―――


「ああ。聞いたぞ」


「実はさ……、風祭君のようなツンツンタイプも良いな~って思ってきたの」


「……は?」

いきなり何を言い出すんだ? 新海さん。


「あたしも同じことを思って、彰君があたしらを置き去りにした後に恵と話したのよ。そうしたらさ、意見が合ってね。後輩なのに生意気な態度が、あたしらのハートを射止めた訳」


そんなの聞かされても、全然嬉しくねーよ。


「だからさ風祭君…、ウチらと仲良くしてくれないかな?」


「断る」

縁を切りたい人と仲良くなんて無理だ。


「彰君、彼女いるの? それか……、男の子が好きなタイプ?」


「彼女はいないし、俺は女子が好きだ。勘違いしないでくれ」

お前らが嫌なだけだ。


「別にとは言ってないよ。仲良くしてほしいだけだよ」

新海さんが妥協案のように言うが、それだって我慢ならない。


「それでも嫌だね」

ここまで言えば、引き下がってくれるだろう。


「仕方ないなぁ。……恵」


「わかってるよ。詩織」


2人が顔を合わせた後、俺に近い本城さんが立ち上がり、端っこにいる俺を強制的に動かしてから俺の隣に座る。新海さんは、そのまま俺との距離を詰めた。


つまり俺は、新海さんと本城さんに挟まれてしまったのだ。


いくら気に入らない女子といえど、手を出すわけにはいかない。

この2人に諦めてもらうには、骨が折れそうだ。

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